えっ私人間だったんです?

ハートリオ

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21 プロポーズ

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「私がカーヌス王家を厳しく罰するつもりだったが…」

そう声を掛けて来るファルコにルスキニアは微笑みを向ける。

「ッ!」

その尊さに息を呑むファルコ。
耳まで赤く染まる。

「私は私とカーヌスが無関係であることを確認できればそれで良かったので。
カーヌス国王夫妻が私をカーヌス国民でないとはっきり仰られたので満足です」
「君は完全にフリーという訳だな。
‥そうでなくとも遠慮などしないが」

そう言ってファルコはルスキニアの前に跪き右手を差し出す。

「‥皇太子殿下ッ‥」
「私の気持ちは既に伝えているが改めて伝えよう。
君を愛している。
君の美しい魂に触れた私は永遠に君の虜だ。
これからの人生を君と共に進んで行きたい。
け結婚してほしい」

あ、噛んだ
兄上が噛んだ
皇太子殿下が噛むとは

「お前達煩いぞ!」

ニヤニヤしながらさざめくギャラリーに思わず叫ぶファルコ。
その手をルスキニアが両手で包む。

「ッ‥ルスキニア姫」
「‥まだお礼を言ってませんでしたね。
素敵な名前をありがとうございます」
「え‥ああ。
美しい声の君にピッタリだと思って」
「嬉しいです。
その前に名前を聞いて下さったのも嬉しかった。
名前を聞かれるなんて初めての事でした」
「――理不尽な事だ」
「凄く嬉しかった。
同時に悲しかった。
名前を答えたいのに名前が無い。
あなたに答えられない事が残念で辛くて…
私はあの時初めて名前が無い事を悲しく思ったのです」
「ルスキニア…」
「大きな手‥」

ファルコの右手を包んだルスキニアの両手を更にファルコの左手が包んでいる。

「うん。
君の手は華奢で美しい。
壊してしまわないか不安になる」
「大丈夫です。
あなたの手は温かくて優しいから」

ファルコはキラキラ輝く金色の目を伏せてルスキニアの手に口づけする。
柔らかくて…
熱い。
電流の様なものがルスキニアの体を巡る。
ルスキニアは何とか目眩を堪える。

「あの時…
あなたに名前を答えたいと強く思った時。
あの瞬間私の内に眠っていたものが目覚めて
どんどん大きくなって…
欲を持ちました。
あなたと一緒にいたいと」
「!」

ファルコは顔を上げる。
眩しいほどの瞳で。

「短い間にあなたは私に沢山の感情を感じさせてくれました。
そのどれもが愛から湧いて来るものでした。
私もあなたを愛しています。
結婚の申し込み、とても嬉しいです。
もし可能であればお受けしたいです」

ファルコはバッと立ち上がりルスキニアを抱きしめる。
目を丸くするルスキニア。

「ありがとう!
勿論可能だとも!
何か不安でも?」

めちゃめちゃ抱きしめながら聞いて来るファルコに戸惑いながらルスキニアは

「あなたは帝国の皇太子殿下で私は存在を認められてさえいな‥ひゃっ‥」

唇が触れ合ってしまいそうなほど顔を近づけられて絶句するルスキニア。

「それ以上下らない事を言うならその可愛い唇を塞いでしまうよ?」
「――――――‥」

完全停止してしまったルスキニアにファルコは残念そうに少し距離を取る。

「ん、言わないか‥
残念‥」
「え?」
「いや、こほん、
‥君は魔獣殲滅を成し遂げた英雄であり聖女だ。
英雄も聖女も帝国皇帝陛下よりも上位の立場…
つまり君は最上位の存在だ」
「ええ!?いえッ!
魔獣殲滅は皇太子殿下始め皆様の命懸けの働きで‥」
「君がいなければ成しえなかった。
今頃人間界は魔獣族に蹂躙されていただろう」
「その通りだ」

まだ何か言おうとするルスキニアを遮るように威厳のある声が響く。

「父上‥皇帝陛下!」

皇帝陛下のお出ましに皆が臣下の礼を取る。
陛下の後ろには3人の妃達が付いて来ている。
微笑みを湛えた美しく華やかな美妃達…
優しく誇らしげな視線をそれぞれ3皇子の1人に向けている。
ルスキニアはハッとする。
妃達は3皇子の母達で
ファルコの母である正妃の姿は無い。

「皇太子殿下!私‥」
「ファルコと呼んでほしい」
「ファルコ様、私、治せます!」
「…ん?」

魔獣から受けた傷は既に完璧に治してもらったが?
とキョトンとするファルコ。

(~~~~~ッ、
可愛いです!)

威厳溢れるイケメン皇太子のキョトン顔に内心悶えるルスキニアだが堪えて。

「魔力火傷です!
皇后陛下の‥
私、治せると思います!」
「「‥本当に!?」」

ファルコと皇帝が同時に叫ぶ。
必死な顔の2人にルスキニアは温かい気持ちになる。

(皇后陛下への思いが伝わってくる…
これが家族の愛…
とても素敵…)

「ええ!
やってみます!」

殺伐としたカーヌス王家とは比べ物にならないほど温かい家族愛に触れたルスキニアは感動のままフワッと光り――

「「‥え?」」

皇太子と皇帝が世にも珍しいダブルキョトン顔を晒す。
無理も無い。

ルスキニアが消えてしまったのだから。
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