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魔女の城5
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だってここは、海外の古城のような作りをしているのだから。
初めてここに来たとき、社はひどく驚いたものだった。とても、個人の所有する邸宅とは思えなかった。
建物全体が大きな円形をしており、その円をちょうど四等分した位置に塔のような、円形の建物が設置されている。なんて名前か忘れてしまったが、似たような作りの城がスペインに実在するらしい。
改修記念パーティーが行われているのは、閉ざされた扉の先の大きなホール。ホテルに改築した今はフロント機能を備えたホールとなっているが、ホテルの顔ともいえるその場所は魔女の帽子のような屋根を頂き、この城のシンボルかのようにそびえたっている。このホールの地下には厨房があるらしく、そこからしきりに会場に食品用のエレベーターを駆使してご馳走が運ばれていた。
その塔から指輪のように連なる回廊には十二の部屋が備え付けられており、そこは客間として改装されている。さらには元からあったのか、それとも後から手を加えたのかは知らないが、ホールの対の位置にはゆったりとした大浴場、その地下にはリネン室とボイラー室。
さらに正面から見て左右にも、やはり円形の大きな塔が二つ。一つはレストラン、もう一つは会議室に改修されているが、はじめこの城を作った人間は、意図的にこのような形にしたのに間違いないだろう。
寿社長はその形がウケるだろうとこの城をホテルに改装したのだが、確かにそれはうまくいくかもしれない。
城の中心、円の真ん中には見事な庭園があるほどだ。今は雪に埋もれてしまって良くわからないが、ぐるりと回された廊下に飾られた絵画と同じ、素晴らしい睡蓮の咲く池を持つ庭園があるという。
さらにはこの不思議な作り。日本でありながら、まるで海外に来たようだ。面白がって泊りに来る人間も多いかもしれない。
なにしろ近隣住民は、とんがり帽子をかぶったこの建物のことを「魔女の城」と呼んでいたのだから。
「君は……まさか、魔女だったのかい?」
そうだ、もしかしたらここに住んでいた一族は恐ろしいやつらだったのではないか。社の頬を冷たい汗が伝う。 こんな怪しい建物など作って。なにか邪教でも崇めていたのではないか。
そう思うと黒ずんだウェディングドレスさえも、魔女のドレスのように見えてきた。きっとこの幽霊は魔女だったから、こんな姿でいつまでもここにいるに違いない。だって改装工事前にちゃんとお祓いはしたはずなのに。でも、魔女に僕のお祓いが効くはずないじゃないか!
『そんなわけないじゃない。魔女だなんて、そんな非科学的なこと』
幽霊にそんなことを言われてしまうと困るが、彼女は怒ったように言った。
『もしアタシが魔女だったら、天井に押しつぶされて死ぬなんてへまやると思う?』
お話の中では、竜巻に飛ばされた家に押しつぶされて死んだ魔女もいるくらいだ。そんな魔女だってあり得そうだけど、と思いつつ、社は途方に暮れてしまった。
とにかく社の、不本意ながら関わりのある神道では太刀打ちが出来そうにない。普段うまい具合に高天原に帰ってくれる人たちはまあ、多神教ゆえに無宗教になりがちな典型的な日本人だったのかもしれない。けれど怪しい宗派にこの幽霊が属しているのだとしたら、社の出番はなかった。
『でも、どうやったら成仏できるかわからないの。きっと、自分がこうなった経緯を知りたいんだと思う』
とはいえ幽霊も好き好んでここに残っているようではなかった。魔女が成仏を希望するというのもなんだかおかしな話だが、ここを去って欲しい社と幽霊の利害は一致した。
初めてここに来たとき、社はひどく驚いたものだった。とても、個人の所有する邸宅とは思えなかった。
建物全体が大きな円形をしており、その円をちょうど四等分した位置に塔のような、円形の建物が設置されている。なんて名前か忘れてしまったが、似たような作りの城がスペインに実在するらしい。
改修記念パーティーが行われているのは、閉ざされた扉の先の大きなホール。ホテルに改築した今はフロント機能を備えたホールとなっているが、ホテルの顔ともいえるその場所は魔女の帽子のような屋根を頂き、この城のシンボルかのようにそびえたっている。このホールの地下には厨房があるらしく、そこからしきりに会場に食品用のエレベーターを駆使してご馳走が運ばれていた。
その塔から指輪のように連なる回廊には十二の部屋が備え付けられており、そこは客間として改装されている。さらには元からあったのか、それとも後から手を加えたのかは知らないが、ホールの対の位置にはゆったりとした大浴場、その地下にはリネン室とボイラー室。
さらに正面から見て左右にも、やはり円形の大きな塔が二つ。一つはレストラン、もう一つは会議室に改修されているが、はじめこの城を作った人間は、意図的にこのような形にしたのに間違いないだろう。
寿社長はその形がウケるだろうとこの城をホテルに改装したのだが、確かにそれはうまくいくかもしれない。
城の中心、円の真ん中には見事な庭園があるほどだ。今は雪に埋もれてしまって良くわからないが、ぐるりと回された廊下に飾られた絵画と同じ、素晴らしい睡蓮の咲く池を持つ庭園があるという。
さらにはこの不思議な作り。日本でありながら、まるで海外に来たようだ。面白がって泊りに来る人間も多いかもしれない。
なにしろ近隣住民は、とんがり帽子をかぶったこの建物のことを「魔女の城」と呼んでいたのだから。
「君は……まさか、魔女だったのかい?」
そうだ、もしかしたらここに住んでいた一族は恐ろしいやつらだったのではないか。社の頬を冷たい汗が伝う。 こんな怪しい建物など作って。なにか邪教でも崇めていたのではないか。
そう思うと黒ずんだウェディングドレスさえも、魔女のドレスのように見えてきた。きっとこの幽霊は魔女だったから、こんな姿でいつまでもここにいるに違いない。だって改装工事前にちゃんとお祓いはしたはずなのに。でも、魔女に僕のお祓いが効くはずないじゃないか!
『そんなわけないじゃない。魔女だなんて、そんな非科学的なこと』
幽霊にそんなことを言われてしまうと困るが、彼女は怒ったように言った。
『もしアタシが魔女だったら、天井に押しつぶされて死ぬなんてへまやると思う?』
お話の中では、竜巻に飛ばされた家に押しつぶされて死んだ魔女もいるくらいだ。そんな魔女だってあり得そうだけど、と思いつつ、社は途方に暮れてしまった。
とにかく社の、不本意ながら関わりのある神道では太刀打ちが出来そうにない。普段うまい具合に高天原に帰ってくれる人たちはまあ、多神教ゆえに無宗教になりがちな典型的な日本人だったのかもしれない。けれど怪しい宗派にこの幽霊が属しているのだとしたら、社の出番はなかった。
『でも、どうやったら成仏できるかわからないの。きっと、自分がこうなった経緯を知りたいんだと思う』
とはいえ幽霊も好き好んでここに残っているようではなかった。魔女が成仏を希望するというのもなんだかおかしな話だが、ここを去って欲しい社と幽霊の利害は一致した。
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