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ハートリオ

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13 一年前の事件5『腕の中、夢の中』

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「さて‥‥
どうかな?
体の不快症状は全て消え失せたと思うが‥‥」


モーブ猊下に優しく声を掛けられたプラリネは、いまだ夢見心地のまま視線を上げ、覗き込む様にプラリネを気遣うモーブ猊下を見上げる。

『夢見心地のまま』なのは当たり前。

だって突然現れたモーブ猊下に抱き上げられて、そのまままだ彼の腕の中に優しく抱きかかえられているのだから。

もう子供じゃないんだから、早く下ろしてもらってちゃんと自分の足で立ってキチンと挨拶とお礼を言うべきと思うのだけど、まだもう少しこのままで――

逞しく優しい腕の中にもう少しだけ居させて欲しいと願うのは、きっともう子供じゃないから‥‥


――体の不快症状?

‥‥はッ!


「は、はい!
あの、イヤな刺激が全部消えています!
でも、どうして?
私は媚薬を摂取してしまったはず‥‥
最近の媚薬は、せ、‥性交渉しないと抜けないと聞いていたのですが‥‥」

「君が摂取した媚薬はしかるべき所に移した」

「え!?移した!?
そんな事が出来たのですか!?」


至近距離から降って来る低い美声に痺れるッ

プラリネが何とか平静を装い質問すれば――


「『魔女の吐息』という名のあの媚薬は、実は今まで流通していた普通の媚薬――恋人同士が楽しむために気軽に使っていた媚薬と成分はまるで同じなんだ。
ではなぜ比べ物にならない程の強烈な刺激と性交渉しないことには解放されない劇毒物に変化したかと言うと、名前の通り魔女が関わっている。
仕上げの段階で魔女が魔法を掛け、成分を魔力でコーティングするんだ。
だからこそ魔法で君の身体から取り出し別の場所へ移動出来たのだ‥」

「‥はぁぁんッッ‥」

「‥ッ!?
どうした!?」

「‥はぁん、いえ、何でも、はぁ、はぁ‥」
(ムリムリムリ~~!
低くて優しい美声の長文はムリ~~~!)
あの、あなた様のお声にも媚薬成分が含まれているのではないかと‥‥」

「‥それは、どう‥」

「あッ、いえッ!
お忘れくださいませ」

「‥‥嫌でなかったら、どういう意味なのか教えてもらえないだろうか。
女性によくそう言われるのだが、何の事だか――」

「よく言われるッ!?
じょっ、女性に‥‥
ま、まぁッ‥‥」
《ギリッ》

「どうした!?
大丈夫か!?
今の音は‥‥」

「大丈夫ですわ!
大丈夫、ですけどッ」


眉尻を下げたプラリネはモーブ猊下の厚い胸板にギュッとしがみ付き、心の中で叫ぶ。


(変!!
私、変だわ!
会ったばかりのこの御方に独占欲を…
信じられないほど強い独占欲を感じてる!?
心臓がウルサイ!?
体も頭もカッカして…
私は一体どうしてしまったの――!?)
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