人魚の王子さま

水月美都(Mizuki_mitu)

文字の大きさ
7 / 20
海編

しおりを挟む

 目の前にいる魔女ならぬ魔法使いは、僕に問いかける。
「君の願いは一体何かな?」
 てっきりお年よりの、怖そうなお婆さんなのだと思っていた僕は、まだ若い男の人だと分かり、幾分ホッとする。
 その人は、ワカメの様に波打つ腰までの黒髪に、覗き込む瞳は蛸の墨の色だ。

「お願いです! 僕が助けた人間の女の子が死んでしまいます」
 魔法使いはニッコリ笑い、僕の話しを聞いた後に言った。

「ふうん……分かったよ。それで? 君は何を、私にくれるのかな?」
 そう言われて何も言えなくなった。
 僕に、差し出す物は何も無い。

「僕には、差し出す物は何も無いのです。でも、貴方の云う事は何でも聞きます。ですから……」
 みなまで聴かずに、魔法使いは満足そうな笑みを浮かべて話す。

「一応、タダでは願いを聞いてあげられ無いのだけど。君は特別に願いを叶えてあげよう」
 ある試練を乗り越えて、彼女のハートを手に入れる事。

「試練?」
「そう試練だよ。それは、人間になるには避けて通れない。たとえそれが、私でもね」
 試練とは、僕とセイヤが人間になるためのペナルティだと云う。

「そして、これが一番重要なんだが……」
 もし、美海のハートを手に入れなければ、僕は海の泡になるという。

「お願いします」

 岸に向かい僕たちは泳いで行く。何故か、魔法使いも一緒に。
 そして、魔法使いから渡された、青く光る薬を飲んだ。
 苦しい――! 息が出来なくなり胸を掻きむしる。
 だんだん意識が遠のく中で、美海の、昔出逢った頃の美海が、微笑んでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一条さん結婚したんですか⁉︎

あさとよる
恋愛
みんなの憧れハイスペックエリートサラリーマン『一条 美郷(※超イケメン)』が、結婚してしまった⁉︎ 嫁ラブの旦那様と毒舌地味嫁(花ちゃん)....とっ!その他大勢でお送りしますっ♡ ((残念なイケメンの一途過ぎる溺愛♡))のはじまりはじまり〜 ⭐︎本編は完結しております⭐︎ ⭐︎番外編更新中⭐︎

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あなたの片想いを聞いてしまった夜

柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」 公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。 政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。 しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。 「好きな人がいる。……片想いなんだ」 名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

25番目の花嫁 ~妹の身代わりで嫁いだら、冷徹公爵が私を溺愛し始めました~

朝日みらい
恋愛
王都の春。 貴族令嬢リリアーナ・エインズワースは、第一王子ライオネル殿下との婚約を一方的に破棄された。 涙を見せないことが、彼女に残された唯一の誇りだった。だが運命は、彼女を思いがけない方向へ導く。 「氷の公爵」と呼ばれる孤高の男、ヴァレンティーヌ公爵。 二十四人の花嫁候補を断り続けた彼の元へ、「二十五番目の花嫁」として赴いたリリアーナ。 家の体裁のための結婚――そう割り切っていたはずなのに、氷のような瞳の奥に垣間見えた孤独が、彼女の心に小さな炎を灯してゆく。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...