Man under the moon

ハートリオ

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28.フットさんの話

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ピコさん、フットさんと別れ駅まで歩く。 シティ行きの次の列車は30分後。 夜には着くだろうから、セルシウスとの約束には充分間に合うが・・・


俺はもうユニを捜す気力が失せている。
捜してどうなる?  捜し出せば絶対会わずにはいられない。 そして?
19年間の変わらぬ想いをぶつけてまた“ ごめん ”と言わせるのか?
今ユニが幸せなら、それでいいだろう? いいはずだ・・ いい・・・

・・・だけど・・一目だけでも会いたい・・


 ――― って俺! シツコイ!!


俺よ、いい加減大人になれ・・・!
ユニは今幸せなんだ! 波風立てるな!!


「モ・・モルさん・・」


「・・ハッ・・」


ベンチで頭を抱えていた俺の前にフットさんが立っている。 あ、隣に座った。


「ピコが、知ってる事は全部モルさんに話して謝れって・・・」


・・・大柄なオジサンがシュンとして小さくなっている・・・

この人もナノに人生を狂わされた一人だ・・


「・・もういいですよ。 今更、何を聞いても何も変わらないし、無理に嫌な事を思い出したり話したりする必要、ありません。」


「・・へへ、やっぱモルさんは優しいんだな。 ユニがよくそう言ってた・・」


俺は全然優しくない。 離れている間にユニは俺を理想化してしまったらしい・・
―― なんて思っていたら、いいと言うのにフットさんが話し始める。


「シティの森から姉貴がユニを攫って来た時、姉貴は妊娠も何もしてなかった。」


・・・え!?


「その1か月前に、ユニの学校の3年・・何かヒョロッコイ奴にユニを誘い出させて・・ユニは優しいだろ、困ってるから助けてとか言わせて、姉貴のダチがやってたカフェバーに連れて来させた。 ユニはもう姉貴の呼び出しに応じなくなってたから、そんな手を使って、で、媚薬入りの飲み物を飲ませた。」


3年の・・アイツか! 俺に告白して来たヤツ・・そう言えば、あの後『ユニ君が何言ったか知らないけど、僕はただ言われた通りお店に連れて行っただけだからね、後の事は知らないから、僕のせいじゃないから』とかゴチャゴチャ言ってたっけ・・


「媚薬ってヤツは、量を間違えると大変な事になるんだ。 なのに姉貴は千載一遇のチャンスに絶対成功したくて、大量に混ぜちまった。 致死量を優に超える量をな。 姉貴はそれまでそんなモノ使う必要が無かったから知らなかったんだ。 いっぱい入れれば、いっぱい効くと思ってやっちまったって言ってた・・・」


・・殺人未遂じゃないか! あのクソ女、ユニを殺すところだったのか・・
大体、媚薬じゃなくても、薬は用法・用量を守らなければ毒にもなる。 それを、“いっぱい入れれば、いっぱい効く ”って・・・何て・・・


「浅はかなんだよ、姉貴は。 最初は、簡単にユニを落とせると思ってたらしい。 体で誘えばイチコロだろう、って。 でもユニは断った。 次は金だ。 高級な品々を次々にプレゼントした。 でもユニに全部返された。 困り果てた姉貴は、やっぱり体だと思った。 ユニは女を知らないから・・強引なやり方でも、一度知ってしまえば自分に落ちると、そう思って騙して連れ出させ、媚薬を飲ませたんだ。」


聞いてて気持ち悪くなって来た。 ・・いや、俺もあの頃おかしかったか・・


「大量の媚薬を飲まされて、ユニはすぐに倒れ、苦しんだ。 セックスなんか出来るわけねえ、病院でずっと生死の境をさまよってたんだ・・可哀想だった・・」


フットさんが涙ぐむ。 ナノの弟とは思えない、マトモな人だ・・


「姉貴はあの日、ユニに謝りに学校へ向かった。 興業が終わって、もう帰るから、お別れも言いたかったと・・そうなんだ、姉貴はユニを殺しかけちまって、さすがに諦める決心をしたんだ。 けど、ユニとモルさん、二人を見掛けて、森の中まで追いかけて、二人の会話を聞くうちに、どうしてもユニを奪いたくなった。 モルさん、あなたのせいだと姉貴は言ってた。」


「・・俺の!? ・・そう言えば、凄い目で俺を睨んでいた・・・何故だ!? 俺はナノに対して、何も恨まれる様な事していない・・・何故、俺のせいなんだ!?」
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