Man under the moon

ハートリオ

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25.父娘

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「・・・・・・」


言葉が出ない。 グッと歯を食いしばる。 握りしめた拳が震える。


あの時の後悔、その後の後悔、今までの後悔・・・色々な後悔に次々に襲われ心がかき乱される。


俺は、いつでも、何てバカだったんだ・・・



「そんな会話の少し後に、お父さんがあの新聞のモルさん ―― 昨日見せた新聞の切り抜きのモルさんを見て泣いていたんです。 お父さんが泣くのを見たのは後にも先にもその1回きりです。 ・・・その時は気付かなくて。 モルさんがお父さんの“大切な人”だって・・。 ・・その頃はまだ、お父さんを誰にも取られたくなかったからかもしれません・・まだ、分かってなかったから・・」


静かに語り続けるピコさん・・たくさん悩んで、悩み抜いた末に辿り着いた決意だったんだな・・・成人の日に、俺にユニを返すって・・・


「・・さっきも言ったけど、ピコさんがユニを誰かに返す必要なんて無いんだよ。 いくつになったって、ピコさんはユニの大切な娘なんだからね。」


俺がそう言うと、ピコさんは決意に満ちた目で俺を見つめる。 そして・・・


「お父さんは、自分が居なければ、お母さんが私を殺すかもしれないと分かっていました。 だから、ずっと私の側で、私を守ってくれたんです。
ほ、 ・・・・・・、
・・・・・・・、
・・・・・・・・、
ほ、ッ本当の父親じゃない・・血が繋がっていない・・のに・・・!」


「・・・ピコ・・さん?」

何を・・言っている!? 何を・・・

ユニがナノを妊娠させてしまった――だから俺は諦めるしかなかった――ユニは、子供を見捨てる事など絶対に出来ないと分かっていたから――だから――だから――ッ


「・・・ピコ・・・知ってたのか・・・」


ハッ! 眠り込んでいたはずのフットさんがいつの間にか俺達の後ろに・・

・・・蒼白な顔・・・震える体・・  アレは・・フットさんが何度か苦しそうに口にした“墓場まで持ってかなきゃなんねえ秘密”は・・そう・・いう事・・か・・


「・・お母さんは、感情が昂ると何でも口に出してしまう。 小さい頃は何を言っているのか分からなかったけど、年を取るにつれて、あの時言っていたアレはこういう事なのか、って、パズルのピースがどんどん埋まって行って・・・

ごめんなさい、モルさん・・お父さんは、ずっとあなたを想ってた・・・なのに私を守る為に、血の繋がらない私のお父さんになってくれた・・・だから私はあなたに・・私達家族がお父さんを奪ってしまったモルさんにお父さんを返さなきゃって・・「もう遅い!!」

俺は、堪えきれずにピコさんの言葉を遮る。


「もう遅い・・! ナノが言っていた・・ユニは今、俺じゃない・・他の誰かと一緒に居る・・・もう、遅いんだっ・・」


「・・えっ!?」
「ユ・・ユニが!? まさか、そんな・・っ」


そう言ったまま、ピコさんとフットさんは絶句する。


あと少し早ければ・・・5年前ならまだ・・・
いや、もう何を考えても無駄だ。 俺は遅かったんだ。 俺はまた失ったんだ・・


あぁ・・何度も・・
何度も何度も何度も君を失う ――― ユニ・・・!

あと何度失えばこの心は鎮まるんだろう・・この想いは枯れてくれるんだろう ――


誰も何も言えないまま暫く立ち尽くし ―――


「・・失礼します。 人と会う約束があるので・・」


そう言って俺は公園を後にする。
犬がスッと隣に来るので、頭を撫でてやる。 「クゥン・・」
口にハーネス・・・ユニ手作りのハーネスを大事そうにくわえているので、体に着けてやると、ブンブンと尻尾を振る。 もう一度、頭を撫でてやる。



二人は・・・本当の父娘は未だ動けずにいる。
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