会いたいとき、ここにいるよ

水月美都(Mizuki_mitu)

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 僕と姉の愛はある日突然終わりを迎えた。
 あの事件の後、彼女は少女となり後に兄となった。僕は〈ただ〉の弟と成り下がったのだ。
 そして高校も敢えて僕と違う学校を選んで受験をした。
 わざと偏差値が低い自由な校風の学校へ入学を決めた涼は、以前から興味を持ってた音楽に傾倒していった。
 誰よりも花を愛してた僕の愛しい人は、もう何処にも居ない。


 ◇◇◇


「お祖母様、涼は暫く稽古を休みにして欲しいと言ってました。学校の行事があるそうで」
 祖母は大仰に溜息をつき、首を横に振り呟く様に言った。
「やる気の無い者に教える事は何も無いよ」
 そうは言っても涼には期待して居たのだろう。
 子供の頃は大きな人だと思っていた祖母の身体が小さく弱々しく見えた。

 僕達の家は華道の家元で、祖母が家長を務めている。父は全く家業には興味が無い人で、大学に入ったタイミングで家を出ていた。
 涼の母と同棲していた父は別れると実家に戻って僕の母と結婚をする。
 でも既に涼の母は妊娠をしてて、シングルマザーで彼女を産んだんだ。

 どういう経緯で涼を引き取ったのかは分からないが、実の母から虐待を受けていたのは子供にも分かった。
 この家に来てからも幸せとは言い難かったのに。

『メンバー達とご飯食べて来るから夕飯は要らない。よろしく!』
 涼からラインが来た。最近は一緒に食事さえ出来なくなっている。
 楽しそうにしてる涼を見て諦めようと思った事もあった。でも、そんなに簡単に気持ちを無くす事は出来なくて。

 食欲が湧かなくて皆が居なくなってから、冷蔵庫を覗くと涼が好きなプリンがあった。
 僕が昨日コンビニに寄った時に買ったやつだ。
 2つある内のひとつを取りプラスチックのスプーンでひと匙口に入れる。
「甘い……」
 本当は甘い物が苦手なんだけどな。一緒に食べたかったな。

 気がつくとプリンはしょっぱい味になってて、僕は泣きながら不味い、まずいと言いながら食べていた。


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