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消えた課題
消えた課題2
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推理が職員室へ鍵を取りに向かうのを見送って、綾と真悟は準備室へと向かう。
すると、準備室の前にすでに一人の人物がいた。
「おはようございます」
朝から涼しい笑顔を浮かべて頭を下げる。
「葵木。おはよう」
「おはようございます。葵木くん。……ずいぶんと早く来ているんですね」
「いいえ。ほんの十分くらい前ですよ」
「十分も!?」
それには真悟も同意見だった。
朝の十分がどれほど大切なものか。
あと五分、あと五分とスヌーズ機能を利用してしまうのはよくあること。
「朝四時に起きて、飼い犬の散歩をしながらジョギングをするのが日課なので」
「俺には真似できんな」
「うん。私も。朝弱いし」
なんて他愛もない会話をしていると、表情を曇らせた推理がやってきた。
「どうかしたの?」
そんな推理に綾が声をかけると、ため息を吐き出してから推理は口を開く。
「準備室の鍵がないの。間違いなく昨日返したはずなんだけど……」
「推理ちゃんの勘違いってことはない?鞄に入っていたり……しない」
「それはないわ。この子たち二人の入部届を出すために、屋敷先生に会う必要があったから。入部届二枚と準備室の鍵は間違いなく手渡したわ」
「えっと、一ついいですか?」
話に割って入ったのは葵木だ。
「いいわよ。なに?」
「屋敷先生っていうのは、僕たちの担任の屋敷先生で合っていますか?」
「あら、あなたたちの担任だったのね。この学校に屋敷って先生は一人しか在籍していないから、間違いないでしょうね」
「あの、雨宮先輩」
たまらずに真悟も口を挟む。
「推理でいいわよ。で、なにかしら?」
「俺たちの担任が屋敷先生だと知らなかったのに屋敷先生に入部届を提出したんですか?」
推理は呆れたように肩を落とし答える。
「真理部の顧問が屋敷先生なのだから、屋敷先生に提出するのは自然の流れでしょう」
「なるほど……って!顧問の先生は屋敷先生なんですが!?」
「そんなに、驚くこともないでしょう」
「たしかに……そうですよね」
教師である以上、その可能性は最初からあったわけだ。驚きはあったけれど、これ以上深掘りするような話でもない。
一瞬だけ、四人の間には沈黙が訪れる。
真悟には廊下のひんやりとした空気が一段と冷え込んだように感じられた。
「……それにしても困ったわ。今日の朝の部活は中止にするしかないかもしれないわね」
昨日のことを真悟は思い出していた。
帰り際、推理は間違いなく鍵を施錠していた。
施錠したあとにしっかりロックされているか、綾が確認しているところも目撃している。
それなのに、葵木は準備室の扉に手を伸ばす。
カラカラ────
音を立てて準備室の扉が開く。
「……開いてましたね」
葵木は振り返ると、少し気まずそうに苦笑いを浮かべる。
しかし、推理は気にする様子もなく、葵木を払いのけると準備室へ入っていく。
それに続いて三人も中へ。
「周りのものには触らないで、侵入者の痕跡が残されているかもしれない」
「えっ、し、侵入者!?」
推理の言葉に綾がたじろぐ。
「安心なさい。隠れる場所なんてないんだから、身の危険はないわ」
推理の言う通り、準備室の中には人が隠れられそうな場所はない。
中央に長机が二つ置かれていて、そこにパイプ椅子が数組。
壁際にガラス張りの棚があるだけ。
「綾。手分けしてなくなっているものがないか確認するのよ。物には手を触れないようにね」
「自分たちも協力します!」
一歩前に出た葵木を推理が制する。
「まず第一、私たちより先にやってきていた葵木くん。あなたも容疑者に含まれているのよ?」
「な、なるほど」
「第二に、もし何かなくなっていたとして、あなたたちにそれがわかるのかしら?」
「……たしかにそうですね」
「二人は大人しく座っていてちょうだい」
「はい。わかりました」
真悟と葵木は、パイプ椅子に腰を下ろして捜査の行方を見守ることにした。
推理と綾は真剣な表情で、ガラス張りの棚の中を確認していく。
そんな時、綾が突然足を止めた。
そして振り返り言ったのだ。
「す、推理ちゃん!ない!課題がなくなっているよ!」
すると、準備室の前にすでに一人の人物がいた。
「おはようございます」
朝から涼しい笑顔を浮かべて頭を下げる。
「葵木。おはよう」
「おはようございます。葵木くん。……ずいぶんと早く来ているんですね」
「いいえ。ほんの十分くらい前ですよ」
「十分も!?」
それには真悟も同意見だった。
朝の十分がどれほど大切なものか。
あと五分、あと五分とスヌーズ機能を利用してしまうのはよくあること。
「朝四時に起きて、飼い犬の散歩をしながらジョギングをするのが日課なので」
「俺には真似できんな」
「うん。私も。朝弱いし」
なんて他愛もない会話をしていると、表情を曇らせた推理がやってきた。
「どうかしたの?」
そんな推理に綾が声をかけると、ため息を吐き出してから推理は口を開く。
「準備室の鍵がないの。間違いなく昨日返したはずなんだけど……」
「推理ちゃんの勘違いってことはない?鞄に入っていたり……しない」
「それはないわ。この子たち二人の入部届を出すために、屋敷先生に会う必要があったから。入部届二枚と準備室の鍵は間違いなく手渡したわ」
「えっと、一ついいですか?」
話に割って入ったのは葵木だ。
「いいわよ。なに?」
「屋敷先生っていうのは、僕たちの担任の屋敷先生で合っていますか?」
「あら、あなたたちの担任だったのね。この学校に屋敷って先生は一人しか在籍していないから、間違いないでしょうね」
「あの、雨宮先輩」
たまらずに真悟も口を挟む。
「推理でいいわよ。で、なにかしら?」
「俺たちの担任が屋敷先生だと知らなかったのに屋敷先生に入部届を提出したんですか?」
推理は呆れたように肩を落とし答える。
「真理部の顧問が屋敷先生なのだから、屋敷先生に提出するのは自然の流れでしょう」
「なるほど……って!顧問の先生は屋敷先生なんですが!?」
「そんなに、驚くこともないでしょう」
「たしかに……そうですよね」
教師である以上、その可能性は最初からあったわけだ。驚きはあったけれど、これ以上深掘りするような話でもない。
一瞬だけ、四人の間には沈黙が訪れる。
真悟には廊下のひんやりとした空気が一段と冷え込んだように感じられた。
「……それにしても困ったわ。今日の朝の部活は中止にするしかないかもしれないわね」
昨日のことを真悟は思い出していた。
帰り際、推理は間違いなく鍵を施錠していた。
施錠したあとにしっかりロックされているか、綾が確認しているところも目撃している。
それなのに、葵木は準備室の扉に手を伸ばす。
カラカラ────
音を立てて準備室の扉が開く。
「……開いてましたね」
葵木は振り返ると、少し気まずそうに苦笑いを浮かべる。
しかし、推理は気にする様子もなく、葵木を払いのけると準備室へ入っていく。
それに続いて三人も中へ。
「周りのものには触らないで、侵入者の痕跡が残されているかもしれない」
「えっ、し、侵入者!?」
推理の言葉に綾がたじろぐ。
「安心なさい。隠れる場所なんてないんだから、身の危険はないわ」
推理の言う通り、準備室の中には人が隠れられそうな場所はない。
中央に長机が二つ置かれていて、そこにパイプ椅子が数組。
壁際にガラス張りの棚があるだけ。
「綾。手分けしてなくなっているものがないか確認するのよ。物には手を触れないようにね」
「自分たちも協力します!」
一歩前に出た葵木を推理が制する。
「まず第一、私たちより先にやってきていた葵木くん。あなたも容疑者に含まれているのよ?」
「な、なるほど」
「第二に、もし何かなくなっていたとして、あなたたちにそれがわかるのかしら?」
「……たしかにそうですね」
「二人は大人しく座っていてちょうだい」
「はい。わかりました」
真悟と葵木は、パイプ椅子に腰を下ろして捜査の行方を見守ることにした。
推理と綾は真剣な表情で、ガラス張りの棚の中を確認していく。
そんな時、綾が突然足を止めた。
そして振り返り言ったのだ。
「す、推理ちゃん!ない!課題がなくなっているよ!」
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