11 / 88
11 醜い女
しおりを挟む
公爵令嬢ヤンディ・ロップ――
煌めく銀髪にティスリー王族の血を引く瑠璃色の瞳を持つ彼女は唯一人の王太子妃候補。
ティスリー王立貴族女学園卒業間近の18才。
優秀で万人に平等に優しく人望も厚い彼女は類まれなる美しさと将来国母となる資質を兼ね備え…
王国イチの令嬢と名高い――
(さすがに盛り過ぎ――と言うか実際は他の令嬢と何ら変わりない平凡且つ退屈な令嬢。公爵令嬢としては普通に品行方正で落ち着いた令嬢だと思っていたが――体が不自由な状態のラマンジェ嬢を集団で害そうとしただと?…そう言えばあの時…)
ザートは1週間前の、馬車の中からルミエを見掛けた時のことを思い出す。
『何だアレは…酷いものだな』
青果マルシェをノロノロ歩くルミエを白く濃い靄の様なものが包んでいるのを見て思わず剣呑な声を出したザート。
馬車に同乗していたヤンディがそれに対して
『アレは貧乏伯爵令嬢ルミエですわ。何と私と同じ王貴女の3年ですの。あんなモノと同級生だなんて恥ずかしい限りですわ。アレは王貴女の恥ですの』
『アレでよく生きられるものだな…』
相当に体がきつい事だろうと思ったザートがそう口にすれば…
『まぁ!ほほほ、それはあんまり可哀想ですわ。あんな奇妙な格好もきっと何か訳があるのだと思いますもの…でも、そうですわね…私ならあんな珍妙なヘアスタイルをするぐらいなら死んだ方がマシですわ、ほほほ、ほほほほ!』
(――全く興味が無い故スルーしていたが確かそんな事を言っていたな…私がラマンジェ嬢の容姿を揶揄したとでも勘違いしたのだろうが…どうでもいいから気付いていなかったが吐き気がする女だな…)
アンニュイさも無表情も消え失せて険しい顔をするザート。
ルミエが兄を諫める様に言う。
「お兄様、『醜い女』って…公爵令嬢はティスリー…ううん、世界で1番美しいと言われているのよ?」
(…間違いないな…やはりヤンディ嬢の事を話している様だ…)
「心の醜さが顔に出ています。世界で1番醜い女です」
(リー…何と素晴らしい眼力だ…思い出してみれば確かにそうだ…今頃気付くなど)「お兄様ったら…あら、皆さん顔色が悪いようですけど‥」
「あ、いや、何でもない」
そう言いながらも反省と怒りでかなり顔色が悪いザート。
3人組も同様で…特に…
「腰が抜けてしまって元に戻らないのですね?」
ルミエにそう声を掛けられたブレ。
「はい…よく知りもせず他人の噂話を鵜呑みにしてラマンジェ嬢に失礼な事を言ってしまった罰です…確かに前髪は変ですが…それにさっきまでは様子も変でしたが…今のラマンジェ嬢は軽やかで気持ちの良い感じの良い令嬢です…それなのに私は…」
「あら、ふふふ、ありがとうございます。お礼におまじないを。はい!」
「‥ッ!?」
ルミエが倒れているブレの肩辺りをポンと叩いた瞬間、ザートが目を瞠る。
「ははは、ありがとうござい‥え!?」
ブレは(お茶目で可愛らしい御方だ)と思いながら礼を言っている途中でギョッとする。そして――
「え‥な‥これは‥!?」
と言いながらスッと立ち上がる。
「ブレ…治ったのか?」
ザートが信じられないという表情で尋ねる。
「はい…凄いおまじないです…一瞬で治った…と言うか…」
「嘘みたいに体が軽いのだろう?」
リーが頷きながら訊けば…
「!‥はい!その通りです!今まで生きて来た中で一番軽いんです!」
もう口を利いてもらえないと思っていたリーに訊かれ興奮気味に答えるブレ。
もちろん、自分の体に起きた不思議が興奮の一番の理由だが。
「姫のおまじないは凄いんだ。俺も凄く助かっているんだよ。危険な魔獣討伐の仕事を続けられるのも姫のおまじないのお陰で間違いないんだ」
「おまじない…」(ではない…何だ今視えたものは…)
ザートの視線が自然とルミエを探せばルミエは窓から外を見ていて…
振り返って静かに告げる。
「嵐が来ます」
煌めく銀髪にティスリー王族の血を引く瑠璃色の瞳を持つ彼女は唯一人の王太子妃候補。
ティスリー王立貴族女学園卒業間近の18才。
優秀で万人に平等に優しく人望も厚い彼女は類まれなる美しさと将来国母となる資質を兼ね備え…
王国イチの令嬢と名高い――
(さすがに盛り過ぎ――と言うか実際は他の令嬢と何ら変わりない平凡且つ退屈な令嬢。公爵令嬢としては普通に品行方正で落ち着いた令嬢だと思っていたが――体が不自由な状態のラマンジェ嬢を集団で害そうとしただと?…そう言えばあの時…)
ザートは1週間前の、馬車の中からルミエを見掛けた時のことを思い出す。
『何だアレは…酷いものだな』
青果マルシェをノロノロ歩くルミエを白く濃い靄の様なものが包んでいるのを見て思わず剣呑な声を出したザート。
馬車に同乗していたヤンディがそれに対して
『アレは貧乏伯爵令嬢ルミエですわ。何と私と同じ王貴女の3年ですの。あんなモノと同級生だなんて恥ずかしい限りですわ。アレは王貴女の恥ですの』
『アレでよく生きられるものだな…』
相当に体がきつい事だろうと思ったザートがそう口にすれば…
『まぁ!ほほほ、それはあんまり可哀想ですわ。あんな奇妙な格好もきっと何か訳があるのだと思いますもの…でも、そうですわね…私ならあんな珍妙なヘアスタイルをするぐらいなら死んだ方がマシですわ、ほほほ、ほほほほ!』
(――全く興味が無い故スルーしていたが確かそんな事を言っていたな…私がラマンジェ嬢の容姿を揶揄したとでも勘違いしたのだろうが…どうでもいいから気付いていなかったが吐き気がする女だな…)
アンニュイさも無表情も消え失せて険しい顔をするザート。
ルミエが兄を諫める様に言う。
「お兄様、『醜い女』って…公爵令嬢はティスリー…ううん、世界で1番美しいと言われているのよ?」
(…間違いないな…やはりヤンディ嬢の事を話している様だ…)
「心の醜さが顔に出ています。世界で1番醜い女です」
(リー…何と素晴らしい眼力だ…思い出してみれば確かにそうだ…今頃気付くなど)「お兄様ったら…あら、皆さん顔色が悪いようですけど‥」
「あ、いや、何でもない」
そう言いながらも反省と怒りでかなり顔色が悪いザート。
3人組も同様で…特に…
「腰が抜けてしまって元に戻らないのですね?」
ルミエにそう声を掛けられたブレ。
「はい…よく知りもせず他人の噂話を鵜呑みにしてラマンジェ嬢に失礼な事を言ってしまった罰です…確かに前髪は変ですが…それにさっきまでは様子も変でしたが…今のラマンジェ嬢は軽やかで気持ちの良い感じの良い令嬢です…それなのに私は…」
「あら、ふふふ、ありがとうございます。お礼におまじないを。はい!」
「‥ッ!?」
ルミエが倒れているブレの肩辺りをポンと叩いた瞬間、ザートが目を瞠る。
「ははは、ありがとうござい‥え!?」
ブレは(お茶目で可愛らしい御方だ)と思いながら礼を言っている途中でギョッとする。そして――
「え‥な‥これは‥!?」
と言いながらスッと立ち上がる。
「ブレ…治ったのか?」
ザートが信じられないという表情で尋ねる。
「はい…凄いおまじないです…一瞬で治った…と言うか…」
「嘘みたいに体が軽いのだろう?」
リーが頷きながら訊けば…
「!‥はい!その通りです!今まで生きて来た中で一番軽いんです!」
もう口を利いてもらえないと思っていたリーに訊かれ興奮気味に答えるブレ。
もちろん、自分の体に起きた不思議が興奮の一番の理由だが。
「姫のおまじないは凄いんだ。俺も凄く助かっているんだよ。危険な魔獣討伐の仕事を続けられるのも姫のおまじないのお陰で間違いないんだ」
「おまじない…」(ではない…何だ今視えたものは…)
ザートの視線が自然とルミエを探せばルミエは窓から外を見ていて…
振り返って静かに告げる。
「嵐が来ます」
12
あなたにおすすめの小説
【完結】回復魔法だけでも幸せになれますか?
笹乃笹世
恋愛
おケツに強い衝撃を受けて蘇った前世の記憶。
日本人だったことを思い出したワタクシは、侯爵令嬢のイルメラ・ベラルディと申します。
一応、侯爵令嬢ではあるのですが……婚約破棄され、傷物腫れ物の扱いで、静養という名目で田舎へとドナドナされて来た、ギリギリかろうじての侯爵家のご令嬢でございます……
しかし、そこで出会ったイケメン領主、エドアルド様に「例え力が弱くても構わない! 月50G支払おう!!」とまで言われたので、たった一つ使える回復魔法で、エドアルド様の疲労や騎士様方の怪我ーーそして頭皮も守ってみせましょう!
頑張りますのでお給金、よろしくお願いいたします!!
ーーこれは、回復魔法しか使えない地味顔根暗の傷物侯爵令嬢がささやかな幸せを掴むまでのお話である。
義妹がやらかして申し訳ありません!
荒瀬ヤヒロ
恋愛
公爵令息エリオットはある日、男爵家の義姉妹の会話を耳にする。
何かを企んでいるらしい義妹。義妹をたしなめる義姉。
何をやらかすつもりか知らないが、泳がせてみて楽しもうと考えるが、男爵家の義妹は誰も予想できなかった行動に出て―――
義妹の脅迫!義姉の土下座!そして冴え渡るタックル!
果たしてエリオットは王太子とその婚約者、そして義妹を諫めようとする男爵令嬢を守ることができるのか?
【完結】花に祈る少女
まりぃべる
恋愛
花祈り。それは、ある特別な血筋の者が、(異国ではいわゆる花言葉と言われる)想いに適した花を持って祈ると、その花の力を増幅させる事が出来ると言われている。
そんな花祈りが出来る、ウプサラ国の、ある花祈りの幼い頃から、結婚するまでのお話。
☆現実世界にも似たような名前、地域、単語、言葉などがありますが関係がありません。
☆花言葉が書かれていますが、調べた資料によって若干違っていました。なので、少し表現を変えてあるものもあります。
また、花束が出てきますが、その花は現実世界で使わない・合わないものもあるかもしれません。
違うと思われた場合は、現実世界とは違うまりぃべるの世界と思ってお楽しみ下さい。
☆まりぃべるの世界観です。ちょっと変わった、一般的ではないまりぃべるの世界観を楽しんでいただけると幸いです。
その為、設定や世界観が緩い、変わっているとは思いますが、まったりと楽しんでいただける事を願っています。
☆話は完結出来ていますので、随時更新していきます。全41話です。
★エールを送って下さった方、ありがとうございます!!お礼が言えないのでこちらにて失礼します、とても嬉しいです。
契約結婚の相手が優しすぎて困ります
みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。
オネェ系公爵子息はたからものを見つけた
有川カナデ
恋愛
レオンツィオ・アルバーニは可愛いものと美しいものを愛する公爵子息である。ある日仲の良い令嬢たちから、第三王子とその婚約者の話を聞く。瓶底眼鏡にぎちぎちに固く結ばれた三編み、めいっぱい地味な公爵令嬢ニナ・ミネルヴィーノ。分厚い眼鏡の奥を見たレオンツィオは、全力のお節介を開始する。
いつも通りのご都合主義。ゆるゆる楽しんでいただければと思います。
姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚
mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。
王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。
数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ!
自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。
侍女は婚約が内定している俺様属性の男と縁を切りたい。
彩柚月
恋愛
リリアは侯爵令嬢。オスカーとは、婚約予定。あくまでも予定で、まだ結んでいません。オスカーは何故かリリアにだけ、威圧的な態度を取るらしい。嫌で仕方がないので、オスカーの兄とプレ婚約期のやり直し。
今が幸せなので、あなたのことは助けてあげられません。
※ご都合主義満載
※細かい部分はサラッと流してください。
婚約者の命令により魔法で醜くなっていた私は、婚約破棄を言い渡されたので魔法を解きました
天宮有
恋愛
「貴様のような醜い者とは婚約を破棄する!」
婚約者バハムスにそんなことを言われて、侯爵令嬢の私ルーミエは唖然としていた。
婚約が決まった際に、バハムスは「お前の見た目は弱々しい。なんとかしろ」と私に言っていた。
私は独自に作成した魔法により太ることで解決したのに、その後バハムスは婚約破棄を言い渡してくる。
もう太る魔法を使い続ける必要はないと考えた私は――魔法を解くことにしていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる