えっ私人間だったんです?

ハートリオ

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01 王女はほくそ笑む

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「あ~~もう!
もう飽きちゃったわ!
ずっと山山牛牛馬牛!
タ~イ~ク~ツ~!
もう帝国領には入っ‥
まだなの!?
帝都への道中がこんなに退屈だなんてッ!」

のどかな酪農地帯を走る馬車の隊列の先頭。
殊に豪奢な馬車の中でぼやくのはアルデア・カーヌス。

「まぁね、私は尊い『魔力持ち』だからね…
皇太子が私に会いたがるのも分かるけどォ」

魔力持ち。
それはこの世界では特別な存在。
魔力持ちは帝国皇家の血筋と幾つかの属国王家の血筋のみ。

アルデアは属国の中でも特に強い魔力持ちを輩出してきた歴史あるカーヌス王国の王女である。
アルデアはほくそ笑む。

(『魔獣族との戦いに備える為の会議』ですって?
嘘ウソ!
魔獣討伐隊長である皇太子は17才未婚婚約者無し!
――となれば当然お妃選びでしょうよ?)

帝国から届いた会議への参加依頼をそう断じた彼女。
皇太子妃に相応しいのは私よ!
と鼻息荒く一路帝都を目指している。

「大丈夫ですわ!
アルデア様は世界一お美しいのですもの」
「ええそうですわ!
絶対にアルデア様が選ばれますわ!」

数分ごとに手鏡を覗き込むアルデアに
侍女達がおべっかを言う。

(世界一美しいと言われたのはアルデア様のお母様…
王妃様だけどね…
アルデア様はまぁ…
普通?)

それが侍女達の本音である事はアルデアは勿論知らない。

「私が世界一の美女だってことぐらい分かっているわよ…
もう耳にタコが出来ちゃったわ。
けどね、お妃に選ばれるポイントはソコじゃないの」
「「‥まぁ?」」
「魔力よ」
「「‥まぁ!」」

(それってどうなの)
(あのへ理屈、通用すると思う?)

と、戸惑い気味に顔を見合わせる侍女達にアルデアは自信たっぷりに言い放つ。

「フフッ、大丈夫よ!
『私の【魔力】』は他国の王女達になんか負けないわ!」

アルデアがライバル視する『他国の王女達』とは――

属国の中で特に強い魔力を持つのは
アルデアのカーヌス王家
スパーディクス王家
アルブム王家
アートルム王家
以上の4家で。
今現在各家で1番の魔力持ちは妙齢の独身王女達。
(ちなみにアルデアの20才が1番年上)
故に『魔獣族との戦いに備える為の会議』に呼ばれているのは4属国の王女達となり。
アルデアが会議は口実で皇太子のお妃選びに違いないと思い込むのも仕方ないのかもしれない…

だが実際、今回の招集は紛れもなく対魔獣族の為である。

魔力持ちの最重要な役割は魔獣族との戦いである。
魔獣族は強い魔力を持つ残忍な獣達で。
長きにわたって人間族を脅かしている。
人間族は北方に棲む魔獣族との間に高く長く堅牢な壁を築き境界線としている。

魔獣族は度々境界線を越え侵入しようと試みて来たが。
最近その動きが活発化している。

なので魔獣討伐隊長帝国皇太子は各属国を代表する強い魔力持ちに招集を掛けた。
魔獣族の侵略を力を合わせて防ぐべく会議をする為に。

アルデアは人類が大変な危機に直面している事などまるで頭に無い。
鼻息荒く言い放つ。

「桁外れの魔力を持つという皇太子は別だけど…
私は皇太子に次ぐ魔力持ち…
間違いないわ!」

そして窓の外を見る。
アルデアが乗る馬車の遥か後方にドレスを詰め込んだ荷馬車がついて来る。
その荷馬車の中には…
頭からスッポリと灰色のベールを被った者が居る。

アルデアが言う『私の【魔力】』である。
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