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復讐編
ep9 嘘と結成
しおりを挟むその音の方を反射的に見ると…………
辺りは血で紅く染まっていた
そこには瓦礫の破片を首に突き刺し
力尽きた森田が痙攣して横たわっていた
「っっ……!?!?」
そして誰かが階段を上がってくる音が
近づいてきている
( くそっ…!!
コイツ…地獄から逃げやがった………… )
そう思いながら
森田の首に刺さったままの瓦礫を抜いて放り投げ
階段のある背後へ振り向き廊下を見ると…
「よー! 誠!
お前も生き残ってたんだなっ……!!」
少年の明るい声が廊下一帯に響く
生き残る って言葉を使ってることから
事態は理解しているらしい
「多分あのゾンビみたいな奴と闘ってる時に
ここの鉄格子も破壊したんだろ?」
銅像を指差しながら呑気な口調でそう聞いてくる
こいつとは小1の頃から
ずっと一緒で喧嘩もバカもした
自分の数少ない親友の一人、楽斗だった
「楽斗 お前も生きてたんだな……
また会えて嬉しいよ
そこの格子はそのゾンビが壊したんだ 」
余計なことを勘付かれるのは避けたいので
ひとまず適当にされど矛盾ない事を瞬時に答える
「あーなるぼどな 今回も無茶したん…
おい… お前の後ろにあるソレはもしかして
死体、、か?… 」
森田の死体を見たいきなり楽斗の口調が変わる
ドラマやマンガでよくあるソレだ
まぁ… 無理もないけどね
絶対にここで疑われてはならない
自分は脳の全神経を集中させて考えた
そして沈黙を破るようにこう言った
「森田だ、、
あのゾンビと闘っているときに
俺を庇って 致命傷 を負ってしまったんだ
俺が 無力 だった… 」
楽斗はソレには追求しないまま
廊下のひび割れた窓を眺めながら口を開く
「 俺の家は燃えててね
付近に母親は見当たらなかったし、
とりあえず家の中に使えそうなのを持って
ここにくると美九に会った 」
「彼女から二階でお前がゾンビを探して
戦おうとしていると聞いて今に至るわけなんだ
とりあえず、美九と合流しよう」
内心では安堵しながら自分は黙って頷く
そのまま美九の居る一階の保健室へと向かった
保健室に入り一応鍵を閉めると
美九が半なきしながら
「おかえり…無事でよかった、、」
「大丈夫だよ でも…………」
森田の姿がないことに気づいた彼女に
自分は二階に上がってからの 経緯 を話した
もちろん森田の件は伏せたものである
コチラが一連を話し終えると
「二人とも……聞いてほしいんだけど」
今度は美九が話しだした
その内容は自分が二階で闘っている間に
一人の先輩から教えてもらったらしい
その見知らぬ先輩によると
数時間前まで 学校 に皆避難してたのに
校内の安全を確認していた人が
ゾンビに喰われてから
みんな一斉に外に逃げたそうだ
もともと人の数は多くはなかった
そう教えてくれたらしい
小学生の頃から仲の良い3人が集まったのに
空気は依然として重かった
その沈黙を破ったのが、楽斗の言葉だった
「なぁ 二人とも
ここは確かに安全な場所かもしれない 」
「でも……
食料とかこれから先も生き残るために
使う道具とか流石に少ないんじゃないの?」
予想外の彼の質問に
自分と美九は顔を見合わせたあと向き直り
「 確かに全然ないよ
シャンプーとかも欲しいし幸い 水道 は
使えるけど飲む気にはなれないかな、、」
そう美九が応える
今はショックを受けた彼女が話してくれるだけでも
自分にとっては嬉しかったし安心した。
「よしっ! なら決まりだなっ!」
そう楽斗がノリノリで何かを企んでいるので
気になった自分は彼に目線を移しながら
「何か考えあるの?」
そう自分が聞くと
「これは 非常事態 だ
だからこんなこともできるってわけだよ 」
そう言って楽斗は あるもの を自分たちに見せた
実は保健室に入った時から気にはなっていたが
やはりソレは彼の物らしい
「ソレは本物だよね?…… 」
この場面でソレを見せるのだから本物だろうが
敢えて確認のためそう自分は聞くと
「そんなの当たり前だぜぇー!」
そう自信満々に彼の返信が返ってきた
目を丸くした美九の
「そんなのどこにあったの……!?」
といった問いには
「爺ちゃんの私物だったんだ
ちゃんと銃刀法違反に
引っかからないように資格も取ってた」
と淡々とした口調で詳細を答えている
そう楽斗が見せたものは
紛れもなく本物の 刀 だった
1m程の刃を有するソレはこの世界で役立つ…
誰もがそう思うだろう
そしてソレを抜刀して楽斗は続ける
「明日、スーパーマーケットに行こう!」
銀色の光沢を発する刀を見つめながら提案した
また美九がすぐに反応して
「人探しをするの?」
「それもあるけど
他にも目的があるんだろう?」
刀で話が逸れたが前の話から推測した結果、
そう自分が言うと
「おうっ!必要なものを盗みに行くんだよ!
俺らは3人とも陸上部だ
機動力には自信があるだろう?」
楽斗は楽しそうな様子で言った
小学生のような無邪気な笑みを浮かべる彼の側で
自分と美九は苦笑しつつも賛成する
この頃の自分たちは
少し先には絶望的な 悲劇 が待ち受けていることを
知る由もなかった
~ ep9完 ~
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