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復讐編
ep7 策と裏切り
しおりを挟む自分は一旦距離を置いた
木刀も手放してしまったが冷静さを保つことを意識し
奴のこの性質を 利用 してやる
そう自分は考えていた
右手でポケットのなかのナイフを掴み身構える
折り畳み式ゆえに開かねばならないのが杞憂だった
しかし何故か高揚感を抱き胸が高まっている
( やっぱり…狂ってるんだ自分…… )
奴は全速力でこっちにまた走ってきた
文字通り 暴走 しながら……
そして自分との距離が3m程になると
いきなり足を止めて滑るようにして 減速 し
右手を自分の方へ突き出してきた
バコッッ!!、、
衝撃と共に壁の一部が破壊され
コンクリの破片がバラバラと落ちていく
間一髪左に飛んで躱せたが
状況は一転せず時間の問題であることは理解していた
(…………コイツ、、学習しているのか…………… )
想定以上に奴とこの一直線の廊下の相性がいい
さらに奴は動きをどんどん修正してきている
長引くと負けてしまう
(何かっ… 何かいい方法はないか?、、)
飛び込んだ場所の付近を目で探ると
蛇口を数本有している手洗い場があることに気づいた
這うようにそこへ向かうと
( コレ…………使える? )
その流しには
水がほぼ満杯に入った バケツ があることに気づく
「やるしかないっ!…」
そう言いながら水入りバケツを片手で取り
後ろを振り向いて廊下に水をかける
そして自分は背後にいるゾンビの方へと向き直り
「殺せるものなら…殺してみろよッッ!……」
全身に鳥肌が立つなかでそう叫ぶと
奴は言葉が通じるのか
また全速力でコチラに向かって走ってきた
自分と先程使った階段の距離は6mもないほどで
ソレを確認したあとそこへ全力で走る
そして階段の側で急停止したあとに振り向いて
( さぁ… 賭けだっ…!! )
先ほど撒いた水で濡れている廊下の上に立った…
前から全速力で来るゾンビとの距離が
2mぐらいになった時に
勢いよく壁に張り付くようにしてしゃがむ
その瞬間…………
全速力で走ってきたゾンビが
水で滑り自分の横を走り抜けるのがわかった
奴は水びたしな廊下の上を滑り続けた
そしてその速度を落とそうにも
落とせずそのまま 錆びた鉄格子 と衝突し
バキッッ!!……
そして勢い余って鉄格子を破壊し
地面に吸い込まれるように落下し視界から消えた
そしてすぐさま
ドチャアッ…………
生々しい音が静かに鳴り響いた
奥で様子を伺ってた森田がすぐさま出て来て
「やった…のか…………!?」
「わからない、、」
そのまま自分達は 鉄格子があった場所 へと
向かって見下ろすと
あのゾンビは 3人の武士の像 の上に落ちて
振り上げた 刀 に串刺しになっていた
あのゾンビがそれ以上動くことはなかった
自分は安心したのか崩れるように座り込んだ
森田は興奮気味に
「見事に刺さってら うっっ…………… 」
そう言って口を左手で押さえたあと
手洗い場まで走り嘔吐した
(まあ無理もないか …………… )
そう思いつつ彼のその姿を見ていた
数分後彼が戻ってくると座って休む自分に
左手を差し伸べてきた
(ゲロ……押さえてたほうの手だよな……… )
彼は綺麗好きなのを自分は知っていたので
先程熱心に手を洗っていたのもわかっている
自分はその手を掴んで立ち上がると彼は
「お前すげえよ…
俺なんか怖くて何もできなかった………
俺、正直お前をバカにしてたけど
今は本当に尊敬してる 」
そう伝えてもう一回手を差し伸べてきた
ソレはいわゆる 握手 というものだった
自分は少し照れていた
前まではクラスのみんなの虐めの標的で
バカにもされ暴力も振るわれてきた自分が
こうして
尊敬されたからだ……
元々酷い扱いを受け散々な思いをしていたし
その眩しい栄冠に浄化されてしまった自分は………
復讐なんて…やめよう……………
これからみんなと仲良くして生き残ってやるッ……
そう強く思い手を握り返した………
うん………ソレで良いんだ………………
なーんて思えるほど
事は単純ではないんだよね
救いようのないクズだよ俺は……………
次の瞬間…
俺はポケットから ナイフ を取り出し開いて
森田の 腹部 を抉るように突き刺していた
うん………やはりソレで良かった……………
~ ep7完 ~
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