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27.(過去回4.)人質
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俺はフラフラとユニに近付いて行く。
手を伸ばせば触れられる距離まで近づくも、ユニは向こうを向いたままだ。
触れたくて・・・触れられない。
その愛しい肩まで伸ばした手を引っ込めて、目を逸らし訊ねる。
「・・・妬く・・って、何で・・」 もどかしさのせいか思う様に声が出ない・・
「・・ふっ・・訊く?」
ユニも呟くような、掠れた声でそう言い、やっと振り返る。 まるで操られているかの様に俺は逸らしていた目をユニに向ける。
久しぶりにその顔を間近に見て、その瞳を覗き込み、その瞳に見つめられれば、頭の中は真っ白になり、ただずっとこうしていたいという想いに囚われる。
ただ・・・好きだ・・!
強さと脆さを併せ持つその想いに全身を貫かれ、心が震えて、ユニを見つめ続ける事しか出来ない。
ユニは俺から瞳を逸らせる事無く訊いて来る。
「あの時の“ 返事 ”・・・聞くことになるけど・・・いいの?
やっと・・・“ 返事 ”させてくれるの?」
潤んだ瞳に震える声・・
・・ッ、今すぐ抱きしめたい・・!
なのに俺の口は・・
「・・あの歌姫と付き合ってるんじゃないのか? 彼女の所に泊ったんだろう?」
・・と。 そんな事、もうどうでもよくなっていたはずなのに、何で、俺は!?
「・・あの時は、店で出された飲み物を飲んだ途端意識を失くして、多分病院に運ばれたんだと思う。 ずっと苦しくて、たまに意識が戻っても朦朧として・・ナノさんの声を聞いた気がするけど、それも分からない。 次に少し意識がハッキリした時は、学校の門の前に座り込んでいた。 2日も経っていた感覚も無い。 何とか寮に戻った様だけど、とにかくどこからが現実なのか・・その何日か後にやっと頭がハッキリして来たんだけど・・でも、今でも何が起こったのかよく分かってないんだ。」
「ユニ・・君は、薬を盛られたんだな!? 薬というより、毒を・・! 何故・・命を狙われたという事か!? その店って・・」
外泊の噂を聞いてユニの寮の部屋を訪ねた時ボンヤリしていたのは、女に現を抜かしてフヌケになっていたわけじゃなく、薬のせいだったのか・・・!
それなのに、俺は嫉妬に狂って・・・
「・・あ・・ユニ、ごめん・・俺、あの時勘違いして・・」
自分の小ささに恥ずかしくなりながら、とにかく謝る俺に、ユニが静かに言う。
「ナノさんには何回も『付き合って欲しい』って言われたけど、全部ちゃんと断った。・・・付き合ってないよ。」
俺は 「ああ、よかった。」 と答える。 嬉しくて顔が紅潮するのを感じる。
「“ 返事 ”・・・していい? ・・って、もうしてるようなものだけど・・・」
ユニも顔を赤くして、そう訊いて来る。
「ちゃんと聞きたい。 その後、ちゃんとプロポーズする。」
もう目を逸らせる事無くユニの瞳を見つめたままそう宣言すると、ユニが更に赤くなる。 愛しい。 もう我慢出来ない。 ユニを抱きしめようと手を伸ばした時 ――
「私、妊娠したッ!! ユニ君の子供を妊娠したわッ!!」
女の甲高い声が響き渡った。
俺とユニが声のした方を見ると、遊歩道に女が一人立っている。
・・・ナノだ。 ナノが、ステージ衣装とも下着ともつかない服装も気にならない程恐ろしい形相でこちらを睨みながら荒く息をしている。
「ナノさん? 何を言っているんだ!? 俺はあなたとそんな関係じゃない!
話をしただけで、子供が出来るはず・・」
困惑しながら否定するユニを遮って、ナノが言い放つ。
「あの薬は媚薬よ! ウチの一座は興行先で媚薬も売ってんの! 違法薬物とされてるから、裏でコッソリ、ね! それをあの店に金を掴ませて、ユニ君の飲み物に入れたのよ! ユニ君はすぐ倒れてしまって、意識も朦朧としてたけど、救急隊が来るまでの間、アタシが上になって、・・・セックスしたのよ! 覚えてないだろうけど、したの! そして、妊娠した! ユニ君に会ってからは、誰ともしてない、あの時だけなんだから、ユニ君の子供で間違いないわ!!」
「そ・・そんな・・」 ユニがショックのあまり絶句する。
「・・つまりお前は、ユニに違法の薬物を盛って意識朦朧とさせた上でレイプした、という事だな! 何て最低な女だ!」
俺は怒りに震えながらナノを責める。 ナノは憎しみのこもった目で俺を睨み返し、ユニに視線を移すと、今度はしおらしい声で懇願する。
「一緒に来て、ユニ君! 必ずあなたを幸せにする! 約束する! 子どもと3人、家族になって、幸せになるの! ね、あなたは父親になるのよ! ねッ!? お願い・・! アタシ、あなたを心から愛しているのよ!」
「・・何度も断ったはずだ! 俺はあなたを愛してない! 俺が愛しているのは、ここにいる彼・・「子供を殺すわッ!!」
ナノの狂ったような金切り声がユニの言葉を飲み込む。
「独りで子供なんか育てらんない! ユニ君がアタシと来ないなら、アタシ、きっと子供を殺しちまうわ! アタシ、カッとすると、どうなっちゃうか分かんないんだモン、ワケわかんなくなっちゃうんだモン・・・!」
「「 ッ!! 」」
ナノは卑怯にも、自分の子供を人質に、ユニの最大の弱点を突いた。
“ 子供を殺す ”と言われてしまったら、ユニは言いなりにならざるを得ない。
ナノがユニに向かって手を差し出す。
ユニはフラフラとナノの方へ向かって行く。 行ってしまう・・・
「・・・ユニ・・ッ」 俺は必死に声を絞り出す。
ユニは振り返り、「・・ごめん・・」とだけ・・・
ユニの美しい瞳から零れ落ちる美しい涙・・・
その美しさが、美しさの分、哀しくて、痛かった ―――
手を伸ばせば触れられる距離まで近づくも、ユニは向こうを向いたままだ。
触れたくて・・・触れられない。
その愛しい肩まで伸ばした手を引っ込めて、目を逸らし訊ねる。
「・・・妬く・・って、何で・・」 もどかしさのせいか思う様に声が出ない・・
「・・ふっ・・訊く?」
ユニも呟くような、掠れた声でそう言い、やっと振り返る。 まるで操られているかの様に俺は逸らしていた目をユニに向ける。
久しぶりにその顔を間近に見て、その瞳を覗き込み、その瞳に見つめられれば、頭の中は真っ白になり、ただずっとこうしていたいという想いに囚われる。
ただ・・・好きだ・・!
強さと脆さを併せ持つその想いに全身を貫かれ、心が震えて、ユニを見つめ続ける事しか出来ない。
ユニは俺から瞳を逸らせる事無く訊いて来る。
「あの時の“ 返事 ”・・・聞くことになるけど・・・いいの?
やっと・・・“ 返事 ”させてくれるの?」
潤んだ瞳に震える声・・
・・ッ、今すぐ抱きしめたい・・!
なのに俺の口は・・
「・・あの歌姫と付き合ってるんじゃないのか? 彼女の所に泊ったんだろう?」
・・と。 そんな事、もうどうでもよくなっていたはずなのに、何で、俺は!?
「・・あの時は、店で出された飲み物を飲んだ途端意識を失くして、多分病院に運ばれたんだと思う。 ずっと苦しくて、たまに意識が戻っても朦朧として・・ナノさんの声を聞いた気がするけど、それも分からない。 次に少し意識がハッキリした時は、学校の門の前に座り込んでいた。 2日も経っていた感覚も無い。 何とか寮に戻った様だけど、とにかくどこからが現実なのか・・その何日か後にやっと頭がハッキリして来たんだけど・・でも、今でも何が起こったのかよく分かってないんだ。」
「ユニ・・君は、薬を盛られたんだな!? 薬というより、毒を・・! 何故・・命を狙われたという事か!? その店って・・」
外泊の噂を聞いてユニの寮の部屋を訪ねた時ボンヤリしていたのは、女に現を抜かしてフヌケになっていたわけじゃなく、薬のせいだったのか・・・!
それなのに、俺は嫉妬に狂って・・・
「・・あ・・ユニ、ごめん・・俺、あの時勘違いして・・」
自分の小ささに恥ずかしくなりながら、とにかく謝る俺に、ユニが静かに言う。
「ナノさんには何回も『付き合って欲しい』って言われたけど、全部ちゃんと断った。・・・付き合ってないよ。」
俺は 「ああ、よかった。」 と答える。 嬉しくて顔が紅潮するのを感じる。
「“ 返事 ”・・・していい? ・・って、もうしてるようなものだけど・・・」
ユニも顔を赤くして、そう訊いて来る。
「ちゃんと聞きたい。 その後、ちゃんとプロポーズする。」
もう目を逸らせる事無くユニの瞳を見つめたままそう宣言すると、ユニが更に赤くなる。 愛しい。 もう我慢出来ない。 ユニを抱きしめようと手を伸ばした時 ――
「私、妊娠したッ!! ユニ君の子供を妊娠したわッ!!」
女の甲高い声が響き渡った。
俺とユニが声のした方を見ると、遊歩道に女が一人立っている。
・・・ナノだ。 ナノが、ステージ衣装とも下着ともつかない服装も気にならない程恐ろしい形相でこちらを睨みながら荒く息をしている。
「ナノさん? 何を言っているんだ!? 俺はあなたとそんな関係じゃない!
話をしただけで、子供が出来るはず・・」
困惑しながら否定するユニを遮って、ナノが言い放つ。
「あの薬は媚薬よ! ウチの一座は興行先で媚薬も売ってんの! 違法薬物とされてるから、裏でコッソリ、ね! それをあの店に金を掴ませて、ユニ君の飲み物に入れたのよ! ユニ君はすぐ倒れてしまって、意識も朦朧としてたけど、救急隊が来るまでの間、アタシが上になって、・・・セックスしたのよ! 覚えてないだろうけど、したの! そして、妊娠した! ユニ君に会ってからは、誰ともしてない、あの時だけなんだから、ユニ君の子供で間違いないわ!!」
「そ・・そんな・・」 ユニがショックのあまり絶句する。
「・・つまりお前は、ユニに違法の薬物を盛って意識朦朧とさせた上でレイプした、という事だな! 何て最低な女だ!」
俺は怒りに震えながらナノを責める。 ナノは憎しみのこもった目で俺を睨み返し、ユニに視線を移すと、今度はしおらしい声で懇願する。
「一緒に来て、ユニ君! 必ずあなたを幸せにする! 約束する! 子どもと3人、家族になって、幸せになるの! ね、あなたは父親になるのよ! ねッ!? お願い・・! アタシ、あなたを心から愛しているのよ!」
「・・何度も断ったはずだ! 俺はあなたを愛してない! 俺が愛しているのは、ここにいる彼・・「子供を殺すわッ!!」
ナノの狂ったような金切り声がユニの言葉を飲み込む。
「独りで子供なんか育てらんない! ユニ君がアタシと来ないなら、アタシ、きっと子供を殺しちまうわ! アタシ、カッとすると、どうなっちゃうか分かんないんだモン、ワケわかんなくなっちゃうんだモン・・・!」
「「 ッ!! 」」
ナノは卑怯にも、自分の子供を人質に、ユニの最大の弱点を突いた。
“ 子供を殺す ”と言われてしまったら、ユニは言いなりにならざるを得ない。
ナノがユニに向かって手を差し出す。
ユニはフラフラとナノの方へ向かって行く。 行ってしまう・・・
「・・・ユニ・・ッ」 俺は必死に声を絞り出す。
ユニは振り返り、「・・ごめん・・」とだけ・・・
ユニの美しい瞳から零れ落ちる美しい涙・・・
その美しさが、美しさの分、哀しくて、痛かった ―――
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