Man under the moon

ハートリオ

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32.一カ月前、シティの駅で

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「それでは・・・踊って頂けますか? レディ?」


芝居がかった仕草と台詞で本日の主役のピコさんを恭しくダンスに誘うと、赤面して俯いてしまっていたピコさんがパァッと顔を輝かせて、


「はいっ! 喜んで!!」


と言い、差し出した俺の手に少しおずおずと自分の震える手を乗せる。 何だかこっちまで緊張するね。
ホラ、君達も! と目で合図すると、カンデラ君とジュール嬢もダンスの態勢を取る。 彼等は彼等で、果し合いの様な緊張感だ。


音楽に合わせて踊り出せば、単純な動作の繰り返しなのですぐにスムーズに踊れるようになるが・・・座っている人たちが手拍子をして来るのには何かむず痒さを感じる。 まぁ、ピコさんが楽しそうだからいいか・・・


「ピコさん、モルさんに恋してるわね!」


パートナーチェンジした途端、ジュール嬢が耳打ちして来る。 ・・は?


「彼女にとって俺は“ 父親の大切な人 ”って位置だよ。 ・・まぁ中々に複雑な位置ではあるが、恋ではあり得ない。 心配しなくても、君やカンデラ君のライバルにはならないよ。」


笑いながらそう言うと、ジュール嬢は震える瞳で数秒俺を見つめた後、大きく視線を外しながら、


「・・ッ、本当に、鈍感な人ね・・」


と言う。 ??
―― 女性は、何考えているのかまるで分からないな・・・


俺は視線を上げて柔らかく輝く月を見る。 ユニが好きだと言う光景・・・

柔らかな月光に融けて行く感覚が、俺をあの瞬間に引き戻す。


ビット村からシティ行きの列車に乗り、フットさんから渡されたピコさんの手紙に目を通した瞬間、雷に打たれたような、あの衝撃 ―――


働かない頭で取り敢えず辿り着いた。

―― 俺はまず、自分の命を助けたのが誰なのか知る必要がある、と。


一刻も早く知らねばならない・・だが知るのが恐ろしい・・知りたくない・・
何とも言えない複雑な心境でようやくシティへ到着する。

地方からシティへ入るにはちょっと手続きが面倒だが、セルシウスが第2ゲートを通りやすくしておいてくれているはず・・・と思ったら、あの人影・・・セルシウスか? (老けたな!!) わざわざ来たのか・・・


「ハッ・・わわわ、ひぃぃっ!? な、何この・・犬!? デカッ・・!! 獅子かと思った・・・何かの撮影かと思ったら・・全く・・ワイルドな旅行系の広告かよ!・・いや、お前ぇ・・・(一応小声で)探偵なんだろ? 駅イチで目立ってるけど?」


「あぁ、この犬は目立つよな・・駅のペット預かりサービスに預け「クゥンッ!」


・・預けようかと思ったら犬がイヤイヤをする。 この犬、察知能力凄いな!


「随分懐かれてるな、モル! ユニもそうだったよな、何にでも懐かれてた。」


「・・・・・・」


「高校の寮の中で皆色々ペット飼ってたろ? 中には爬虫類系とか猛獣系飼ってる奴等もいて、たまにペット同士でケンカが勃発しそうになると、ユニが収めてたんだ。 どのペットにも懐かれてたから出来たんだ。 ・・ま、一番驚いたのはモルまで懐いた時だけどね! あの時はモルファンが全員ぶっ倒れて大変だったんだぜェ!?」


「・・・俺は猛獣扱いか。」


「イエス、そしてユニは天才猛獣使い。 そのユニからってていのメッセージが送られて来た。 こっち、俺の車で見せるよ。」
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