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22 自業自得
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カーヌス王、王妃ラーラ、王女アルデア、ラーラの愛人ウングラ。
4人はカーヌス王宮に揃って転移し――
翌日。
カーヌス王宮は静まり返っていた――
そこへ1台の馬車が滑るように入って行く。
馬車から降りて来たのはアクイラ・カーヌス。
カーヌス北方の寂れた地にポツンと立つ塔に16年もの間幽閉され続けた不遇の王弟である。
「アクイラ殿下!
お久しぶりでございます!」
「え?
…ああ。久しいな。
…で?
私が呼ばれるなど…
兄上に何かあったのか?」
長い幽閉生活のせいか声に張りは無いが揺るぎない威厳は消えていない。
王の筆頭側近は言葉を濁す。
「はぁ、あの…
陛下は直接アクイラ殿下にお話になると…
私には何も仰られませんし…
もう、何が何やらッ」
青白い顔に赤く腫れあがった目…
アクイラは最初彼が誰か気付かなかった。
面変わりして誰か判別出来ないのは自分の方だろうと思っていたのだが…
玉座の間。
玉座に腰掛ける兄もまた別人の様に険しい顔をしている。
「お呼びとの事で参りました」
自分を幽閉したのは兄。
わざとらしい挨拶は不要だろうと言葉少なに言い、王の言葉を待つ。
王は無言で玉座から立ち上がり
アクイラの前まで歩いて来て立ち止まる。
(‥何だ?
私を処刑する積りか?
剣は持っていない様だが…)
そう言えば王を思い通りに支配していた王妃の姿が無い…
そんな風に訝しく視線を動かすアクイラに王が言う。
「チェンジだ」
「…は?」
「お前が正しかった。
16年前、お前だけがあの子をちゃんと王女として扱えと進言した。
私は愚かにもラーラの言葉を信じてあの子を化物の姿をした【魔力】だとして…
口にするのも憚られるほどの酷い扱いをしてしまった。
そしてお前に北の塔での幽閉を言い渡した…
愚かだったが…
お前を殺せと何度ラーラに唆されてもそれだけはしなかった。
お陰でカーヌスは存続出来るかもしれない」
アクイラは黙っている。
淡々と話す兄の言いたい事が分からない。
「お前もあの子に会ったら驚くぞ‥
16才に成長したあの子は母上に…
しかも母上の肖像画の中でも1番美しい母上によく似て――
更に珊瑚色の髪に珊瑚朱色の瞳をしているのだ…
まるで女神‥」
「『あの子』とは第二王女の事ですね?
良かった…ちゃんと生きているのですね?
王妃が『煩いから』と…灰色の巾着袋に入れられた生まれて間もない第二王女を侍女に命じて床に叩きつけさせた時は心臓が止まる思いがしましたが‥」
「‥ッ、そうだ、
ラーラは狂った悪魔!
復讐心なら私にぶつければいいものを!」
「兄上が妃をそんな風に言うとは――
一体何があったのです?
妃と第一王女はどこです?」
跪き首を垂れていたアクイラだがもう遠慮せず立ち上がって辺りを見回す。
王宮に着いてから王の筆頭側近と騎士数名しか見ていない。
これは異常事態だ!
「違う。
あの子が第一王女なんだ…
アルデアはラーラの愛人の子だった…」
「なッ!?
――兄上、まさかアルデアを殺‥」
「逃がしてやった。
父親――ラーラの愛人と共にな」
「本当ですか?
あれほど寵愛して来た妃の愛人を逃がすなど信じられませんが‥」
「あの男…ウングラとかいったな…
あの男はラーラに絶望を叩きつけてくれたからな」
昨夕、カーヌス宮殿に転移した直後。
それまで無言だったウングラがしがみついて来るラーラを突き飛ばした。
「ウングラッ!?」
「最低だ!俺はお前のせいで死刑になるんだ!
妻は先立ち娘も外国に嫁いでいるから心配事は無いけどな」
「え‥妻!?娘!?
何言ってんの?
あなただって私一筋のはず‥」
「ふざけんな!
俺はお前の事なんて爪の先程も想っちゃいない!」
「だ‥だって私達は婚約者同士でッ」
「お前の我儘で無理矢理婚約させられたんだ!
俺には幼馴染の婚約者がいたのにお前が横恋慕して無理矢理婚約者となった!
お前はさっき王を罵っていたが!
自分も全く同じ事をしたんだ!」
「そ‥だって嬉しかったでしょう?
世界一美しい私と婚約出来て最高‥」
「最低だよ!
俺にとって女は幼馴染の婚約者だけだ!
顔なんて皮1枚の事でこの気持ちが揺らぐかよ!
大体お前は化粧が上手いだけで言うほど美人じゃないだろうが!」
「ええ!?嘘ッ‥」
「俺は平民だから貴族の命令に背くことが出来ず…
彼女と夜逃げしようと相談していたら王がお前を妃にしてくれた!
俺と彼女は大喜びで婚約者に戻った!
だがお前は俺を騙し媚薬を使って関係を持ち妊娠して――
王の子としてそこの娘を産んだ!」
指さされたアルデアは母に半目を向ける。
(お母様…媚薬を使う女をメチャメチャ馬鹿にしてたよね?
『クスリを使わなきゃ男をその気にさせられないなんて女として下の下ね』
とか言ってたよね?)
「その後は脅迫だ!
『あの子の本当の父親があなただと陛下にバレたら…
あなただけじゃない、一族郎党全員が拷問の上断首刑よ…
バラされたくなかったら…会いに来て。
私を抱いて慰めて』
そう言って俺を縛り続けた!
はッ、せいせいすらあ!
もう二度と憎いお前の相手をしなくていいんだからな!」
「うそよ!うそうッ‥
うぇッゲホゲホッ‥
うえぇ‥」
床に突っ伏す王妃を無視し王はウングラにアルデアを連れて出て行けと告げる。
アルデアは抵抗しようとしたが実父と行かないなら王家を謀った罪で死刑だと告げれば大人しく出て行った――
「そもそも私はラーラを愛していなかった…
父上が母上にするのを真似ていただけ…
心は無かった」
「‥その妃はどうしたのです?」
「その辺に転がっているだろ…
そんな事より。
お前と私の立場をチェンジする。
お前が玉座に。
私は北の塔に」
「‥なッ!?」
「私は帝国を怒らせた。
だが私が退いてお前が王となればカーヌスは潰されないかもしれない。
お前は唯一あの子を守ろうとして幽閉されたあの子の叔父だ。
その事実が一縷の望みだ。
これまですまなかった。
今後の私の処遇は委ねる。
帝国に誠意を示すために処刑してもよい。
頼んだぞ」
そう言って。
ドア付近に転がっていたラーラの頭部に一瞥もくれず
カーヌス王は玉座の間を出て行った――
数ヶ月後。
ある女が処刑された。
父親の許に身を寄せていた女。
そこへ異母妹が夫と生まれて数か月の赤ちゃんと3人で訪ねて来た。
夫は腕のいい翼竜乗り。
早く孫を見せたいと空を飛んで来たのだ。
久々の再会に盛り上がる側で。
ベッドで泣き出した赤ちゃんを女は床に叩きつけた――
女は処刑される瞬間まで喚き続けた。
『赤ん坊が煩いから床に叩きつけただけなのに何が悪いのよ!?』
女は最後まで自分の何が悪いのか分からなかった。
女の1番の不幸はアルデアでい続けた事だろう。
4人はカーヌス王宮に揃って転移し――
翌日。
カーヌス王宮は静まり返っていた――
そこへ1台の馬車が滑るように入って行く。
馬車から降りて来たのはアクイラ・カーヌス。
カーヌス北方の寂れた地にポツンと立つ塔に16年もの間幽閉され続けた不遇の王弟である。
「アクイラ殿下!
お久しぶりでございます!」
「え?
…ああ。久しいな。
…で?
私が呼ばれるなど…
兄上に何かあったのか?」
長い幽閉生活のせいか声に張りは無いが揺るぎない威厳は消えていない。
王の筆頭側近は言葉を濁す。
「はぁ、あの…
陛下は直接アクイラ殿下にお話になると…
私には何も仰られませんし…
もう、何が何やらッ」
青白い顔に赤く腫れあがった目…
アクイラは最初彼が誰か気付かなかった。
面変わりして誰か判別出来ないのは自分の方だろうと思っていたのだが…
玉座の間。
玉座に腰掛ける兄もまた別人の様に険しい顔をしている。
「お呼びとの事で参りました」
自分を幽閉したのは兄。
わざとらしい挨拶は不要だろうと言葉少なに言い、王の言葉を待つ。
王は無言で玉座から立ち上がり
アクイラの前まで歩いて来て立ち止まる。
(‥何だ?
私を処刑する積りか?
剣は持っていない様だが…)
そう言えば王を思い通りに支配していた王妃の姿が無い…
そんな風に訝しく視線を動かすアクイラに王が言う。
「チェンジだ」
「…は?」
「お前が正しかった。
16年前、お前だけがあの子をちゃんと王女として扱えと進言した。
私は愚かにもラーラの言葉を信じてあの子を化物の姿をした【魔力】だとして…
口にするのも憚られるほどの酷い扱いをしてしまった。
そしてお前に北の塔での幽閉を言い渡した…
愚かだったが…
お前を殺せと何度ラーラに唆されてもそれだけはしなかった。
お陰でカーヌスは存続出来るかもしれない」
アクイラは黙っている。
淡々と話す兄の言いたい事が分からない。
「お前もあの子に会ったら驚くぞ‥
16才に成長したあの子は母上に…
しかも母上の肖像画の中でも1番美しい母上によく似て――
更に珊瑚色の髪に珊瑚朱色の瞳をしているのだ…
まるで女神‥」
「『あの子』とは第二王女の事ですね?
良かった…ちゃんと生きているのですね?
王妃が『煩いから』と…灰色の巾着袋に入れられた生まれて間もない第二王女を侍女に命じて床に叩きつけさせた時は心臓が止まる思いがしましたが‥」
「‥ッ、そうだ、
ラーラは狂った悪魔!
復讐心なら私にぶつければいいものを!」
「兄上が妃をそんな風に言うとは――
一体何があったのです?
妃と第一王女はどこです?」
跪き首を垂れていたアクイラだがもう遠慮せず立ち上がって辺りを見回す。
王宮に着いてから王の筆頭側近と騎士数名しか見ていない。
これは異常事態だ!
「違う。
あの子が第一王女なんだ…
アルデアはラーラの愛人の子だった…」
「なッ!?
――兄上、まさかアルデアを殺‥」
「逃がしてやった。
父親――ラーラの愛人と共にな」
「本当ですか?
あれほど寵愛して来た妃の愛人を逃がすなど信じられませんが‥」
「あの男…ウングラとかいったな…
あの男はラーラに絶望を叩きつけてくれたからな」
昨夕、カーヌス宮殿に転移した直後。
それまで無言だったウングラがしがみついて来るラーラを突き飛ばした。
「ウングラッ!?」
「最低だ!俺はお前のせいで死刑になるんだ!
妻は先立ち娘も外国に嫁いでいるから心配事は無いけどな」
「え‥妻!?娘!?
何言ってんの?
あなただって私一筋のはず‥」
「ふざけんな!
俺はお前の事なんて爪の先程も想っちゃいない!」
「だ‥だって私達は婚約者同士でッ」
「お前の我儘で無理矢理婚約させられたんだ!
俺には幼馴染の婚約者がいたのにお前が横恋慕して無理矢理婚約者となった!
お前はさっき王を罵っていたが!
自分も全く同じ事をしたんだ!」
「そ‥だって嬉しかったでしょう?
世界一美しい私と婚約出来て最高‥」
「最低だよ!
俺にとって女は幼馴染の婚約者だけだ!
顔なんて皮1枚の事でこの気持ちが揺らぐかよ!
大体お前は化粧が上手いだけで言うほど美人じゃないだろうが!」
「ええ!?嘘ッ‥」
「俺は平民だから貴族の命令に背くことが出来ず…
彼女と夜逃げしようと相談していたら王がお前を妃にしてくれた!
俺と彼女は大喜びで婚約者に戻った!
だがお前は俺を騙し媚薬を使って関係を持ち妊娠して――
王の子としてそこの娘を産んだ!」
指さされたアルデアは母に半目を向ける。
(お母様…媚薬を使う女をメチャメチャ馬鹿にしてたよね?
『クスリを使わなきゃ男をその気にさせられないなんて女として下の下ね』
とか言ってたよね?)
「その後は脅迫だ!
『あの子の本当の父親があなただと陛下にバレたら…
あなただけじゃない、一族郎党全員が拷問の上断首刑よ…
バラされたくなかったら…会いに来て。
私を抱いて慰めて』
そう言って俺を縛り続けた!
はッ、せいせいすらあ!
もう二度と憎いお前の相手をしなくていいんだからな!」
「うそよ!うそうッ‥
うぇッゲホゲホッ‥
うえぇ‥」
床に突っ伏す王妃を無視し王はウングラにアルデアを連れて出て行けと告げる。
アルデアは抵抗しようとしたが実父と行かないなら王家を謀った罪で死刑だと告げれば大人しく出て行った――
「そもそも私はラーラを愛していなかった…
父上が母上にするのを真似ていただけ…
心は無かった」
「‥その妃はどうしたのです?」
「その辺に転がっているだろ…
そんな事より。
お前と私の立場をチェンジする。
お前が玉座に。
私は北の塔に」
「‥なッ!?」
「私は帝国を怒らせた。
だが私が退いてお前が王となればカーヌスは潰されないかもしれない。
お前は唯一あの子を守ろうとして幽閉されたあの子の叔父だ。
その事実が一縷の望みだ。
これまですまなかった。
今後の私の処遇は委ねる。
帝国に誠意を示すために処刑してもよい。
頼んだぞ」
そう言って。
ドア付近に転がっていたラーラの頭部に一瞥もくれず
カーヌス王は玉座の間を出て行った――
数ヶ月後。
ある女が処刑された。
父親の許に身を寄せていた女。
そこへ異母妹が夫と生まれて数か月の赤ちゃんと3人で訪ねて来た。
夫は腕のいい翼竜乗り。
早く孫を見せたいと空を飛んで来たのだ。
久々の再会に盛り上がる側で。
ベッドで泣き出した赤ちゃんを女は床に叩きつけた――
女は処刑される瞬間まで喚き続けた。
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女は最後まで自分の何が悪いのか分からなかった。
女の1番の不幸はアルデアでい続けた事だろう。
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