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それから2
しおりを挟むエリザベスは寝巻き姿のままレオンの元へ向かった。エリザベスの姿を見たレオンはギョッとしていたが、そんなことに構っていられなかった。
「レオン、どういうことです。行方不明とは」
「王妃様、落ち着いて聞いてください。馬車はアンドルーズへ向かう途中で急に行方が分からなくなったそうです」
「捜索隊は?何があったの」
「編成中です。直ぐに向かわせます。仔細はまだ届いておりません。何か分かれば知らせます。部屋で待機していてください」
言っている間に部屋に兵士がひとり入ってきた。走ってきたのだろう。息が上がっていた。
「申し上げます。陛下ならびにセシル王子は、アンドルーズではなくダッカン国へ向かわれた模様」
「ダッカンだと?」
レオンが眉を上げる。
アンドルーズとダッカンは全くの別方向だ。そちらに行くとは誰も聞いていなかった。
「確かか」
「おそらくは。ダッカンへ向かう一行を目撃した者がおります。いまそちらに動ける者を向かわせております」
「分かった。下がれ」
兵士が頭を下げて部屋を出る。その日、それ以上の報告は無かった。
エリザベスは一睡もせずに報告を待った。ずっと後悔していた。なぜあの違和感を信じて馬車を止めなかったのか。
教会に行き祈る。それだけしか出来なかった。
報告は無い。エリザベスは居ても立っても居られずレオンに会いに行った。
レオンの部屋から慌ただしく兵士が出ていく。おそらく何か知らせが届いたのだ。エリザベスは小走りで部屋に入った。
「レオン!何か分かったの?」
レオンは他の者たちと話をしていた。エリザベスが入ってきて中断する。
「それが…」
「教えて」
「…ダッカンへ入国するにはいくつかのルートがありますが、一番難しい渓谷を通って向かったようです。そこは船で行くには容易いですが、渓谷沿いの道は馬車で通れるほどの広さはありません。その国境近くの道で、複数の遺体が見つかったそうです」
エリザベスは血の気が引く思いがした。足が震える。
「義姉上、お座りください」
レオンの言葉を受けて従僕が椅子を用意する。エリザベスは力なく座った。
「遺体はどれも斬りつけられていました。襲撃を受けたのでしょう。馬車は見つかっていません」
まだ二人の遺体は見つかっていないと言いたいのだろう。最悪の光景が目に浮かぶ。
「…何故あんな所に…何か、作為を感じるわ…」
それでも力なく疑問を口にすると、レオンは同意した。
「そちらも探っています。義姉上…政務をしますから、お引き取りを。何かあれば知らせます」
「ええ…ごめんなさい」
「こういう時こそ、よくお休みください。酷い顔です」
頷いて見せて、女官に支えられ立ち上がる。部屋ヘ向かうまでの間に、エリザベスは意識を失って倒れた。
一週間経っても、二人は見つからなかった。エリザベスは毎日死んだも同然の毎日を送っていた。
教会で祈りを捧げることしかできない。ひざまずいて、祈り続けた。
女官の呼びかけに、エリザベスは顔を上げる。燭台が灯されていて、気づけばもう夜になっていた。
「王妃様、もうお休みください。体を壊してしまいます」
季節は冬。まともな防寒もしていない体は冷え切っているはずだが、不思議と寒さを感じなかった。
女官に伴われて部屋へ戻る。途中、別の女官が声をかけてきた。
「王妃様、レオン様がお呼びでございます」
女官の案内を受けて、いくつもの部屋を通って奥へたどり着く。奥に行けば行くほど機密度が高まる。エリザベスはとうとう、その知らせが届いたのだと思った。
聞きたくない知らせに、エリザベスは体に力が入らず、倒れそうになる。女官二人の手が伸びて、口々に名を呼ばれる。
「エリザベス様!」
「一度、休まれますか?レオン様には伝えておきますから…」
「…いいえ。お願い、連れてってくれる?」
女官に支えられ、何とか部屋にたどり着く。
部屋で待っていた人物に、エリザベスだけでなく、女官たちも唖然とする。
アーサー・キング、その人が立っていた。
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