9 / 16
09 一年前の事件1『罠』
しおりを挟む
一年前のデビュタント
17才のショコラ公爵令嬢プラリネはその類まれなる美貌と完璧な立ち居振舞いで、誰よりも輝いていた。
父親とファーストダンスを踊った後、束になって押し寄せるダンスの申し込みを躱して庭園に逃げ、ホッと一息ついたところで厄介な事になった。
飲み物を差し出しながらにこやかに声をかけて来たのは――
王妃である。
「今夜の主役はあなた――いえ、今夜だけじゃないわ。
これから先、あなたが社交界の主役になるのは間違いないわね‥‥」
「畏れ多くも王妃殿下に有難いお言葉を賜り感謝に堪えません。
ですが私はまだ社交界の片隅に加わらせて頂いたばかりでございます。
王妃殿下を始め諸先輩方に教えを賜りながら‥‥」
「あら、謙遜なんて要らないことよ。
それより疲れたでしょう?
これをお飲みなさい」
王妃はそう言って飲み物を差し出したのだ。
これはルール違反の行為で、本来は断っていいのだが。
国で一番高貴な女性に断わるわけにもいかず、プラリネは不安を覚えながらもグラスに口を付けざるを得なかった。
そして直後、その場に膝をつく事になった。
飲み物に良くないものが入っていたのは確実で、激しい目眩にプラリネは立っていられなくなったのだ。
慌てて駆け寄る公爵家の護衛騎士を王妃は制した。
「護衛騎士とはいえ男性が触れるべきではないわ。
大丈夫、少し体調が悪くなっただけでしょう。
落ち着いた場所で休めばすぐ良くなるわ。
人目につくのは避けたいでしょうからこちらへ。
あなたたち、ショコラ公爵令嬢を支えて頂戴」
自分の侍女達にプラリネを抱えさせて、庭園の王族のみが通れる小道へと連れ込み消えてしまった。
王妃に逆らえるはずの無い公爵家の護衛騎士は大急ぎで王の弟であるショコラ公爵を捜すが、こんな非常時にショコラ公爵の姿が見当たらない。
偶然か王妃の策略か――いずれにしろ緊急の用事が発生し、対処しているらしい。
まんまと王妃に連れ去られたプラリネ。
目眩は治まって来たものの、今度は体が酷く熱く、体の内側から性器を叩かれている様な刺激がどんどん強くなっている。
(まさか、媚薬!?)
呼吸が荒くなるほどに、思考力が奪われていく。
「ふっふ、大分効いて来た様ね‥‥
顔だけじゃなく、全身真っ赤よ?
大丈夫、すぐに楽にしてあげるわ。
私の可愛い坊やがね!」
「‥‥ッ!!」
王妃の”可愛い坊や”
第一王子の事である。
39才になる第一王子。
プラリネは絶望で目の前が真っ暗になる。
まさか、一国の王妃が、こんな卑怯な手を使うだなんて――
17才のショコラ公爵令嬢プラリネはその類まれなる美貌と完璧な立ち居振舞いで、誰よりも輝いていた。
父親とファーストダンスを踊った後、束になって押し寄せるダンスの申し込みを躱して庭園に逃げ、ホッと一息ついたところで厄介な事になった。
飲み物を差し出しながらにこやかに声をかけて来たのは――
王妃である。
「今夜の主役はあなた――いえ、今夜だけじゃないわ。
これから先、あなたが社交界の主役になるのは間違いないわね‥‥」
「畏れ多くも王妃殿下に有難いお言葉を賜り感謝に堪えません。
ですが私はまだ社交界の片隅に加わらせて頂いたばかりでございます。
王妃殿下を始め諸先輩方に教えを賜りながら‥‥」
「あら、謙遜なんて要らないことよ。
それより疲れたでしょう?
これをお飲みなさい」
王妃はそう言って飲み物を差し出したのだ。
これはルール違反の行為で、本来は断っていいのだが。
国で一番高貴な女性に断わるわけにもいかず、プラリネは不安を覚えながらもグラスに口を付けざるを得なかった。
そして直後、その場に膝をつく事になった。
飲み物に良くないものが入っていたのは確実で、激しい目眩にプラリネは立っていられなくなったのだ。
慌てて駆け寄る公爵家の護衛騎士を王妃は制した。
「護衛騎士とはいえ男性が触れるべきではないわ。
大丈夫、少し体調が悪くなっただけでしょう。
落ち着いた場所で休めばすぐ良くなるわ。
人目につくのは避けたいでしょうからこちらへ。
あなたたち、ショコラ公爵令嬢を支えて頂戴」
自分の侍女達にプラリネを抱えさせて、庭園の王族のみが通れる小道へと連れ込み消えてしまった。
王妃に逆らえるはずの無い公爵家の護衛騎士は大急ぎで王の弟であるショコラ公爵を捜すが、こんな非常時にショコラ公爵の姿が見当たらない。
偶然か王妃の策略か――いずれにしろ緊急の用事が発生し、対処しているらしい。
まんまと王妃に連れ去られたプラリネ。
目眩は治まって来たものの、今度は体が酷く熱く、体の内側から性器を叩かれている様な刺激がどんどん強くなっている。
(まさか、媚薬!?)
呼吸が荒くなるほどに、思考力が奪われていく。
「ふっふ、大分効いて来た様ね‥‥
顔だけじゃなく、全身真っ赤よ?
大丈夫、すぐに楽にしてあげるわ。
私の可愛い坊やがね!」
「‥‥ッ!!」
王妃の”可愛い坊や”
第一王子の事である。
39才になる第一王子。
プラリネは絶望で目の前が真っ暗になる。
まさか、一国の王妃が、こんな卑怯な手を使うだなんて――
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる