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20【最終話】さよなら。そして私は
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ルーフス殿下に5年越しのプロポーズの返事をした昨日。
昨日のうちに私エクアは宮殿内の離宮に引っ越しとなって。
一体いつから用意していたのか私好みに設えられた宮殿にポカンとしている内に1夜明けて朝。
まだ侍女は起こしに来ないけど学校は行けるのかしら?
卒業までもう少しあるのよね…
どうなるんだろう?
それよりルーフス殿下の…
ポエニクス王家の方々は小国の伯爵令嬢である私でいいのかしら?
何と言ってもルーフス殿下は大国ポエニクスの第三王子。
身分差が酷過ぎて国民が納得しないのではないかしら?
今更ながらアレコレと考えてしまい
手持ち無沙汰なので一応学校の制服に着替えて
寝室を出て美しい離宮の中を探検――
と思ったら気付いた侍女にバルコニーに案内されてしまった。
素敵なテーブルセットに用意されたお茶にちょっとしたお菓子に――
「これは今朝の新聞?
さすが大国ね…
昨日の事件がもう載って…」
コア、コア、コア…
鳥の声が聞こえて来て。
エクアは紙面に落としていた視線を上げて首を巡らす。
遠く山の上。
朝焼けが淡く残る鴇色の空に3羽連なって飛ぶ鳥影が見える。
その色のせいで『不吉な鳥』なんて呼ばれるのが可哀想。
だってあの鳥は
その爪で
その嘴で
家族を攻撃したりしないだろうに。
1度引いた波が
再び押し寄せる様に
母の記憶がヒタヒタとやって来る。
どうして私をそんな目で見るの
どうして私の声を聞こえないふりするの
どうして私といると溜息ばかりつくの
どうして他の人といる時は楽しそうに笑っているの
私と目を合わせて
私の声を聞いて
『私も大好きよ』と言って
ギュッと抱きしめて
私の幸せを願って
――嘘でもいいから
そうしたらもう付きまとわないから
たった1度でいいから
そんな風に願った『たった1度』が
永遠に来ない事を今朝の新聞で知った。
母に対して怒りが湧いて来る事はない(*元婚約者は覚えてもいない)――
『怒るべき、怒らないと正常ではないのではないか』と不安に思い怒ろうとしても
怒りは直ぐに悲しみに飲み込まれてしまい――
心はまだ傷つき続けているんだろう
だから母に対しての感情は今はまだペンディング状態。
いつか何かしらの決着をつけられる日が来るのかしら。
ただ切に願うのは
もし本当に輪廻転生があるとしたら
今後のどの世界でも
一瞬でも会いたくない
1回だって袖すり合わせたくない
永遠に完全に二度と私の世界に存在しないでほしい
いずれにしろ今の私に出来ることは
母の様にならないこと。
あんな風に自分の欲望を満たす事だけを『幸せ』だと思い
その為には娘でさえ平気で傷つけ殺そうとする。
そんな人間にはならない。
絶対に。
エクアはある一家の無理心中の記事が載っている新聞を置き。
心の中で静かに
さよなら、お母様――
「――になれなかった憐れな人…」
これで完全に終わりにしたいと途中から声に出す。
宙に浮いたまま停止する意識。
そのまま沈み込みそうだった時…
≪コンコンコンッ≫
「‥ハッ」
この軽やかなノックは!
やっぱり!
バルコニーのドアの所に光り輝く彼が立っている。
「‥まぁ、王子殿下がご自分でノックするなど‥
お呼び下されば馳せ参じますことよ?‥ふぁッ?」
話している途中で輝く笑顔のルーフスに抱きしめられて驚くエクア。
極端にスキンシップの無い環境で育ったのでこれはパニック案件である!
「わわわわわッ‥
どうなさいました!?
ルーフス殿‥」
「愛している!
会いたかった!
君に会いたくて今日1日分の執務を最速で終わらせて来たんだ!」
「!?」
今日1日分の執務って…
まだ朝の8時‥
「一刻も早く君の父上に婚約の許しを得たいからね!
出来るだけ早く君の母国を訪問したいんだ!
その相談がてら朝食を共にしたくてね!
――ン、コホン、
ご一緒頂けますか?」
朝から眩しいです!
太陽の様な輝き。
降り注がれる温度の高い光――
愛に飢えている私にその過剰なまでの愛情はウェルカムで――
5年前の告発の後、父や兄達は『本当は君を想っていた』『一緒に暮らしたいと思っていた』『心から愛している』などと言ってくれたけど。
実際に死ぬ寸前まで放っておかれたわけで。
自分から動かなければ死んでいたわけで。
後からいくら美しい言葉を贈られてもそれは上滑りして私には着地しなくて。
(この人達とはご縁が無かった)
今はそう結論付けている。
今目の前でキラキラ瞳を輝かせている人は
私から愛を引き出してくれる。
自分の中から湧き上がって溢れ出す愛は私を最高に…
「はい。
お誘いありがとうございます。
…でも私にとってお父様は殆ど他人ですから…
手紙で伝えるだけで充分ですよ?」
「そうだね。
――実は私の中にも君を13年間も放っておいた人間に父親面してほしくないというモヤモヤはある。
だけど私がわざわざ足を運び礼を尽くすのは君の為だ。
君を心から大切に思うからこそ尊重することを君と私の関係者全員に示したい」
――あぁ本当にこの人は――
きっとこの先何があっても
例えば私が何かやらかしても
例えば私が足を踏み外して崖下に落ちれば
あなたは自ら飛び込んで来てくれる
そう信じられる
そして私も
あなたにそうするんだ――
そんな風に自分の中から湧き上がってくる熱いものは
私を最高に幸せにする
それを伝えたくて
「‥ッ!?」
――何と自ら。
唇で唇に触れる行為をしてしまうエクア。
――その後が大変だった事は言うまでもない…(笑)
昨日のうちに私エクアは宮殿内の離宮に引っ越しとなって。
一体いつから用意していたのか私好みに設えられた宮殿にポカンとしている内に1夜明けて朝。
まだ侍女は起こしに来ないけど学校は行けるのかしら?
卒業までもう少しあるのよね…
どうなるんだろう?
それよりルーフス殿下の…
ポエニクス王家の方々は小国の伯爵令嬢である私でいいのかしら?
何と言ってもルーフス殿下は大国ポエニクスの第三王子。
身分差が酷過ぎて国民が納得しないのではないかしら?
今更ながらアレコレと考えてしまい
手持ち無沙汰なので一応学校の制服に着替えて
寝室を出て美しい離宮の中を探検――
と思ったら気付いた侍女にバルコニーに案内されてしまった。
素敵なテーブルセットに用意されたお茶にちょっとしたお菓子に――
「これは今朝の新聞?
さすが大国ね…
昨日の事件がもう載って…」
コア、コア、コア…
鳥の声が聞こえて来て。
エクアは紙面に落としていた視線を上げて首を巡らす。
遠く山の上。
朝焼けが淡く残る鴇色の空に3羽連なって飛ぶ鳥影が見える。
その色のせいで『不吉な鳥』なんて呼ばれるのが可哀想。
だってあの鳥は
その爪で
その嘴で
家族を攻撃したりしないだろうに。
1度引いた波が
再び押し寄せる様に
母の記憶がヒタヒタとやって来る。
どうして私をそんな目で見るの
どうして私の声を聞こえないふりするの
どうして私といると溜息ばかりつくの
どうして他の人といる時は楽しそうに笑っているの
私と目を合わせて
私の声を聞いて
『私も大好きよ』と言って
ギュッと抱きしめて
私の幸せを願って
――嘘でもいいから
そうしたらもう付きまとわないから
たった1度でいいから
そんな風に願った『たった1度』が
永遠に来ない事を今朝の新聞で知った。
母に対して怒りが湧いて来る事はない(*元婚約者は覚えてもいない)――
『怒るべき、怒らないと正常ではないのではないか』と不安に思い怒ろうとしても
怒りは直ぐに悲しみに飲み込まれてしまい――
心はまだ傷つき続けているんだろう
だから母に対しての感情は今はまだペンディング状態。
いつか何かしらの決着をつけられる日が来るのかしら。
ただ切に願うのは
もし本当に輪廻転生があるとしたら
今後のどの世界でも
一瞬でも会いたくない
1回だって袖すり合わせたくない
永遠に完全に二度と私の世界に存在しないでほしい
いずれにしろ今の私に出来ることは
母の様にならないこと。
あんな風に自分の欲望を満たす事だけを『幸せ』だと思い
その為には娘でさえ平気で傷つけ殺そうとする。
そんな人間にはならない。
絶対に。
エクアはある一家の無理心中の記事が載っている新聞を置き。
心の中で静かに
さよなら、お母様――
「――になれなかった憐れな人…」
これで完全に終わりにしたいと途中から声に出す。
宙に浮いたまま停止する意識。
そのまま沈み込みそうだった時…
≪コンコンコンッ≫
「‥ハッ」
この軽やかなノックは!
やっぱり!
バルコニーのドアの所に光り輝く彼が立っている。
「‥まぁ、王子殿下がご自分でノックするなど‥
お呼び下されば馳せ参じますことよ?‥ふぁッ?」
話している途中で輝く笑顔のルーフスに抱きしめられて驚くエクア。
極端にスキンシップの無い環境で育ったのでこれはパニック案件である!
「わわわわわッ‥
どうなさいました!?
ルーフス殿‥」
「愛している!
会いたかった!
君に会いたくて今日1日分の執務を最速で終わらせて来たんだ!」
「!?」
今日1日分の執務って…
まだ朝の8時‥
「一刻も早く君の父上に婚約の許しを得たいからね!
出来るだけ早く君の母国を訪問したいんだ!
その相談がてら朝食を共にしたくてね!
――ン、コホン、
ご一緒頂けますか?」
朝から眩しいです!
太陽の様な輝き。
降り注がれる温度の高い光――
愛に飢えている私にその過剰なまでの愛情はウェルカムで――
5年前の告発の後、父や兄達は『本当は君を想っていた』『一緒に暮らしたいと思っていた』『心から愛している』などと言ってくれたけど。
実際に死ぬ寸前まで放っておかれたわけで。
自分から動かなければ死んでいたわけで。
後からいくら美しい言葉を贈られてもそれは上滑りして私には着地しなくて。
(この人達とはご縁が無かった)
今はそう結論付けている。
今目の前でキラキラ瞳を輝かせている人は
私から愛を引き出してくれる。
自分の中から湧き上がって溢れ出す愛は私を最高に…
「はい。
お誘いありがとうございます。
…でも私にとってお父様は殆ど他人ですから…
手紙で伝えるだけで充分ですよ?」
「そうだね。
――実は私の中にも君を13年間も放っておいた人間に父親面してほしくないというモヤモヤはある。
だけど私がわざわざ足を運び礼を尽くすのは君の為だ。
君を心から大切に思うからこそ尊重することを君と私の関係者全員に示したい」
――あぁ本当にこの人は――
きっとこの先何があっても
例えば私が何かやらかしても
例えば私が足を踏み外して崖下に落ちれば
あなたは自ら飛び込んで来てくれる
そう信じられる
そして私も
あなたにそうするんだ――
そんな風に自分の中から湧き上がってくる熱いものは
私を最高に幸せにする
それを伝えたくて
「‥ッ!?」
――何と自ら。
唇で唇に触れる行為をしてしまうエクア。
――その後が大変だった事は言うまでもない…(笑)
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