束の間のアル《廃王子様は性欲ゼロなのに熱・愛・中！？》

第一章

10 エリダヌス伯爵夫妻3

バサッ！

と扇を開いて口元を隠す夫人。
体は斜め45度。
隣りの伯爵様が真っ直ぐなので違いがよく分かります。
この感じ…何か既視感が…
ああ、平民の子供達がよくやっている『ザァマスごっこ』だ！


「最初に紹介を依頼した時、ここで一番の美少年を用意するよう言ったはず。
確かに今日来た子達は相当な美少年だったけど‥‥‥
この子‥‥アル君の方がさらに美しいじゃないの！
どういう事なの！？
この私を騙したの！？」


え！？
ちょ‥一体何を言っているんだ、この人は‥‥
ウチのツートップ、ちゃんと見てくれたのかな？
ていうか、僕の事、ちゃんと見えてる？


「確かにな‥‥‥
少年の何がいいのか分からないが、アル君の魅力は分かる。」


「「「 ！！！ 」」」

今、無表情な彫像が何か変な事言いました！？
全く‥‥伯爵様まで何を訳の分からない‥‥


「まぁッ、シリウス様！
それならこのアル君を愛人に‥‥」


「アルは事務員です！　
愛人はやりません！」

僕が断る前にデネブ様がビシッと言ってくれました！
さすがやり手オーナー、テキパキしてる！


「アル君しかいませんわ！
私の魅力に腰を抜かさないほど鈍感なシリウス様が誰かに魅力を感じるなんて‥‥
きっとコレが最初で最後！
さ、決定よ！
アル君をエリダヌス伯爵の愛人として拉致…いえ連行…いえ連れて帰るわ！」


「アルは16才‥‥成人です！」

デネブ様が殺人を犯しそうな顔で叫ぶと‥‥‥


「！！
なっ‥‥‥
そ、そんな‥‥‥
やっと決まったと思ったのに‥‥‥」

そう言いながら伯爵夫人が天を仰ぎ、ふかふかソファの背に上半身を預けます。
ドレスだから不確かですけど‥‥
多分、今、大股開きですよね‥‥（汗）


「はい、お分かりですね！
16才、成人男性であるアルを愛人として紹介など出来ません！」

勝ち誇った声と顔のデネブ様‥‥‥
デネブ様はさっきから表情筋が暴走しがちだなぁ‥‥‥
あ、その笑顔、眩しいですっ


「何故だ？」

‥‥‥ん？
‥伯爵様？


「何故、16才成人だと愛人に出来ないんだ？」

伯爵様の質問に他の3人の時が止まります。
伯爵様は無表情 ―――
に見えますが、キョトンとしていますね。

可愛い‥‥

あッ、不敬、不敬！
‥‥でも、思うぐらい、いいですよね。


デネブ様が絞り出す様に呟くように声にします。


「‥‥‥エリダヌス卿‥‥‥
そこからですか‥‥‥」