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第二章
2の08 侍女、気付く
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夕焼けに染まる湖を第二王子フラットの船が小さくなって行くのを見て、シレーヌはようやくホッとしてその場にへたり込む。
「シレーヌ様‥‥
(あッ‥‥)」
「た‥‥助か‥た」
震える声‥‥それはそうだろう。
シレーヌの体はガクガクと震え続けているのだから。
シレーヌの痛々しい姿に侍女は胸を押さえ、考えを改める。
さっきまで、シレーヌは自分達とは違うと‥‥
シレーヌは強い人なんだろうと思っていた。
でも、今、目の前にいるのは自分や自分の妹と同じ、弱く小さな女の子なのだ。
最初から強いのではなく、強くあろうと必死に頑張っている女の子なのだ‥‥
「‥‥え?」
シレーヌは突然のフワリとした感触に驚く。
侍女が抱きしめてくれているのだ。
シレーヌがぼんやり侍女を見ると、侍女も僅かに声を震わせる。
「‥‥恐かったでしょう、
お可哀想に‥‥
何も役立てず申し訳ございません‥‥」
「‥‥あり‥
ありがとう‥‥
嬉しかった。
心配してもらえて」
「そんな、当たり前ですわ。
私はシレーヌ様の侍女
‥‥あ。
(ああ、当たり前じゃない。
私だってさっきまでは殿下に同情していた‥‥
他の侍女達もみな殿下を慕い、この方は味方がいない状態‥‥
私が想像出来ないほど、この方の孤独は深い。
これからは、少しでも私が‥‥)」
「‥‥残念だわ。
あなたはきっと異動になるわね」
「え? いいえ!
こちらへ異動して来たばかりですもの?
3か月と命じられていますわ。
3か月が過ぎても、延長を申し出るつもり‥」
「私に親切にしてくれる人は、私の側から外されてしまうのよ‥‥」
静かにそう言ってフッと微笑うシレーヌ。
大人びた諦めの微笑が痛々しく、侍女は抱きしめる力を強めずにいられない。
「大丈夫ですわ!
よっぽどの事をやらかさない限り、異動後すぐに異動になるなんて有り得ません!
侍女‥‥特に、ここ、王宮で働く侍女は待遇が良くて、理不尽な異動命令なんて絶対出ませんから、これからもよろしくお願い致します!
‥‥これからは、私がシレーヌ様の一番の味方になりますわ!」
ありがとうと言って寂し気に微笑うシレーヌは涙を流さずに泣いている様にも見えて、侍女はキュゥッと胸が苦しくなる。
ああ、お可哀想に、きっとシレーヌ様は心がへこたれてしまって、マイナス思考になっておいでなのだわ‥‥
そう思い、これからは自分がこの少女の一番の味方になろうと強く決意した侍女は、まさかその日のうちに異動命令の知らせを受け、愕然とする。
愛する少女に男を近づけたくないという殿下の気持ちは分かる。
だが、侍女まで!?
まだ少女‥‥子供と言わざるを得ない年齢の、しかも外国の王女をそこまで徹底した孤独で追い詰める理由が分からない!
精神を壊そうとしているとしか思えない!
そんなの‥‥
愛ではないわ!
侍女は自分が憧れていた男の異常で不気味な所業にゾッとして、実際には決して言う事を許されない言葉を独り言つ。
「‥‥殿下‥‥酷過ぎます‥‥
あなたは、シレーヌ様を壊してしまう御積もりですか‥‥!?
あなたの無さっている事は暴力‥‥
虐待ですわ!」
「シレーヌ様‥‥
(あッ‥‥)」
「た‥‥助か‥た」
震える声‥‥それはそうだろう。
シレーヌの体はガクガクと震え続けているのだから。
シレーヌの痛々しい姿に侍女は胸を押さえ、考えを改める。
さっきまで、シレーヌは自分達とは違うと‥‥
シレーヌは強い人なんだろうと思っていた。
でも、今、目の前にいるのは自分や自分の妹と同じ、弱く小さな女の子なのだ。
最初から強いのではなく、強くあろうと必死に頑張っている女の子なのだ‥‥
「‥‥え?」
シレーヌは突然のフワリとした感触に驚く。
侍女が抱きしめてくれているのだ。
シレーヌがぼんやり侍女を見ると、侍女も僅かに声を震わせる。
「‥‥恐かったでしょう、
お可哀想に‥‥
何も役立てず申し訳ございません‥‥」
「‥‥あり‥
ありがとう‥‥
嬉しかった。
心配してもらえて」
「そんな、当たり前ですわ。
私はシレーヌ様の侍女
‥‥あ。
(ああ、当たり前じゃない。
私だってさっきまでは殿下に同情していた‥‥
他の侍女達もみな殿下を慕い、この方は味方がいない状態‥‥
私が想像出来ないほど、この方の孤独は深い。
これからは、少しでも私が‥‥)」
「‥‥残念だわ。
あなたはきっと異動になるわね」
「え? いいえ!
こちらへ異動して来たばかりですもの?
3か月と命じられていますわ。
3か月が過ぎても、延長を申し出るつもり‥」
「私に親切にしてくれる人は、私の側から外されてしまうのよ‥‥」
静かにそう言ってフッと微笑うシレーヌ。
大人びた諦めの微笑が痛々しく、侍女は抱きしめる力を強めずにいられない。
「大丈夫ですわ!
よっぽどの事をやらかさない限り、異動後すぐに異動になるなんて有り得ません!
侍女‥‥特に、ここ、王宮で働く侍女は待遇が良くて、理不尽な異動命令なんて絶対出ませんから、これからもよろしくお願い致します!
‥‥これからは、私がシレーヌ様の一番の味方になりますわ!」
ありがとうと言って寂し気に微笑うシレーヌは涙を流さずに泣いている様にも見えて、侍女はキュゥッと胸が苦しくなる。
ああ、お可哀想に、きっとシレーヌ様は心がへこたれてしまって、マイナス思考になっておいでなのだわ‥‥
そう思い、これからは自分がこの少女の一番の味方になろうと強く決意した侍女は、まさかその日のうちに異動命令の知らせを受け、愕然とする。
愛する少女に男を近づけたくないという殿下の気持ちは分かる。
だが、侍女まで!?
まだ少女‥‥子供と言わざるを得ない年齢の、しかも外国の王女をそこまで徹底した孤独で追い詰める理由が分からない!
精神を壊そうとしているとしか思えない!
そんなの‥‥
愛ではないわ!
侍女は自分が憧れていた男の異常で不気味な所業にゾッとして、実際には決して言う事を許されない言葉を独り言つ。
「‥‥殿下‥‥酷過ぎます‥‥
あなたは、シレーヌ様を壊してしまう御積もりですか‥‥!?
あなたの無さっている事は暴力‥‥
虐待ですわ!」
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