アレハタレドキ [彼は誰時]

えだまめ

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復讐編

ep6 鬱と驚異

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校舎の 正面玄関 は幸いにも開いていたので 
自分達は安易に入ることができた


時刻は既に18時を過ぎており少し暗くなり始めている
視界に頼る人間にとって夜はかなり危険だ
そして生き残るため精神と身体を休めるべきだ


( 少し…… 急ごう、、 )


沈黙する美九を先導しながらとりあえず一階にある
1年1組の教室に向かおうとすると



ドタドタドタドタッ…!



誰かが廊下を走りコチラに迫る音が聞こえた
自分は美九の前に立ち木刀を構えていると


「た、助けてっ………! 誰かぁっ………!!」


どこかで聞いたことのある鼻につく声だが 
疲れているのかすぐに思い出せない 


(…………コイツ、、)


自分達の方へ走ってきた 奴の顔 を見ると
惨めな記憶が呼び覚まされ無性にイライラしてきた
そいつは過去に俺を散々馬鹿にしていた



クラスメイトの森田だった



大きな顔お二重顎が特徴である奴は
肥満になりつつある体型を揺らしながら走ってきた
森田は ハアハア 息を切らしながら


「岩見っ…! 会えて良かった…………
2階にゾ、ゾゾンビ がいるんだよっ………!」


相当こたえたのか顔を真っ青にして伝えてきた
一瞬自分とは関係ないと言い張ろうかと考えたが
背後で固まっている美九にリュックを渡して 


「 保健室で待ってて  」


その一言だけ伝えると 
黙って美九は頷き保健室へと駆け足で向かった
その姿を見送りながら 
自分は自分が歪んでいくのがわかった…


(コイツを一人目の標的にしよう………)


二人で廊下を歩いていくと…
前方に立ちはだかる鉄製のドアに視線が移った
ソレを察したのか森田は


「あの先に確か広場があるんだよ…
別の棟の教室を使ってたからあまり知らないけどよ
先程行ってみたらと本当に怖かったんだぜ……」 


「何故?」


「単に暗いってのもあるけどよ…大きな像があるんだ  
3人の武士が 刀 を上に突き上げてる銅像なんだよ
めちゃめちゃいかついし趣味悪りぃんだよ」


怖いのか単に寒いのかわからないが
奴は震えたままドアの向こうにある像の印象を語る
別に興味がなかったので 


「なるほど
(ヒートではなくミートテックなら着てるのにね)  」


なんてくだらないこと考えながら一言だけ返した
そしてそのドアの前に位置している
階段を上っていく途中で森田は自分に


「そ、その木刀貸せよ」


「…………………
貸したら森田がゾンビを倒すことになるけど? 」


助けを求めてきた癖に傲慢ではないだろうか
その態度と口調にイラつき木刀を握る手に力が入る
しかし彼に勘付かれたくなかった自分は
その一言だけ返すとすぐに森田は黙ってしまった


(2階のゾンビを殺したら…次はお前だ
今のうちに残り短い生を謳歌していればいい……… )


そのまま自分達は 
2階に上がったところで右を見ていると
錆びた鉄の柵があり覗くと手すりは木で出来ていた
下を見ると先程のドアの向こうを睥睨へいげいできた

( なるほど、あの鉄のドアの先には広場があったのか…
案外、始めて見た気がする……)


柵に左手を置いたまま真下を見下ろすと
例の刀を突き上げた武士達の像を確認できた



確かに3人の武士が刀を突き上げている  



ココに柵があるのも確かに頷けるし
落ちたら刀の串刺しになって余裕で死ぬだろう
眺めた後に自分を先頭に二階の廊下を再度歩き出した
後ろの森田を先導するようにしばらく歩いていくと


(あの教室は………確か、、 )


左斜め前のドアに  
視聴覚室と書かれているのに気づいた瞬間に



ドガァアッッ………! 



その視聴覚室のドアが折れ曲がり吹き飛んできた
一瞬ドアに爆弾が仕掛けられたのかと思ったが
すぐにゾンビの姿を確認し木刀を構える


「ひっっ………うわあああああっっ……!!」


森田の 悲鳴 が廊下内に響くなか
自分は一気に距離を詰めて上段から木刀を振り下ろす



バコォオッッ……!



先手でゾンビに木刀で打ち込めたは良いものの
しかし…まるで効いてないようだった


( 奴は…硬いのか、、?
身長も180センチぐらいあるな…… )


自分は素早く3歩退がって森田の横に並び構える 
横目で確認すると森田は恐怖で動けないようだ
ゾンビが森田に向かって走っていった


「あっ……あぁあッ……!!」


パニックになり絶叫する森田を
自分はドアが破壊されできた壁穴へと蹴飛ばす 


「 ぐあッ…… !? 」


弾き飛ばされた彼の 悲鳴 が聞こえる
彼を逃した代わりに自分は接近してきた奴と衝突した



ガツンッ、、!



強い衝撃が響く反射的に木刀で防いだのはいいが
その体躯に自分が耐えれるはずなく吹き飛ばされた


「…………!?!?」


勢いよく壁に打ち付けられ倒れた自分に向かって
奴はまた加速し殴って潰そうとしてきた



ドガァッ!!…………



奴のがっちりした拳が振り下ろされるなか
間一髪で飛んでソレを回避したのはいいものの  
起き上がる際に木刀を離してしまった 


(嫌な流れだ、、不味いな…………… )


しかし現時点で推測していたことが2つある
ゾンビの運動神経にはやはり個体差があること 





奴は突進されて吹き飛んだ自分に
滑りながら 追い討ち を放ってきたことだ
しかしこのゾンビは確かに速く驚異だが………



「もしかして
お前……すぐには止まれないんじゃないのか?…」



心の中で考えていた事を
思わず口に出してしまったことに驚いた


~ ep6完~
    

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