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70・カサカサこそこそと黒い虫がわき出した!
しおりを挟む皆様、黒くて艶々テカテカした背中で、部屋の隅や台所なんかにカサカサ音を立てて動き、敵対するといきなりこっちに飛んで来て驚愕させる、あの黒いあんちくしょー!は好きですか?
私は嫌いです。大っっっ嫌いです。見るのも触るのもですが、名前を口にすることすら嫌です。
で、ただ今、この樹海の中をソレに激似な格好の方々が、たぶん私を探して捜索中です。
『ねぇ、あれはマントなの?ローブなの?』
葉の生い茂った枝にとまり、隙間から下を覗き見しながら、少し離れた枝上で身を潜めているルードに念話した。
捜索部隊は真っ黒な装備に身を包み、足音や気配を忍ばせてあちらこちらへと行ったり来たりしている。その装備なんだが、マントと言えばそう見える。でもまるで真っ黒な羽。二枚の花びらみたいな布をフードの下に靡かせ、その下の装備自体も真っ黒だからまるで……の様。
『あれは宙を滑空するための物だ。俺たちの様に枝から枝へ飛び移るためのな』
うわー!そのまんまじゃん!アレとそっくりじゃん!
『魔術師じゃないの?空を飛べないって…』
『術師は後で来る。あいつらは、いわゆる斥候だな』
【看破】を使って正体を調べると、アレ似の連中はパレストの暗部の部隊だった。斥候は10人ほどで、樹海内へ満遍なく散って調べまくっている。木々の間を小走りしては身を隠し、腰を低くしてまた走り。木へ飛びついては枝を渡り、人の気配を探っては地上の仲間へ指で合図。
絶対に忍者だー!とは言わん!あんな羽をつけた奴らを。
展開しておいた【地図】を見て、後続部隊が駐留している樹海の入り口付近へルードを掴んで飛ぶ。こちらは魔術師や魔法使いの一団らしいので、斥候連中より距離を取ってから【迷彩】を張って近づいた。
「―――いまだに見つからんとは、本当にここに存在してるのか!?魔女などもはや死滅したと」
「だが、地下牢に残された魔力の名残は、この樹海特有の気配に――――」
「神獣を捕えておくなど、あってはならぬ所業だったのじゃないか?だから女神様が―――」
斥候の報告待ちらしく、武装しながらも焚火を囲んで雑談している彼らに笑い、その内容の鋭さに感心し、上層部への愚痴に嗤った。
『ルード、どっちを生け捕りにしに行きたい?』
『俺は向こうの連中を』
『では、私はこっちね。一網打尽にしたら、”外”に用意しておいた檻の中へ入れておいて。放り込めば勝手に逃亡不可になるから』
『了解した』
ルードの姿が消えたのを見届け、私はそろりと焚火へと寄って行った。
昼間でも薄暗い樹海の中は、じっとしていると今の時期は肌寒い。焚火に当たりながら斥候が戻って来て、樹海奥の状況報告してくれるのを待っているんだろう。魔術師となれば範囲索敵くらいは展開しているだろうから、魔獣の接近に関しては余裕で迎撃できると思って。
「こんにちはー。今日は少し寒いわねー」
彼らの横に腰を下ろし焚火に手を翳して暖まりながら、そこで【迷彩】を解除しながら声をかけた。
瞬時に飛び退って距離を置こうとするのは、さすがは暗部だわ。魔術師とは言え、いや、魔術師だからこそ接近にことさら注意を向けて対処を身につける訓練をしているんだろう。
「なっ、なんだ!?お前は!!」
「なんだって、あなた方がお探しの地下襲撃犯ですよ?」
緊張高まる場所で、のんびり答えた私に対して、彼らは間髪を入れずに攻撃を開始した。
いくつかの火の矢は僅かな動きで交わし、焚火に飛び込んだ風の刃と火の玉は宙返りして距離を置いた。空気と炎を加えた焚火は当然のこと暴発して、火のついた薪が四方へ飛び散る。
飛んで来た薪を蹴り返し、それを反射的に腕を上げて避けようとした一人に【氷華】をかけて氷の世界へご招待。
私の隙を狙って風の枷を打って来た相手には、障壁で叩き落すとそのまま【暴風(小)】を返して黙らせた。
「こんなところで火を使ったらどうなるか、頭が悪いったらないわ!」
彼らの相手をしながら消火に勤めていた私は、またもや火魔法を使おうとした魔術師を睨み据えた。
その時、樹海の奥から地表を揺るがすほどの爆音が響いた。
ルードが戦っているのだろうと見当がついたが、それを知らない魔術師たちは一瞬それに気を取られ、発動詠唱が疎かになった。
「眠りの蔓よ。樹海に仇名す者を捕えよ 【誘惑の縛り手】」
私の一声で、回りの樹木から緑と紫のまだらな蔓が勢い良く伸びて来て、残った魔術師たちを拘束する。口と手を押さえられては何もできなくなる彼らは、その時点で勝負がついたことを自覚したようだった。後は、自害されては面倒なので眠っていてもらう。
【転移】
纏めて檻の中へ、転移でぽいっとしておいた。
さ、お次は尋問です。
荒野の端っこで、真っ赤な柵に囲まれた正方形の檻の中に、黒い奴らがぎゅーぎゅーに詰まってます。
できれば真っ赤な屋根のお家形にして、床にねばねばでも敷いておけばよかったかな?とも思ったのだけれど、そこから先を想像して即却下した。
「さて、あんた達はあそこへ何をしに来たの?犯人抹殺?逃亡した神獣を確保?」
人が優しく質問しているのに、こいつら全く聞きゃーしねーし!!黒い奴らが無言で檻の格子を掴んで揺すったり叩いたり蹴ったりと、うごうご忙しそう。
「そーですか。回答拒否ですか。分かりました。それなら――――えいっ!」
♪なにがでるかな?なにがでるかな~♪【浮遊】【暴風(中)】
巨大サイコロ(状の檻)がころころ~っとね。いや、ごろんごろっごーんごろ、かな?
ぎゅうぎゅう詰めだから、中であちこち転がってぶつかることは無いし、割と安全かなと考えていた。のだが、逆さになって止まったのを見て、何人か逝ったかな…と青くなった。
檻の中は、阿鼻叫喚の世界勃発。
『…鬼畜』
ルードが、樹海の際から全身の毛を逆立てて、こちらを見ていた。
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