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作戦会議
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陽子たちの計画はこうだった。いや、正確に言えば計画などそもそもなかった。あんたたち、無計画に突っ込んでなんとかなるとでも思ってたの?
まさしくそう思っていた彼らは肩身を縮めるばかりだった。だって母さんの奪還だってうまくいったし、今度もなんとかなるって思ってたから。
しかしその甘い考えは一蹴されてしまう。
「やつらがどんな手を考えてるか知らないけどね、その兵器とやらはこともあろうに東大にあるっていうんだろ?」
「多分だけど。赤い門が見えたから」
「で、そこにある地震研究所とやらが怪しいと」
「ええ」
「ほんとにそこにそんなヤバイ兵器があるんだとしたら、一介の政治家がおいそれとそこに関われるもんか。国家機密じゃないか。表は国の誇る研究施設、その実は、だなんていかにもなカモフラージュ。裏にはもっと大きななにかがついてる。ルクレティウス一人でどうにかできるもんか」
「ええっ?じゃあまさか、敵は総理大臣?」
勇樹が素っ頓狂な声を上げた。だってこの国でいちばん偉いのは総理大臣だろ?だからみんななりたがるんじゃないか。あの滝沢って人も。
「でも、意味が分からないよ。なんで総理大臣が自分の国を攻撃するの。しかもルクレティウスに協力して?」
異を唱えたのは緋美だった。そう思うのは誰しも同じだった。兵器は自分の国を守るため、ひいては他国を攻撃するためにあるんじゃないか。
「そりゃそうだ、そんなのあり得ない。けれど実際そう言うことが起ころうとしている。誰が首謀者かは今は重要じゃない、とにかく把握しておくべきなのは、相手は強大な存在だってこと」
議論を始めた彼らを制し、亜美は続ける。
「そんな竹刀一本でどうにかできる相手だと思わない。なにか武器を調達しないと」
「武器って。ゲームじゃないんだから、すぐに銃とか刀は買えないよ」
ゲーム好きの勇樹が抗議の声を上げる。あれは架空の世界だから許されてるんだ、だからファンタジーなんだもの。ここではないどこかを旅する疑似体験。とはいえ現実世界で仮に買えたところで、すぐにうまく使いこなせる自信もなかったけれど。
「とにかく、本丸に乗り込むために敵を避けていければいいんだ、なにも倒せとは言わない。殺したらますますこちらが悪者だ。うまく撒くための何かがあればいいんだけど」
フロントガラスから目を離し、うつむきがちに亜美が考えこむ。大変、危ない!
焦った粕川はこう提案した。
「とにかくコンビニに寄ってください、私がなんとかします」
立ち寄ったコンビニで彼女らは盛大に買い物することとなった。朝方、トラックやタクシーのドライバーが主に立ち寄るその静かな店内は、にわかにタイムサービスのスーパーのような賑やかしさだった。
「スプレー類、虫よけ、カッター、ハサミ、ライター、油、キムチ、からし、わさび、縄跳び、荷造り紐、ガムテープ、ゴミ袋、チョコ」
「チョコ?」
言われるままに商品をかごにポイポイと詰め込んでいた勇樹が思わず聞き返す。すでにカゴは5つ目だ、店員が変な目で見ているのが痛いほどに伝わってくる。
「チョコって。先生食べたいだけなんじゃないの?」
「そうだけど、悪い?」
「だって、遠足のお菓子を買いに来たんじゃないんだよ」
たしなめる勇樹だったが、
「腹が減っては戦が出来ぬって言葉知らないの?」
「まずは食べなきゃ人間死ぬんだぞ」
と女性陣がうるさくてしかたがない。
「そりゃあそうだけど」
じゃあ、とお言葉に甘えて勇樹も手当たり次第に食べ物を放り込む。そういえば緊張の連続で忘れていたのだ、空腹を。さらに彼は車内に残った母のことを思いだし、適当におにぎりやらサンドイッチやらをかごに入れた。
母さん、何が好きなんだろ。そういや食事中つまらなさそうにしていた姿しか浮かばない。案外親子でも、知らないことなんてたくさんあるのだ。たとえば亜美が陽子の腕の処置をしようとしたら、「大丈夫、包帯くらいなら自分で巻けます。前に看護師学校行ってたから」と言ったのには驚いた。あの母さんが看護師免許持ってたなんて。
支払いはとりあえず亜美が立て替えてくれたが、粕川はそれにも申し訳ない気持ちでいっぱいだった。いや主に彼女が入れた食料品が割合を占めてはいたけれど。
申し訳なさそうな粕川に、亜美はいいよこれくらい、と笑って流す。懐が深い人なんだなぁ、もといお医者さんってやっぱり儲かるのかなぁという感想を抱きつつ、けれどこの支払は絶対に碓井先生に払ってもらわねば、とも粕川は思っていた。
そうだ、ラーメン代だって立て替えたままだ。絶対に先生をルクレティウスから取り戻さないと。
パンパンの袋を手分けして持ち車に戻れば、陽子の腕周りがすっきりしていた。あの痛々しい腕を吊る三角布もなく、二の腕を包帯で少し巻いただけ。かすり傷だというのは本当だったらしい。
「おかえりなさい。これでわたしも少しは戦える」
「戦うって」
彼女にサンドイッチを渡しながら勇樹はつぶやいた。いくらなんでも片目で、これからの危険に立ち向かえるのだろうか。
「じゃあみんな食べながらでいい、作戦会議だ」
亜美の声で一斉、とりあえずは各々好きなものに手を伸ばした。
粕川が意識を集中する。まずやってくるのは大学の警備員。それもそうだろう、それが彼らの仕事だ。不審者が入ってこないよう、学生らを守るために。だから彼らを傷つけてはいけない。あくまでも気を引いて。前に使ったのと同じ手で炎を起こす。その間に滑り込む。
その先に現れるのはあの黒服。いったいどこから湧いてくるのか。左から二人、右から五人。どうやら行きたい先は右の様だ。妙に警備が厚い。左の二人にスプレーで目潰しして、右の二人は先頭集団の影に隠れてついてきた勇樹が足もと目がけて竹刀を薙ぐ。
一人転んだ。そいつの巻き添えをくらってもう一人。そいつらに陽子さんがすかさず鼻にわさびのチューブ。さらにもう一人に縄跳びを鞭のように振るい腕に巻きつけ引きずり倒す。
残るは二人。不意打ちは通用しない。じりじりと彼らは距離を詰めてくる。一人がナイフを投げてくる。陽子さんの見えない側の視界を狙って。だからもう少し彼女は後ろに下がったほうがいいだろう。やられてなるものかと、緋美が無造作にサラダ油を彼ら目がけて巻き散らかす。その横で、ライターの炎をちらつかせながら笑うその母。油を浴びた二人は恐れをなして逃げていく。
「とりあえず、そこまでは視えました」
「なんだい、アタシが悪魔みたいじゃないか」
最後にして唯一の頼みの綱、〈王の目〉の予知能力をフルに使うしか方法はなかった。とにかく動きを予測して、それに合わせて動く。動きが読まれていれば彼らも成す術がないだろう。しかしネックなのは予知できる範囲が限られることだった。たぶん、10分くらい?
「これ、進みながら予知してくの?現状に対応するのに必死でそれどころじゃない気もするけど」
それでホントに大丈夫なの?ジュースをゴクゴクと呑みながら不安そうに勇樹が言う。
「だからそこはまあ、〈王の盾〉の勇樹君に頑張ってもらえれば」
けれど粕川は気楽なものだった。少なくとも10分先を稼げているのだ。このタイムラグは大きい。この力が前々からあったならば、階段でうっかり転んだりだとか、定期を忘れて家を出たりしなくで済んだのに!
「そんなこと言われても、俺、先生みたいに特殊能力ないんだけど」
「わかんないよ?じつはいつの間にかパワーアップしてたりして」
「そんな都合よく行くもんか。それに、俺は母さんも守らないと」
なにせ〈王の盾〉だ。秘かに思いを寄せている先生と母親を天秤に掛けたくはなかったが、片や怪我人に片やチョコをモリモリ食べている先生だ。この場合、どちらを優先するべきかは火を見るより明らかだった。なにより粕川の実力を病院で嫌と言うほど見せつけられているし、むしろ助けてもらったではないか。
「じゃあアタシらは、理央ちゃんの指示に従うから」
持てる限りの凶器――には見えぬ調味料だのガムテープだのを装備して、穴田親子は立ち上がった。半ば巻き込む形で仲間にしてしまったのに、ここまでやる気を出してくれているのに陽子は感謝してもしきれなかった。
「二人とも、本当にありがとう」
「なに、RPGのパーティーに回復役は必須だろ。その点アタシはピッタリじゃないか」
白衣のポケットから消毒液とバンドエイド、さらには栄養剤を取り出してにんまりと亜美が笑う。
「そうかな、どちらかっていうとアサシンの方が似合ってそうだけど」
冷たくあしらう緋美だったが、その両手にはカッターが握りしめられており一番怖い。
「大丈夫、とりあえず太い血管が流れてるところは狙わないから!」
粕川の不安を感じたのだろうか、緋美が安心させるかのようにトレードマークの赤い眼鏡の奥の瞳を細め、笑いながらそう言った。
いや、逆に不安になるんだけど。
この母にこの娘。おとなしいとばかり思っていた友人の意外な一面を見て粕川は驚くばかりだった。いや、向こうだって私が〈王の目〉とか言われて驚いてるだろうけども。
一体父親はどんな人なのだろう。粕川はそう思わずにはいられない。けれど今はそんなこと悠長に考えている場合ではない。キッとした表情の陽子を見て粕川も気持ちを入れ替える。ここから先、カスティリオーネの予知が要だ。自身に課せられた役割に身震いしつつ、それでも進まなければと粕川は強く思う。この国の為に。
まさしくそう思っていた彼らは肩身を縮めるばかりだった。だって母さんの奪還だってうまくいったし、今度もなんとかなるって思ってたから。
しかしその甘い考えは一蹴されてしまう。
「やつらがどんな手を考えてるか知らないけどね、その兵器とやらはこともあろうに東大にあるっていうんだろ?」
「多分だけど。赤い門が見えたから」
「で、そこにある地震研究所とやらが怪しいと」
「ええ」
「ほんとにそこにそんなヤバイ兵器があるんだとしたら、一介の政治家がおいそれとそこに関われるもんか。国家機密じゃないか。表は国の誇る研究施設、その実は、だなんていかにもなカモフラージュ。裏にはもっと大きななにかがついてる。ルクレティウス一人でどうにかできるもんか」
「ええっ?じゃあまさか、敵は総理大臣?」
勇樹が素っ頓狂な声を上げた。だってこの国でいちばん偉いのは総理大臣だろ?だからみんななりたがるんじゃないか。あの滝沢って人も。
「でも、意味が分からないよ。なんで総理大臣が自分の国を攻撃するの。しかもルクレティウスに協力して?」
異を唱えたのは緋美だった。そう思うのは誰しも同じだった。兵器は自分の国を守るため、ひいては他国を攻撃するためにあるんじゃないか。
「そりゃそうだ、そんなのあり得ない。けれど実際そう言うことが起ころうとしている。誰が首謀者かは今は重要じゃない、とにかく把握しておくべきなのは、相手は強大な存在だってこと」
議論を始めた彼らを制し、亜美は続ける。
「そんな竹刀一本でどうにかできる相手だと思わない。なにか武器を調達しないと」
「武器って。ゲームじゃないんだから、すぐに銃とか刀は買えないよ」
ゲーム好きの勇樹が抗議の声を上げる。あれは架空の世界だから許されてるんだ、だからファンタジーなんだもの。ここではないどこかを旅する疑似体験。とはいえ現実世界で仮に買えたところで、すぐにうまく使いこなせる自信もなかったけれど。
「とにかく、本丸に乗り込むために敵を避けていければいいんだ、なにも倒せとは言わない。殺したらますますこちらが悪者だ。うまく撒くための何かがあればいいんだけど」
フロントガラスから目を離し、うつむきがちに亜美が考えこむ。大変、危ない!
焦った粕川はこう提案した。
「とにかくコンビニに寄ってください、私がなんとかします」
立ち寄ったコンビニで彼女らは盛大に買い物することとなった。朝方、トラックやタクシーのドライバーが主に立ち寄るその静かな店内は、にわかにタイムサービスのスーパーのような賑やかしさだった。
「スプレー類、虫よけ、カッター、ハサミ、ライター、油、キムチ、からし、わさび、縄跳び、荷造り紐、ガムテープ、ゴミ袋、チョコ」
「チョコ?」
言われるままに商品をかごにポイポイと詰め込んでいた勇樹が思わず聞き返す。すでにカゴは5つ目だ、店員が変な目で見ているのが痛いほどに伝わってくる。
「チョコって。先生食べたいだけなんじゃないの?」
「そうだけど、悪い?」
「だって、遠足のお菓子を買いに来たんじゃないんだよ」
たしなめる勇樹だったが、
「腹が減っては戦が出来ぬって言葉知らないの?」
「まずは食べなきゃ人間死ぬんだぞ」
と女性陣がうるさくてしかたがない。
「そりゃあそうだけど」
じゃあ、とお言葉に甘えて勇樹も手当たり次第に食べ物を放り込む。そういえば緊張の連続で忘れていたのだ、空腹を。さらに彼は車内に残った母のことを思いだし、適当におにぎりやらサンドイッチやらをかごに入れた。
母さん、何が好きなんだろ。そういや食事中つまらなさそうにしていた姿しか浮かばない。案外親子でも、知らないことなんてたくさんあるのだ。たとえば亜美が陽子の腕の処置をしようとしたら、「大丈夫、包帯くらいなら自分で巻けます。前に看護師学校行ってたから」と言ったのには驚いた。あの母さんが看護師免許持ってたなんて。
支払いはとりあえず亜美が立て替えてくれたが、粕川はそれにも申し訳ない気持ちでいっぱいだった。いや主に彼女が入れた食料品が割合を占めてはいたけれど。
申し訳なさそうな粕川に、亜美はいいよこれくらい、と笑って流す。懐が深い人なんだなぁ、もといお医者さんってやっぱり儲かるのかなぁという感想を抱きつつ、けれどこの支払は絶対に碓井先生に払ってもらわねば、とも粕川は思っていた。
そうだ、ラーメン代だって立て替えたままだ。絶対に先生をルクレティウスから取り戻さないと。
パンパンの袋を手分けして持ち車に戻れば、陽子の腕周りがすっきりしていた。あの痛々しい腕を吊る三角布もなく、二の腕を包帯で少し巻いただけ。かすり傷だというのは本当だったらしい。
「おかえりなさい。これでわたしも少しは戦える」
「戦うって」
彼女にサンドイッチを渡しながら勇樹はつぶやいた。いくらなんでも片目で、これからの危険に立ち向かえるのだろうか。
「じゃあみんな食べながらでいい、作戦会議だ」
亜美の声で一斉、とりあえずは各々好きなものに手を伸ばした。
粕川が意識を集中する。まずやってくるのは大学の警備員。それもそうだろう、それが彼らの仕事だ。不審者が入ってこないよう、学生らを守るために。だから彼らを傷つけてはいけない。あくまでも気を引いて。前に使ったのと同じ手で炎を起こす。その間に滑り込む。
その先に現れるのはあの黒服。いったいどこから湧いてくるのか。左から二人、右から五人。どうやら行きたい先は右の様だ。妙に警備が厚い。左の二人にスプレーで目潰しして、右の二人は先頭集団の影に隠れてついてきた勇樹が足もと目がけて竹刀を薙ぐ。
一人転んだ。そいつの巻き添えをくらってもう一人。そいつらに陽子さんがすかさず鼻にわさびのチューブ。さらにもう一人に縄跳びを鞭のように振るい腕に巻きつけ引きずり倒す。
残るは二人。不意打ちは通用しない。じりじりと彼らは距離を詰めてくる。一人がナイフを投げてくる。陽子さんの見えない側の視界を狙って。だからもう少し彼女は後ろに下がったほうがいいだろう。やられてなるものかと、緋美が無造作にサラダ油を彼ら目がけて巻き散らかす。その横で、ライターの炎をちらつかせながら笑うその母。油を浴びた二人は恐れをなして逃げていく。
「とりあえず、そこまでは視えました」
「なんだい、アタシが悪魔みたいじゃないか」
最後にして唯一の頼みの綱、〈王の目〉の予知能力をフルに使うしか方法はなかった。とにかく動きを予測して、それに合わせて動く。動きが読まれていれば彼らも成す術がないだろう。しかしネックなのは予知できる範囲が限られることだった。たぶん、10分くらい?
「これ、進みながら予知してくの?現状に対応するのに必死でそれどころじゃない気もするけど」
それでホントに大丈夫なの?ジュースをゴクゴクと呑みながら不安そうに勇樹が言う。
「だからそこはまあ、〈王の盾〉の勇樹君に頑張ってもらえれば」
けれど粕川は気楽なものだった。少なくとも10分先を稼げているのだ。このタイムラグは大きい。この力が前々からあったならば、階段でうっかり転んだりだとか、定期を忘れて家を出たりしなくで済んだのに!
「そんなこと言われても、俺、先生みたいに特殊能力ないんだけど」
「わかんないよ?じつはいつの間にかパワーアップしてたりして」
「そんな都合よく行くもんか。それに、俺は母さんも守らないと」
なにせ〈王の盾〉だ。秘かに思いを寄せている先生と母親を天秤に掛けたくはなかったが、片や怪我人に片やチョコをモリモリ食べている先生だ。この場合、どちらを優先するべきかは火を見るより明らかだった。なにより粕川の実力を病院で嫌と言うほど見せつけられているし、むしろ助けてもらったではないか。
「じゃあアタシらは、理央ちゃんの指示に従うから」
持てる限りの凶器――には見えぬ調味料だのガムテープだのを装備して、穴田親子は立ち上がった。半ば巻き込む形で仲間にしてしまったのに、ここまでやる気を出してくれているのに陽子は感謝してもしきれなかった。
「二人とも、本当にありがとう」
「なに、RPGのパーティーに回復役は必須だろ。その点アタシはピッタリじゃないか」
白衣のポケットから消毒液とバンドエイド、さらには栄養剤を取り出してにんまりと亜美が笑う。
「そうかな、どちらかっていうとアサシンの方が似合ってそうだけど」
冷たくあしらう緋美だったが、その両手にはカッターが握りしめられており一番怖い。
「大丈夫、とりあえず太い血管が流れてるところは狙わないから!」
粕川の不安を感じたのだろうか、緋美が安心させるかのようにトレードマークの赤い眼鏡の奥の瞳を細め、笑いながらそう言った。
いや、逆に不安になるんだけど。
この母にこの娘。おとなしいとばかり思っていた友人の意外な一面を見て粕川は驚くばかりだった。いや、向こうだって私が〈王の目〉とか言われて驚いてるだろうけども。
一体父親はどんな人なのだろう。粕川はそう思わずにはいられない。けれど今はそんなこと悠長に考えている場合ではない。キッとした表情の陽子を見て粕川も気持ちを入れ替える。ここから先、カスティリオーネの予知が要だ。自身に課せられた役割に身震いしつつ、それでも進まなければと粕川は強く思う。この国の為に。
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