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第二章
2の09 誘惑するモーレイ
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モーレイ・イールは自慢のライラック色の髪と同色のドレスを揺らしながら第二王子の私室へ向かっている。
袖とスカート部分に生地をたっぷり使い、美しい花々が刺しゅうされたお気に入りのドレスは彼女によく似合っている。
大きな白い飾り襟が清楚でいながら華やかな印象だ。
夕方離宮から戻った第二王子殿下はいつもなら真っ直ぐ執務室へ向かい大量の仕事をこなすのだが、今日は自室へ駆け込んだきり出てこない。
どうやら浴びる様に酒を飲んでいるらしい。
何があったのかと側近に訊ねれば――
「離宮『湖の貴婦人』にお供した第一側近は何かの発作で倒れてしまってよく分からないのです」
そう言って目を伏せた。
(‥‥フン。
どうせまたシレーヌ姫に冷たくあしらわれた、ってとこかしら?
バカな殿下。
お子ちゃまに心乱されて、とうとうヤケ酒?
まぁ、私にとっては好都合。
ええ、今宵はまた前の関係に戻れるチャンス‥‥)
口角を上げたまま殿下の私室のドアを守る護衛騎士に頷けば。
1人は怪訝そうな顔をしたけど、もう1人は私達の前の関係を知っているから。
訳知り顔でドアを開けてくれるので、当然の様に部屋に入る。
果たして、殿下はソファにだらしなく座り床にはグラスが転がっている。
(無造作に開けたシャツから覗く逞しい胸板がセクシーだわ‥‥
兄に対する劣等感を隠し切れない美しい王子様‥‥
私はあの舞踏会の夜からずぅっとあなたを愛して来たのよ!
3年前、短い期間ではあったけど、あなたに熱烈に抱かれた。
殿下には他にも多くの恋人がいたけど、あの時だけは私が一番愛されていた!
私の心は今も変わらずあなたのもの‥‥
そろそろこの一途に対するご褒美、くれてもいいんじゃない?)
清楚で華やかな大きな白い飾り襟を外せば、ドレスの印象はガラリと変わる。
飾り襟で隠されていたが、ドレスは肩と胸元が大胆に露わになるオフショル。
モーレイは腕を寄せて自慢の胸の谷間を強調し、ボンヤリとモーレイを見る第二王子フラットに十分見せつける。
その後、ソファのフラットにしなりと身を寄せて。
無造作に投げ出されているフラットの腕に自分の腕を絡ませ、胸を押し付ける。
(15才の小娘には到底出せない大人の女の色気はどう?)
クスクスと含み笑いをして見せてから、ズイッと距離を縮め、フラットの耳元に唇を寄せて、息を吹きかけながら小声で囁く。
「ハァ、ハァ、
お珍しいこと‥‥
荒れておいでね?
チュッ(耳たぶキス)
んね、私で良かったら チュッ お慰め‥‥」
袖とスカート部分に生地をたっぷり使い、美しい花々が刺しゅうされたお気に入りのドレスは彼女によく似合っている。
大きな白い飾り襟が清楚でいながら華やかな印象だ。
夕方離宮から戻った第二王子殿下はいつもなら真っ直ぐ執務室へ向かい大量の仕事をこなすのだが、今日は自室へ駆け込んだきり出てこない。
どうやら浴びる様に酒を飲んでいるらしい。
何があったのかと側近に訊ねれば――
「離宮『湖の貴婦人』にお供した第一側近は何かの発作で倒れてしまってよく分からないのです」
そう言って目を伏せた。
(‥‥フン。
どうせまたシレーヌ姫に冷たくあしらわれた、ってとこかしら?
バカな殿下。
お子ちゃまに心乱されて、とうとうヤケ酒?
まぁ、私にとっては好都合。
ええ、今宵はまた前の関係に戻れるチャンス‥‥)
口角を上げたまま殿下の私室のドアを守る護衛騎士に頷けば。
1人は怪訝そうな顔をしたけど、もう1人は私達の前の関係を知っているから。
訳知り顔でドアを開けてくれるので、当然の様に部屋に入る。
果たして、殿下はソファにだらしなく座り床にはグラスが転がっている。
(無造作に開けたシャツから覗く逞しい胸板がセクシーだわ‥‥
兄に対する劣等感を隠し切れない美しい王子様‥‥
私はあの舞踏会の夜からずぅっとあなたを愛して来たのよ!
3年前、短い期間ではあったけど、あなたに熱烈に抱かれた。
殿下には他にも多くの恋人がいたけど、あの時だけは私が一番愛されていた!
私の心は今も変わらずあなたのもの‥‥
そろそろこの一途に対するご褒美、くれてもいいんじゃない?)
清楚で華やかな大きな白い飾り襟を外せば、ドレスの印象はガラリと変わる。
飾り襟で隠されていたが、ドレスは肩と胸元が大胆に露わになるオフショル。
モーレイは腕を寄せて自慢の胸の谷間を強調し、ボンヤリとモーレイを見る第二王子フラットに十分見せつける。
その後、ソファのフラットにしなりと身を寄せて。
無造作に投げ出されているフラットの腕に自分の腕を絡ませ、胸を押し付ける。
(15才の小娘には到底出せない大人の女の色気はどう?)
クスクスと含み笑いをして見せてから、ズイッと距離を縮め、フラットの耳元に唇を寄せて、息を吹きかけながら小声で囁く。
「ハァ、ハァ、
お珍しいこと‥‥
荒れておいでね?
チュッ(耳たぶキス)
んね、私で良かったら チュッ お慰め‥‥」
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