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10.クソガキを発見!どうしますか?→…面倒くさい
しおりを挟む神獣は順調に回復して行った。なんと!攻撃魔法の訓練以降は、食料調達のためにしか家を出なかった私が、神獣のために毎日せっせと狩りやら解体をやり、病獣(?)食を研究しまくって食べさせた。人間不信で薄情な私だが、お?ペット相手なら情や母性が沸くのかな?なんて自分の《初めてのペット飼育~看病編~》に燃えてみたが、結局それは《研究職の探求心》だったことが判明。なんで自覚したかって言うと、完治した神獣に「生肉食わせろ」と言われた途端に、全く興味が失せたから。
ええ、私は《神獣の治療》と銘打って、様々な魔物の部位や薬草や薬を試しまくって、その結果を心のレシピに書き込んでました。それが必要なくなったと知った瞬間、被験者のことはどーでもよくなったのだ。
「完治したんだから、自分で勝手に狩ってきなよ」
治って来たら、中年のおっさん声でお喋りしやがるし。可愛さ半減。キューキューピスピス鳴いてたら、まだお世話が続けられてたかも。
『よいのか?この樹海は魔女の樹海…』
「結界内は地権を主張するけど、その外は誰のものでもないわ。お好きにどーぞ?」
『むふ…では、遠慮なく。行って来る』
「あ、ちょっと待って?これからどうするの?霊峰に帰るの?」
『そのつもりはない。戻ったとて我の棲み処は荒らされただろうし、また奴らが来るだろう。ここに定住してよいか?』
「それなら、結界の中でも樹海のどこかでも好きにして。…でも、報復しなくていいの?」
『……面倒だ』
「……そーよねぇ…」
腕組みして、うんうんと頷く。判るわ~。恨みはしたけど、今が平穏ならどうでもよくなっちゃう心境。わざわざ快適な時間を放って、こちらから騒ぎを起こしに行くなんて面倒くさい。
毛先が陽光に照らされてピカピカひかり、しなやかな動きと共に艶々と黒い毛並みが光沢を放っている。ああ、綺麗な生き物だ。と感心し、その復活に全力を尽くした自分の仕事っぷりを自賛。樹々の間に消えて行く黒い獣を見送り、私はまたいつもの引きこもりに戻った。
『お家君』と私と神獣の生活は、心地よい距離感と必要最低限の干渉だけで上手く行っていた。彼は巨大樹の中ほどの太い枝に寝床を造り、大いに気に入ったのか狩り以外はそこで過ごして、時々、溜まった魔石や魔晶石や取れ過ぎた獲物を、玄関脇に置いて行ってくれた。少し強い雨の日は、野草園や畑に面した大き目の庇で覆っているウッドデッキで、ごろ寝している。雨天は少し怠くなるんだってさ。ネコ科は大変だね。
そんなまったりした日々が続いていたある日、最初にそれに気づいたのは神獣だった。
『アズ、樹海の境界に、この国の軍隊が陣を張っているぞ』
私は難しい顔で薬草を積んでは笊に投げ入れていた所で、言われて【索敵】は飛ばした。【地図】と同期している索敵は、目的に応じて色を変えた発光点を表示して、相手の規模と敵か味方かを教えてくれる。
今、【地図】に点灯しているのは敵意を示す赤い点。それが荒野と樹海の境界辺りに、横に長く集中している。
その中に、ひと際大きな赤丸が。
「なんか大きい魔力が――――魔獣??」
『いや、あれはこの国の英雄だ』
「はぁ!?」
さらりと応えた神獣に、私は振り返って思い切り顔を顰めて見せた。
なんだ?その胡散臭い奴は。聖女の次は、英雄様ですか?
「聖女・英雄と来たら、勇者様もいるのかしら?」
『英雄が、以前は勇者だった。邪竜を絶つために、この国が異界から召喚した』
「げっ!ノリで言った冗談だったのに…聖女だけじゃなく、勇者召喚までしてたのかい!」
【地図】を眺めつつ、作業を再開する。赤点集団が、一斉に樹海に進撃を開始した。
何をしに来たんだが分からないけど、こちらに近づいて来るなら全力で叩く!こちらは魔女様だ。
「軍隊の行軍なら、四日から五日ってとこかな?魔物狩りだって言うなら放っておくけど」
『……我を探している様子。英雄が、我が樹海へ逃げ込んだのを見ていた様だ』
「英雄様なら、軍隊引き連れないで単独で来いってんだ!!軟弱者め!」
―――――英雄は強いよ?アズ、油断は禁物だからね?
「お家君は、英雄を知ってるの?」
―――――ずっと前に、家まで来たことはないけど、
―――――何度か樹海内で暴れてるのを見かけたよ。
「何?その反抗期の中学生並みの行動は…」
きっと今、私の顔はチベットスナギツネ化しているだろう。神獣が妙な視線で見返してくる。
『あれは暇を持て余しているのだろう。魔獣程度の討伐に、他国へ行くぐらいだ』
「神獣だからじゃないの?邪竜殺しの勇者なんだし」
『いや、我を討伐に来た軍隊は、我を神獣などと呼んでいなかった。単なる高位魔獣だと思っておったよ』
「昔と比べて、色々ぶっ壊れてるようねー。まぁ、女神が外れてるんだから、仕方ないのか…」
さくさくと必要な薬草を取り入れ、ウッドデッキの端に設置された井戸で薬草を丁寧に水洗いする。小さな笊に種類分けして天日干しする物はデッキの端に、生で使う物は魔法で水気を飛ばして瓶にしまう。農家のおばちゃんがやってる作業と変わりない。
さてと、居間へ戻って警備体制を整え、マントを羽織って外へ。【地図】を見ながら、結界の確認。神獣が巨大樹の枝に棲み処を造った後、結界を大幅に拡大させた。これで、私の許可がない限り、誰も巨大樹にすら近づけないだろう。
「さーて…おお!英雄様が単独先行しているわ。よほど自信があるんだねぇ」
『今は英雄と呼ばれていはするが、勇者であった時と実力に変化はない様だ。アズを除けば、この世で最強の戦士だぞ』
「ねえねえ、英雄様ってどんな奴?」
『性格は知らん。外見は紫紺の髪に、緑や紫や赤が入り混じった不思議な双眼を持ち、我と同じ程の大きな体躯をしておる』
あれ?異界からの召喚転移者って話しよね?紫紺の髪の毛にアレクサンドライトみたいな眼って……地球人じゃないのかしら?
「なんだか、私や聖女様と違う異世界からの転移者みたいね……」
『違うな。アズ達と同じ人族に含まれるだろうが、気がまるで違う』
「気?魔力とは違うの?」
『ああ、気とはその者が育つ際に肉体が纏う気配の様なものだ。気が魔力を包み、体内を循環させる。育ち方や環境によって、気の質も変わる。異界の者は気を見れば分かる』
「便利ねー」
私たちの世界には、魔力はなかった。でも《気》と呼ばれる生体エネルギーの様なものがあったため、神獣の説明は、とてもすんなり理解できた。なんと言っても言ノ葉の国の人ですし。
では、英雄様の気ってどんなものかしら?陰気?陽気?はたまた豪気?
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