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入江の目論見
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「いやいやいや、やだよ俺まだ中学生なのに前科持ちになるなんて!」
思わず勇樹が頭を抱えて座り込む。まだその軍事兵器とやらも壊せていない。壊した後ならまだ言い訳もできたかもしれない。ああ、この人たちは本当にやめさせようとしていたんだ、そう理解してくれたかもしれない。そこの滝沢と黒崎って人が本当の犯人なんです、お巡りさん!そう伝えれば済んだのかもしれなかった。
なにせ富士噴火を望んでいない王の意思表明をネット配信しておいたのだ。先の作戦会議の際、出来ることはすべてやった。目には目を、動画には動画を。あれは言わされたこと、わたしは富士噴火を止めてみせる。とあらゆるSNSや動画サイトにアップして。
それでうそつき呼ばわりされるくらいで済むのならまだマシだ、そう打算して。なんだ、噴火させるっていってそれを実は望んでないとかなんて、ただの目立ちたがり屋じゃん。
そう思われるくらいなら甘んじて受けとめよう。けれどマジで噴火したらただのヤバいやつじゃん、母さん。だからなんとしてでも止めなければならなかった。もちろん、この国の人々の為にも。
「止まれっ!!さもないと撃つぞ!」
突入した警官隊の隊長だろうか、張りのある声が響く。彼らは滝沢らがやってきた入口からなだれ込み、あっという間に黒服ともども一同を包囲する。この広い空間を取り巻けるほどの人員。囲まれた彼らは成す術がなかった。
「チッ」
亜美はハサミを後ろ手に隠す。緋美もそれに従った。さすがにあれだけ暴れて、少なくとも傷害罪で捕まっても文句は言えない。あと少しでアイツに近づけたのに。
陽子も勇樹もさすがに動きを止める。その中で絶望の吐息をもらす粕川。この先を予知などしたくもなかった。
この国でいくらなんでもハチの巣にされることもないだろうが、それでも銃を構えた人間にこれだけ囲まれて、生きた心地がしないのはその場にいた誰もが感じていた。
「ご苦労、テロリスト鎮圧にご協力感謝する」
その中で唯一動いたのは黒崎。何食わぬ顔で、両腕を広げて。
けれどその内心、彼はひどく慌てていた。おかしい。なぜもう警官隊が来ている?しかも自衛隊まで引き連れて。俺が指示したのは、噴火の10分前に通報だ。ちょうどテロリストどもがこの施設に侵入して、兵器を作動させたはずの頃合いに、証人として呼ぶ手筈だったというのに。
チラリと腕の時計に目をやれば、9:30分。到着には30分早い。あくまでも地震が引き起こされてから彼らはここに現れなければならなかったのに。誰がこんなミスをした?
内心舌打ちしつつ、必死に、さも助けが来たことに安堵するかのような表情を保たなければならない。一方、彼はこれからの動きも算段する。どうする?あくまでも噴火は起こさなければならない。それを成し遂げなければ、彼には未来がないのだから。
そうだ。黒崎は思案する。滝沢を放とうか。黒服どもに拘束され、動向をよく把握していない滝沢。あの馬鹿ならこの状況でも暴挙に出るのでは?いや。しかしすぐにその考えを改める。あの権力にめっぽう弱い滝沢だ、さすがにこれだけの国家権力に囲まれて、そこで動くほどの勇気があるだろうか。
ならば王は?いや、やつらの狙いは兵器の破壊だ。彼女らを自由にしたところで意味はない。いずれにせよ、やつらは噴火未遂のテロリストとして確保されるしか道がなかったが。
ああ、では唐澤は?教授の助手として協力を強いた冴えない学者。アイツはどこにいる?アイツが指示通りに、兵器の作動ボタンを押してくれていたならば。再度腕時計に目をやる。9:32。ひどく時の流れを遅く感じた。そうだ、もう予言の時刻などどうでもいい。こうなってしまったら、数十分の差など大したことではない、とにかく彼らの意志通りに動かなければ。
柔和な表情を警官隊の隊長に向けながら、黒崎は必死に唐澤の姿を探したが見つからない。くそ、アイツどこに隠れている。それともこの混乱に乗じて、これ幸いと逃げ出したとでも?捏造をばらしてもいいというのか、あの野郎。怒りが黒崎を襲う。
誰だ俺の計画を妨げたのは。シニフィか、レティマシーか。使えない部下ばかりだ。ああ、本当に俺は周りの環境に恵まれていなかった。なにせ親はつまらぬヤクザだ、そしてくだらない政治家と結託して。その家系のせいで失うものは多かった。
世間一般で言う幸福な家庭。そんなものは彼は持ち得なかった。それもこれも周りのせいだ、俺を誰がこんなふうにしたと思ってる。この計画さえ遂行できれば、俺はついに自由になれるはずだったのに!
表面は人の良さそうな仮面を被りながら、テロリストの粛清に感謝を述べる彼に向けられた声があった。
「そいつも共犯者の様だ、隊長、捕まえておいてくれ。いや、殺してしまったほうが得策かな?」
聞き覚えのある声。なぜ?そう思う間もなく、黒崎は両足に痛みが走るのを感じた。
「!?なんで!」
鋭い破裂音。そして崩れる黒崎の姿。状況も分からぬまま陽子らは驚きの声を上げた。どういうこと?やっぱり正義の味方は、誰が悪人なのか知ってたってこと!?
しかしその矛先は、今度は陽子らに向けられる。
「まったく、正しき道に使われるべき研究を、己の欲望のために使うとは。王とは聞いて呆れるな」
警官隊の押し寄せるその入り口から、一人の男が現れる。青い目が印象的の、老骨の男。どこかで見た顔だった。
「あれは……入江教授?」
確か初めて出たテレビ番組で。陽子は思いだした。あの王国を肯定してくれた学者先生ではないか。日本人離れした容姿とは違って流暢に日本語を操る、独特の雰囲気を纏ったその男。その彼がなぜここに、しかも黒崎を、さらにはわたしたちを狙っている?
「おかしい、話が違う、なぜ俺まで」
痛みに顔をゆがませ、額に脂汗を浮かべて黒崎が問うた。なぜ俺が撃たれている?痛みが思考を霞ませる。ただただ浮かぶのはおかしいと思う気持ちばかりだった。
「滝沢、黒崎と結託して、『王』を名乗る女と共にこの国を混乱に落とし込む。なに概ね間違ってはいないだろう、事実この有様だ。まったく、せっかくの研究施設が台無しだ。どれだけ国家予算がつぎ込まれたか知ったらさぞかし驚くだろうに」
悠々と語りながら入江はこの状況を見回し、なぜか満足したように微笑みを浮かべた。
「しかし、王自らこちらにお越しいただけるとは。ご協力感謝するよ。さあ、これですべて舞台は整った。あとはそれぞれ与えられた役割を全うしてもらおう」
「役割だと?その通りにしてきただろう、なぜこのようなことをする」
這いつくばり黒崎が呪詛のような声で問う。お前が言ったから俺はここまでうまく立ち回ってきたじゃないか。そうのた打ち回る彼の周りを、やはり銃を構えた自衛隊員らが取り囲む。黒崎は、自身から血が流れていくのを感じるしかできなかった。
「それが君に課せられた役割だからだ。そんなことより、あの女を捕まえてこちらに連れてきてもらえるかな」
「は!」
すでに入江は黒崎への興味も失ったらしい。ぞんざいに受け答えると、傍に控える隊長に指示を出す。任務に忠実な彼らは真実を疑うこともなくその指示を遂行しようとする。
銃を構え、警官隊がじりじりと陽子に迫ってくる。さしもの怪力の王とはいえ、さすがに鉛玉を打ち込まれたらひとたまりもない。それに左腕の痛みを思いだしていた。あの時はかすり傷で済んだけれど、これで身体を撃たれたら本当に死んでしまう!
カスティリオーネ、わたしはどうしたらいい?けれど頼みの綱の彼女も、向けられた銃口にただ震えているばかりだった。おそらく、予知は絶望的なものしか見せてくれなかったのだろう。ここまで来たのにただ捕まるだけの未来。
その予知通りに、成す術もなくあっけなく陽子ら王の一行は捕まってしまった。穴田親子も例外ではなかった。はっきり言って気が気ではなかったが、ここで殺されるわけにもいかない。すぐには死にやしないだろうが、出血量によっては危険だ。あんな奴でも止血だけでもしておきたかったが、と亜美は倒れる黒崎の方に視線を這わす。だがそれよりはまず娘を守らなければ。後ろ手に手錠を掛けられ、両足を縛られつつも半ば娘に覆いかぶさるように親子は身を寄せ合う。
粕川と勇樹も同じような有様で、身を寄せ合い怯えるばかりだった。これから俺たちどうなっちゃうんだろう。黒崎のようにいきなり撃たれなかっただけましだろうか。彼女らはアンテナの無数に乱立するその中央、そこだけ開けた場所に放り込まれていた。
ただ一人、ロロを除いて。いったいどこに行ったのだろう。そう考える余裕もなかった。
なぜなら陽子は髪をわしづかみされ、入江によって無理やりに立たされていたからだった。こんな老人。手足が自由なら突き飛ばしてやるのに!陽子は歯ぎしりする。しかしそれも叶わず、陽子はその男のされるがままだった。引きずられ、閑散とした広場の中央。なんだか複雑そうな機械の前へと連れて行かれる。
「違う、わたしは富士噴火を止めに来たの。噴火をたくらんだのは滝沢と黒崎。わたしは彼らに利用されただけなの!」
陽子は懇願した。この人は勘違いしている。わたしが富士を噴火させるためにここに乗り込んだのだと。ならばその誤解を解かなければ。
けれど気がかりなのは先の黒崎の悲痛な叫びだった。「おかしい、話が違う」
入江と黒崎はどのような関係にあったのか。
「なぜ俺まで」黒崎は、自分は入江側の仲間だと思っていたのか?
しかしその思考は、入江の一言によってかき消されてしまった。
「さあ、王を名乗る女。そのボタンを押すと良い。そうしたかったんだろう?自分の力を示すために。なに、ものの数分だ。強力な電磁波が地殻に照射され、噴火および地震を誘発する」
「な……?」
まさかの男の発言に、陽子は、いや陽子だけではない、ここまで一緒にやってきた仲間たちも絶句した。
なぜこいつは噴火を助長するようなことを言っている!?なぜ、そんな危険なことを言い放つ男に、警官隊や自衛隊員らは手を貸しているんだ!
「そうしていただけると助かるのだがね、王よ。悪いがその見返りに与えられる称号はテロリストだけなんだがね」
高々と笑いながら、青い瞳を細めて入江が言った。
「いずれにせよいつかは起こる自然災害だ。起こる起こると言われ続けて早十数年。いちいち対策を立てるのも馬鹿にならない。君たちはいつ崩壊するかわからない家に住み続けたいかい?雨漏りする場所に板を張り、無理やりにでも住みたいかね」
「何を言っているの?」
陽子は自由な右目で入江を睨む。うっすらと彼の言いたいことは分かったような気もしたが、けれど分かりたくもなかった。
「ならば一度壊すしかないだろう。あの山だって、トラフ沖だってそうだ。一度爆発させておけばしばらくは安泰だ。あらかじめいつそれが起こるのかわかっていれば対策のしようもある」
「じゃあ、不意に大災害が起こらないように自然をコントロールしようっていうのかい」
入江の話を聞いていた亜美が口を開いた。
「ご名答。理解が早くて助かるよ」
「じゃあ、静岡の人たちには避難勧告を出してるの?これから噴火と地震が起こるから逃げなさいって」
さらに続いたのは緋美だった。でもそんなこと、それこそ「王の予言」そのものじゃない。
「それは君がやってくれたじゃないか、なあ、王よ」
髪を掴む腕に力を籠め、入江が陽子の顔を自分の顔先へと近づける。
「まあ君の力が足りないせいで、大して避難者は出ないようだったがね」
そう笑い陽子にかかる息は生臭かった。ああ、いやらしい臭いだ。とても人間とは思えないような、まるでゾンビの吐く吐息の様ではないか。
「それなのに噴火させるなんてどうかしてるよ!」
もっともなことを勇樹が叫ぶが、彼は聞く耳など持たぬようだった。
「わかった、あなたの筋書きはこうね。いつ起こるかわからない災害を憂うものがいる。ならばそれに怯えていないで、さっさとそれを済ましてしまえばいい」
亜美のセリフがヒントかのように、粕川の脳裏にひらめくものがあった。
「けれどまさか故意に噴火させると言ったところで国民の反感を買うのは必須。ならば富士を操ることが出来たとか言う、怪しい「王」を名乗る女がそれを起こしたことにすればいい」
「それは予知したのかい?〈王の目〉」
ニタリ、と笑って入江が言った。光る青い目がひどく不気味だった。
「これくらい、話を聞いてれば推測できる。まるで子供の夏休みの宿題みたいじゃない。嫌なことはさっさと終わらせておこう、だなんて発想」
「そのほうが幸福ではないかね。後回しにして、日々それに気をとられるくらいなら」
「そうね、これが宿題ならそれでいいと思うけど。でも王を名乗るテロリストに襲われて、兵器を奪われました、なんて知られたらまずいんじゃないの?日本がこんな兵器を持っているって全世界に知らしめるようなものじゃない」
「構わないさ。全世界に何基あると思うかい?14基だ。地震大国であるこの国が持っていてもおかしくはない。だが、さすがに自国を攻撃するはずはない、ならばこれは諸外国へ拮抗するためのものなのだ、あるいは地震を相殺させるものなのだと国民は理解してくれるだろう」
「でも、こんな危ないもの」
そんなの国民が認めるものか。少なくとも私は認めない!そう粕川が返せば、
「保有するなと取り決められているのは核だけだ。事実イージス艦も戦闘機もロケット弾も保有している。実にこの兵器は優秀でね、強力な電磁波を放つゆえに、自然災害を起こす以外に通信の撹乱や飛行機機器を誤作動させ墜落させることもできる。すべてはこの国を守るためだ、それならば致し方ないだろう?」
と返された。悔しいが事実だった。平和を謳うこの国だって、その気になれば戦争を起こせるぐらいの力はあるのだ。
「でも間違ってる、確かに自然災害は恐ろしいけど、それを故意に起こしてどうするのよ。しかもろくに避難もさせないで、人が巻き込まれて死んでも構わないっていうの!?」
それでも陽子はそう喚いた。喚かずにはいられなかった。例え掴まれた頭が痛くとも、命の危険にさらされていても、だ。
「構わなんだろう?サピエンスどもが多少死のうとも。大体逃げ遅れるのは弱い個体だ、そんなものを残しても金がかかるだけだ。「王」はそう考えたんだろう?」
「違う、わたしはそんなこと思わない!」
「そう考えたことになってるんだ」
やんわりと、まるで物わかりの悪い学生に話しかけるかのような優しい声で入江が続けた。
「自分の力を、ひいてはネアンデルタール属の優秀さを見せつけるためにこのような野蛮な行為に走った君たちが、被害者たちの憎悪を一身に引き受けてくれるのだから」
「何を……言ってるの?」
「そうじゃないのか。すぐれた人種であるネアンデルタール属。その王を崇め奉る神殿まで建てて、あろうことか政界にまで手を伸ばして。まったく黒崎も滝沢もよく思惑通りに動いてくれたよ。おかげで王は今や醜聞のかたまりじゃあないか」
「すべての首謀者は……あなたなのね?」
陽子は理解した。この人こそが恐ろしいテロリストではないか。けれどまさかそれに警察だの自衛隊だのまで協力するなんて。まさか、この国をも騙しているのとでも?
「首謀者?ふん、少し違うな。所詮私も動かされているに過ぎない」
「誰に?」
「答えてやる義務もなかろう。それより時間だ。早くそれを押したまえ」
「嫌よ!」
身体の自由を奪われつつ、陽子はそれでも抵抗を試みる。しかし容赦なく腹を殴られ、陽子は思わず吐きそうになるほどの痛みを感じた。とても老人の力とは思えなかった。
「何てこと!」
勇樹がいきり立つ。助けに行きたかったがそれもままならない。何が〈王の盾〉だ、ぜんぜん守れてないじゃないか。
「さすがにこんな手荒な真似はしたくなかったが、君の中身は偉大な男の王様なんだろう、それに今は凶悪なテロリストだ。これくらいの抵抗をさせてくれ、なにせこちらは『被害者』だからな」
「嫌よ、そんなに災害を起こしたいなら自分の手で押せばいいじゃない」
陽子は唾と共に血を吐きながら言った。
「それは駄目だ、これはあくまでも君が起こしたことなんだからね。さすがに「王」の力なんて眉唾なもので地震が起きたと人々は考えないが、兵器を利用したのだと考えれば皆納得するだろう。その証拠はちゃんと監視カメラが録画してくれる。なに、画像の編集などいくらでもできる、強要されてるように映らないよう、編集すれば済むことだ」
「じゃあ、それこそわたしのそっくりさんでも捕まえて、起動スイッチを押すシーンでも撮ればいいじゃない」
「案外君は有名人でね、下手に偽物を映すと偽造がバレる可能性があるんだ。狂信的な信者も一部いるにはいるようだし、あれは本物じゃないと騒がれても面倒だ」
「でも、手錠まで掛けられてるのに?そんな状態じゃとてもじゃないけど自らの意志で噴火を望んでるようには見えないけど。そんなとこ撮ってどうすんの」
反論したのは粕川だった。いくら画像編集するにしたって、さすがに両腕が不自由なのは不自然だ。この言葉でもし入江が陽子の身体を自由にしてくれたならば。
陽子さん、その時がチャンスです!
まるでテレパシーが通じるのを祈るように、粕川は陽子の右目を見据える。この言葉に相手が乗ってくれさえすれば!
「ああ、それもそうだ。ならば君を自由にしてやろう」
まるで粕川に操られたごとくに、見事彼女の思惑通りとなった。今です、陽子さん!一瞬でも陽子さんが自由になれば。そして、逆に入江を捕まえてしまえばいい。彼女の怪力でどこまでうまく立ち回れるか。
粕川は期待し、意識を集中する。さてこの先の未来、どう変わった?私たちはどう動けばいい?
しかしそこで予想外の登場人物が現れた。嘘、まさかほんとに囚われていたなんて。
入江が何のためらいもなく陽子の手と足のかせを外した。今だ!陽子が腕を振りかざしたその時。
「無駄なことはしないほうがいい。彼を、いや彼女のどちらかな?どちらでも構わないが傷つけられたくはないだろう?」
そう言い放つ入江の声の先から、囚われの王妃こと碓井が連れられ姿を現したのだった。
思わず勇樹が頭を抱えて座り込む。まだその軍事兵器とやらも壊せていない。壊した後ならまだ言い訳もできたかもしれない。ああ、この人たちは本当にやめさせようとしていたんだ、そう理解してくれたかもしれない。そこの滝沢と黒崎って人が本当の犯人なんです、お巡りさん!そう伝えれば済んだのかもしれなかった。
なにせ富士噴火を望んでいない王の意思表明をネット配信しておいたのだ。先の作戦会議の際、出来ることはすべてやった。目には目を、動画には動画を。あれは言わされたこと、わたしは富士噴火を止めてみせる。とあらゆるSNSや動画サイトにアップして。
それでうそつき呼ばわりされるくらいで済むのならまだマシだ、そう打算して。なんだ、噴火させるっていってそれを実は望んでないとかなんて、ただの目立ちたがり屋じゃん。
そう思われるくらいなら甘んじて受けとめよう。けれどマジで噴火したらただのヤバいやつじゃん、母さん。だからなんとしてでも止めなければならなかった。もちろん、この国の人々の為にも。
「止まれっ!!さもないと撃つぞ!」
突入した警官隊の隊長だろうか、張りのある声が響く。彼らは滝沢らがやってきた入口からなだれ込み、あっという間に黒服ともども一同を包囲する。この広い空間を取り巻けるほどの人員。囲まれた彼らは成す術がなかった。
「チッ」
亜美はハサミを後ろ手に隠す。緋美もそれに従った。さすがにあれだけ暴れて、少なくとも傷害罪で捕まっても文句は言えない。あと少しでアイツに近づけたのに。
陽子も勇樹もさすがに動きを止める。その中で絶望の吐息をもらす粕川。この先を予知などしたくもなかった。
この国でいくらなんでもハチの巣にされることもないだろうが、それでも銃を構えた人間にこれだけ囲まれて、生きた心地がしないのはその場にいた誰もが感じていた。
「ご苦労、テロリスト鎮圧にご協力感謝する」
その中で唯一動いたのは黒崎。何食わぬ顔で、両腕を広げて。
けれどその内心、彼はひどく慌てていた。おかしい。なぜもう警官隊が来ている?しかも自衛隊まで引き連れて。俺が指示したのは、噴火の10分前に通報だ。ちょうどテロリストどもがこの施設に侵入して、兵器を作動させたはずの頃合いに、証人として呼ぶ手筈だったというのに。
チラリと腕の時計に目をやれば、9:30分。到着には30分早い。あくまでも地震が引き起こされてから彼らはここに現れなければならなかったのに。誰がこんなミスをした?
内心舌打ちしつつ、必死に、さも助けが来たことに安堵するかのような表情を保たなければならない。一方、彼はこれからの動きも算段する。どうする?あくまでも噴火は起こさなければならない。それを成し遂げなければ、彼には未来がないのだから。
そうだ。黒崎は思案する。滝沢を放とうか。黒服どもに拘束され、動向をよく把握していない滝沢。あの馬鹿ならこの状況でも暴挙に出るのでは?いや。しかしすぐにその考えを改める。あの権力にめっぽう弱い滝沢だ、さすがにこれだけの国家権力に囲まれて、そこで動くほどの勇気があるだろうか。
ならば王は?いや、やつらの狙いは兵器の破壊だ。彼女らを自由にしたところで意味はない。いずれにせよ、やつらは噴火未遂のテロリストとして確保されるしか道がなかったが。
ああ、では唐澤は?教授の助手として協力を強いた冴えない学者。アイツはどこにいる?アイツが指示通りに、兵器の作動ボタンを押してくれていたならば。再度腕時計に目をやる。9:32。ひどく時の流れを遅く感じた。そうだ、もう予言の時刻などどうでもいい。こうなってしまったら、数十分の差など大したことではない、とにかく彼らの意志通りに動かなければ。
柔和な表情を警官隊の隊長に向けながら、黒崎は必死に唐澤の姿を探したが見つからない。くそ、アイツどこに隠れている。それともこの混乱に乗じて、これ幸いと逃げ出したとでも?捏造をばらしてもいいというのか、あの野郎。怒りが黒崎を襲う。
誰だ俺の計画を妨げたのは。シニフィか、レティマシーか。使えない部下ばかりだ。ああ、本当に俺は周りの環境に恵まれていなかった。なにせ親はつまらぬヤクザだ、そしてくだらない政治家と結託して。その家系のせいで失うものは多かった。
世間一般で言う幸福な家庭。そんなものは彼は持ち得なかった。それもこれも周りのせいだ、俺を誰がこんなふうにしたと思ってる。この計画さえ遂行できれば、俺はついに自由になれるはずだったのに!
表面は人の良さそうな仮面を被りながら、テロリストの粛清に感謝を述べる彼に向けられた声があった。
「そいつも共犯者の様だ、隊長、捕まえておいてくれ。いや、殺してしまったほうが得策かな?」
聞き覚えのある声。なぜ?そう思う間もなく、黒崎は両足に痛みが走るのを感じた。
「!?なんで!」
鋭い破裂音。そして崩れる黒崎の姿。状況も分からぬまま陽子らは驚きの声を上げた。どういうこと?やっぱり正義の味方は、誰が悪人なのか知ってたってこと!?
しかしその矛先は、今度は陽子らに向けられる。
「まったく、正しき道に使われるべき研究を、己の欲望のために使うとは。王とは聞いて呆れるな」
警官隊の押し寄せるその入り口から、一人の男が現れる。青い目が印象的の、老骨の男。どこかで見た顔だった。
「あれは……入江教授?」
確か初めて出たテレビ番組で。陽子は思いだした。あの王国を肯定してくれた学者先生ではないか。日本人離れした容姿とは違って流暢に日本語を操る、独特の雰囲気を纏ったその男。その彼がなぜここに、しかも黒崎を、さらにはわたしたちを狙っている?
「おかしい、話が違う、なぜ俺まで」
痛みに顔をゆがませ、額に脂汗を浮かべて黒崎が問うた。なぜ俺が撃たれている?痛みが思考を霞ませる。ただただ浮かぶのはおかしいと思う気持ちばかりだった。
「滝沢、黒崎と結託して、『王』を名乗る女と共にこの国を混乱に落とし込む。なに概ね間違ってはいないだろう、事実この有様だ。まったく、せっかくの研究施設が台無しだ。どれだけ国家予算がつぎ込まれたか知ったらさぞかし驚くだろうに」
悠々と語りながら入江はこの状況を見回し、なぜか満足したように微笑みを浮かべた。
「しかし、王自らこちらにお越しいただけるとは。ご協力感謝するよ。さあ、これですべて舞台は整った。あとはそれぞれ与えられた役割を全うしてもらおう」
「役割だと?その通りにしてきただろう、なぜこのようなことをする」
這いつくばり黒崎が呪詛のような声で問う。お前が言ったから俺はここまでうまく立ち回ってきたじゃないか。そうのた打ち回る彼の周りを、やはり銃を構えた自衛隊員らが取り囲む。黒崎は、自身から血が流れていくのを感じるしかできなかった。
「それが君に課せられた役割だからだ。そんなことより、あの女を捕まえてこちらに連れてきてもらえるかな」
「は!」
すでに入江は黒崎への興味も失ったらしい。ぞんざいに受け答えると、傍に控える隊長に指示を出す。任務に忠実な彼らは真実を疑うこともなくその指示を遂行しようとする。
銃を構え、警官隊がじりじりと陽子に迫ってくる。さしもの怪力の王とはいえ、さすがに鉛玉を打ち込まれたらひとたまりもない。それに左腕の痛みを思いだしていた。あの時はかすり傷で済んだけれど、これで身体を撃たれたら本当に死んでしまう!
カスティリオーネ、わたしはどうしたらいい?けれど頼みの綱の彼女も、向けられた銃口にただ震えているばかりだった。おそらく、予知は絶望的なものしか見せてくれなかったのだろう。ここまで来たのにただ捕まるだけの未来。
その予知通りに、成す術もなくあっけなく陽子ら王の一行は捕まってしまった。穴田親子も例外ではなかった。はっきり言って気が気ではなかったが、ここで殺されるわけにもいかない。すぐには死にやしないだろうが、出血量によっては危険だ。あんな奴でも止血だけでもしておきたかったが、と亜美は倒れる黒崎の方に視線を這わす。だがそれよりはまず娘を守らなければ。後ろ手に手錠を掛けられ、両足を縛られつつも半ば娘に覆いかぶさるように親子は身を寄せ合う。
粕川と勇樹も同じような有様で、身を寄せ合い怯えるばかりだった。これから俺たちどうなっちゃうんだろう。黒崎のようにいきなり撃たれなかっただけましだろうか。彼女らはアンテナの無数に乱立するその中央、そこだけ開けた場所に放り込まれていた。
ただ一人、ロロを除いて。いったいどこに行ったのだろう。そう考える余裕もなかった。
なぜなら陽子は髪をわしづかみされ、入江によって無理やりに立たされていたからだった。こんな老人。手足が自由なら突き飛ばしてやるのに!陽子は歯ぎしりする。しかしそれも叶わず、陽子はその男のされるがままだった。引きずられ、閑散とした広場の中央。なんだか複雑そうな機械の前へと連れて行かれる。
「違う、わたしは富士噴火を止めに来たの。噴火をたくらんだのは滝沢と黒崎。わたしは彼らに利用されただけなの!」
陽子は懇願した。この人は勘違いしている。わたしが富士を噴火させるためにここに乗り込んだのだと。ならばその誤解を解かなければ。
けれど気がかりなのは先の黒崎の悲痛な叫びだった。「おかしい、話が違う」
入江と黒崎はどのような関係にあったのか。
「なぜ俺まで」黒崎は、自分は入江側の仲間だと思っていたのか?
しかしその思考は、入江の一言によってかき消されてしまった。
「さあ、王を名乗る女。そのボタンを押すと良い。そうしたかったんだろう?自分の力を示すために。なに、ものの数分だ。強力な電磁波が地殻に照射され、噴火および地震を誘発する」
「な……?」
まさかの男の発言に、陽子は、いや陽子だけではない、ここまで一緒にやってきた仲間たちも絶句した。
なぜこいつは噴火を助長するようなことを言っている!?なぜ、そんな危険なことを言い放つ男に、警官隊や自衛隊員らは手を貸しているんだ!
「そうしていただけると助かるのだがね、王よ。悪いがその見返りに与えられる称号はテロリストだけなんだがね」
高々と笑いながら、青い瞳を細めて入江が言った。
「いずれにせよいつかは起こる自然災害だ。起こる起こると言われ続けて早十数年。いちいち対策を立てるのも馬鹿にならない。君たちはいつ崩壊するかわからない家に住み続けたいかい?雨漏りする場所に板を張り、無理やりにでも住みたいかね」
「何を言っているの?」
陽子は自由な右目で入江を睨む。うっすらと彼の言いたいことは分かったような気もしたが、けれど分かりたくもなかった。
「ならば一度壊すしかないだろう。あの山だって、トラフ沖だってそうだ。一度爆発させておけばしばらくは安泰だ。あらかじめいつそれが起こるのかわかっていれば対策のしようもある」
「じゃあ、不意に大災害が起こらないように自然をコントロールしようっていうのかい」
入江の話を聞いていた亜美が口を開いた。
「ご名答。理解が早くて助かるよ」
「じゃあ、静岡の人たちには避難勧告を出してるの?これから噴火と地震が起こるから逃げなさいって」
さらに続いたのは緋美だった。でもそんなこと、それこそ「王の予言」そのものじゃない。
「それは君がやってくれたじゃないか、なあ、王よ」
髪を掴む腕に力を籠め、入江が陽子の顔を自分の顔先へと近づける。
「まあ君の力が足りないせいで、大して避難者は出ないようだったがね」
そう笑い陽子にかかる息は生臭かった。ああ、いやらしい臭いだ。とても人間とは思えないような、まるでゾンビの吐く吐息の様ではないか。
「それなのに噴火させるなんてどうかしてるよ!」
もっともなことを勇樹が叫ぶが、彼は聞く耳など持たぬようだった。
「わかった、あなたの筋書きはこうね。いつ起こるかわからない災害を憂うものがいる。ならばそれに怯えていないで、さっさとそれを済ましてしまえばいい」
亜美のセリフがヒントかのように、粕川の脳裏にひらめくものがあった。
「けれどまさか故意に噴火させると言ったところで国民の反感を買うのは必須。ならば富士を操ることが出来たとか言う、怪しい「王」を名乗る女がそれを起こしたことにすればいい」
「それは予知したのかい?〈王の目〉」
ニタリ、と笑って入江が言った。光る青い目がひどく不気味だった。
「これくらい、話を聞いてれば推測できる。まるで子供の夏休みの宿題みたいじゃない。嫌なことはさっさと終わらせておこう、だなんて発想」
「そのほうが幸福ではないかね。後回しにして、日々それに気をとられるくらいなら」
「そうね、これが宿題ならそれでいいと思うけど。でも王を名乗るテロリストに襲われて、兵器を奪われました、なんて知られたらまずいんじゃないの?日本がこんな兵器を持っているって全世界に知らしめるようなものじゃない」
「構わないさ。全世界に何基あると思うかい?14基だ。地震大国であるこの国が持っていてもおかしくはない。だが、さすがに自国を攻撃するはずはない、ならばこれは諸外国へ拮抗するためのものなのだ、あるいは地震を相殺させるものなのだと国民は理解してくれるだろう」
「でも、こんな危ないもの」
そんなの国民が認めるものか。少なくとも私は認めない!そう粕川が返せば、
「保有するなと取り決められているのは核だけだ。事実イージス艦も戦闘機もロケット弾も保有している。実にこの兵器は優秀でね、強力な電磁波を放つゆえに、自然災害を起こす以外に通信の撹乱や飛行機機器を誤作動させ墜落させることもできる。すべてはこの国を守るためだ、それならば致し方ないだろう?」
と返された。悔しいが事実だった。平和を謳うこの国だって、その気になれば戦争を起こせるぐらいの力はあるのだ。
「でも間違ってる、確かに自然災害は恐ろしいけど、それを故意に起こしてどうするのよ。しかもろくに避難もさせないで、人が巻き込まれて死んでも構わないっていうの!?」
それでも陽子はそう喚いた。喚かずにはいられなかった。例え掴まれた頭が痛くとも、命の危険にさらされていても、だ。
「構わなんだろう?サピエンスどもが多少死のうとも。大体逃げ遅れるのは弱い個体だ、そんなものを残しても金がかかるだけだ。「王」はそう考えたんだろう?」
「違う、わたしはそんなこと思わない!」
「そう考えたことになってるんだ」
やんわりと、まるで物わかりの悪い学生に話しかけるかのような優しい声で入江が続けた。
「自分の力を、ひいてはネアンデルタール属の優秀さを見せつけるためにこのような野蛮な行為に走った君たちが、被害者たちの憎悪を一身に引き受けてくれるのだから」
「何を……言ってるの?」
「そうじゃないのか。すぐれた人種であるネアンデルタール属。その王を崇め奉る神殿まで建てて、あろうことか政界にまで手を伸ばして。まったく黒崎も滝沢もよく思惑通りに動いてくれたよ。おかげで王は今や醜聞のかたまりじゃあないか」
「すべての首謀者は……あなたなのね?」
陽子は理解した。この人こそが恐ろしいテロリストではないか。けれどまさかそれに警察だの自衛隊だのまで協力するなんて。まさか、この国をも騙しているのとでも?
「首謀者?ふん、少し違うな。所詮私も動かされているに過ぎない」
「誰に?」
「答えてやる義務もなかろう。それより時間だ。早くそれを押したまえ」
「嫌よ!」
身体の自由を奪われつつ、陽子はそれでも抵抗を試みる。しかし容赦なく腹を殴られ、陽子は思わず吐きそうになるほどの痛みを感じた。とても老人の力とは思えなかった。
「何てこと!」
勇樹がいきり立つ。助けに行きたかったがそれもままならない。何が〈王の盾〉だ、ぜんぜん守れてないじゃないか。
「さすがにこんな手荒な真似はしたくなかったが、君の中身は偉大な男の王様なんだろう、それに今は凶悪なテロリストだ。これくらいの抵抗をさせてくれ、なにせこちらは『被害者』だからな」
「嫌よ、そんなに災害を起こしたいなら自分の手で押せばいいじゃない」
陽子は唾と共に血を吐きながら言った。
「それは駄目だ、これはあくまでも君が起こしたことなんだからね。さすがに「王」の力なんて眉唾なもので地震が起きたと人々は考えないが、兵器を利用したのだと考えれば皆納得するだろう。その証拠はちゃんと監視カメラが録画してくれる。なに、画像の編集などいくらでもできる、強要されてるように映らないよう、編集すれば済むことだ」
「じゃあ、それこそわたしのそっくりさんでも捕まえて、起動スイッチを押すシーンでも撮ればいいじゃない」
「案外君は有名人でね、下手に偽物を映すと偽造がバレる可能性があるんだ。狂信的な信者も一部いるにはいるようだし、あれは本物じゃないと騒がれても面倒だ」
「でも、手錠まで掛けられてるのに?そんな状態じゃとてもじゃないけど自らの意志で噴火を望んでるようには見えないけど。そんなとこ撮ってどうすんの」
反論したのは粕川だった。いくら画像編集するにしたって、さすがに両腕が不自由なのは不自然だ。この言葉でもし入江が陽子の身体を自由にしてくれたならば。
陽子さん、その時がチャンスです!
まるでテレパシーが通じるのを祈るように、粕川は陽子の右目を見据える。この言葉に相手が乗ってくれさえすれば!
「ああ、それもそうだ。ならば君を自由にしてやろう」
まるで粕川に操られたごとくに、見事彼女の思惑通りとなった。今です、陽子さん!一瞬でも陽子さんが自由になれば。そして、逆に入江を捕まえてしまえばいい。彼女の怪力でどこまでうまく立ち回れるか。
粕川は期待し、意識を集中する。さてこの先の未来、どう変わった?私たちはどう動けばいい?
しかしそこで予想外の登場人物が現れた。嘘、まさかほんとに囚われていたなんて。
入江が何のためらいもなく陽子の手と足のかせを外した。今だ!陽子が腕を振りかざしたその時。
「無駄なことはしないほうがいい。彼を、いや彼女のどちらかな?どちらでも構わないが傷つけられたくはないだろう?」
そう言い放つ入江の声の先から、囚われの王妃こと碓井が連れられ姿を現したのだった。
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