Man under the moon

ハートリオ

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26.(過去回3.)待てない

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「・・・モル・・・待って・・少し・・急にそんな言われても・・俺、混乱して・・」


震える声でユニが言う。


俺は抱きしめていた背中を離す。

振り返ろうとするユニの横を追い越し、10歩ほど歩き、立ち止まり、問う。


「・・“ 急に ”・・か?」


“ 急に ”か? うすうす気付いていたんじゃないか?
・・・“ 待て ”って? どれくらい?


「・・・待てない・・・」


待てない。 俺は不治の病で、時間が無いから・・
今夜倒れて死ぬかもしれないから・・・


「・・ッ! モル・・・」


小さく叫ぶユニ。

・・そう、混乱するよな・・頭では解ってるのに・・


「・・もう・・・いい・・・」


カラッポの頭と心でそう呟き、俺はその場を立ち去った。





人工雪が降りしきる中、俺は一方的に告白し、一方的に突き放してしまった。

“ 待てない ” 自分に ―― 自分の体に絶望していた。














家に戻った後、熱を出し、一週間ほど寝込んだ。


久々に登校してみると、学校はユニの外泊問題でもちきりだった。
2日も無断外泊したという。


俺は体調を崩して寮の部屋にいるというユニを訪ね、


「どういう事だ!? あの女の所に泊まったのか!?」と詰問したが・・


「・・え・・いや・・分からない・・覚えてない・・」


ボンヤリした様子のユニがそんな事を言う。


「覚えていないはずが無いだろう!? 2日も外泊しておいて・・・」


ユニは、力が入らない感じで長椅子に座りぼーっと前を見ていたが、その視線をボンヤリ俺に移し、ボンヤリ話す。


「店で・・何か飲んだ後から・・白衣・・病院に居たと思う・・ずっと苦しい・・」

要領を得ない話と、ボンヤリした様子が異常に色っぽく、嫉妬で頭に血が上っていた俺は、「・・最低だな!」 と吐き捨てて、部屋を出た。

これ以上部屋に留まれば、殴るか抱くかしてしまいそうだった。


その2日後にユニが授業に出てくるようになって、そうしてユニが姿を見せれば、噂話は消えて行ったけど、俺はユニを避け続けた。

あんな女に簡単に誘惑され無断外泊までしたのかと思うと悔しく、怒りで体が焼かれる様で、苦しかった。


口をきかないまま1ヶ月が過ぎた頃、俺は3年に第3校庭に呼び出された。 人通りの無い、ユニと初めて話した、あの校庭だ。

噴水の前に立つ3年は3年と言っても華奢で俺より20センチ・・ユニよりも10センチぐらい身長が低い。 俺は目つきが悪いらしく、ちょくちょく上級生に絡まれるので、またタイマンのお誘いかと思ったが違うようだな・・と思っていると、


「モ、モル君の事、好きなんだっ! 僕がユニ君を忘れさせてあげるッ・・お願い、僕と付き合って!」


名前も知らない3年にイキナリそんな事を言われ抱きつかれて焦った俺は、華奢な体からは想像できない程強く抱きついて離れようとしない3年を引き離そうと必死になっている所に、ユニが来て ―――


「「 ッ! 」」


二人同時に息を呑み、ユニが踵を返して走り出し、俺は反射的に追いかけるが・・・

ハッキリ言ってユニは何でも優秀だ。 足もやたら速い。
やっと追いついたのは、学校の外・・・人工森の中にある遊歩道の側だ。
(追いついたというより、ユニが木の側に佇んでいたのだ。)


木に手をかけて佇んでいるユニ・・・俺が追いかけて来た事に気付いているはずだが、こちらを見ない。 俺は乱れた呼吸のまま、


「ハァッ、ハァッ・・何? 別に俺が誰と付き合おうが関係ないだろ?」


と、訳の分からない事を言ってしまう。


「・・さっきの人と、付き合ってるの?」と、ユニが訊いて来るので、


「・・さぁ? 告白されたし、カワイイから付き合うかも。」


また何ともバカな、心にもない事を言ってしまい、自省が追いつかない。
カワイイも何も、顔も覚えていない。


「・・確かに、俺に止める権利は無いけど・・学校で・・俺の前で抱き合ったりとかはやめて欲しい・・」


やっと聞き取れる様な小さな声・・・

何を言っているんだ、自分は10才も年上の女に誘惑されて外泊までしておいて、異性愛はいいけど、同性愛はダメだと!?


「何故だ!? シティの乱れた同性愛は清らかな地方出身者には気持ち悪いか? 見るのも汚らわしいか!? バカらしい・・地方では罪悪でも・・「・・違う!」


地方で育ったユニに同性愛が受け入れられないのは仕方ない・・頭では解っているのにやっぱり責めてしまう俺をユニがこちらを見る事無く遮る。





「・・・そういうんじゃない・・・」 またも蚊の鳴くような、小さな声。


「じゃあ、何だよ!?」 俺が怒鳴るのとほぼ同時に 「俺が・・」 とユニが言い掛け・・





・・絞り出す様に、掠れた声で続けた。


「・・・俺が、妬くから・・・」


―― ザッ・・! ――








突然の風に木の葉が舞う。








向こうを向いたまま俯いているユニの髪が激しく風にかき乱される。











それ以上に俺の心はザワついて ―――






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