アレハタレドキ [彼は誰時]

えだまめ

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存命編

ep18 猛攻と犠牲

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図書室にアリシアは居ないようだった
ソレを確認した俺は素早くココからの脱出を図る


「とりあえず……離れないとっ! 」


そう口に出しつつ
疲労の色が見え始めている脚を無理にでも動かし
少しでも彼から遠ざかろうと走った



ズズ…ドゴァッ、、!!!



しかしすぐに鈍い音が鳴った
背後から何かが破壊された音が響いたのだ
出入り口である隠し扉が破壊されたと予測できる



ドッドッドッド………



引き続き後ろから迫りくる足音に背筋が凍る
恐怖心が巣くって思考回路も停止し始めた
そして走り方さえ忘れそうになる



( 死ぬっ……死ぬ死ぬ死ぬっっ…!!  )



怪物となった彼は
壁や本棚を蹴散らしながら追ってきている



「ボォ"ガァ"ア"ア"ッッ……!! 」



怪物となった彼の低い咆哮が鼓膜を揺らす
俺は本棚と本棚の間を突っ走り最短距離で
最初の白い広場に繋がるドアへと一直線に進んだ



ガチャッ!!…



半ばぶつかるようにしてドアへと駆け寄って
震える手を必死に押さえつけてドアノブを捻る
そして最初の広場へと辿り着いた


(………安心してる場合じゃねぇっ…!! )


こうしてる間にも彼は迫ってきてるのだ
再度危機感を抱いた俺はすぐに駆け出した
地上へと繋がる階段との距離が縮まってきた時に



バゴッッ、、!!



俺の後頭部に衝撃が走った
殴られたというより何かが飛んできて命中した
そんな痛みだった


「い"…痛"っ、、!! 」


少し遅れて後頭部に激痛が走った
左手で後頭部を抑えるとヌルっとした感触があり
思わず視線を移すと血で真っ赤に染まっていた


( ぐ……何が飛んできてるん……………!?!? )
 

先程の頭への衝撃で脳震盪を起こしたのか
平衡感覚を失ってしまいその場に倒れ込んでしまう
脚に力を入れようとしても入らない


「 う、嘘……だろ、、、 」


戦うことも逃げることもできない俺へ
これから告げられる未来はたった1つだけで



死………………



無慈悲にも見えるが
今の俺ならもうこれ以上苦しまないですむという
神からの救済だとも捉えられる
この世の万人に等しく存在する終わり………


「  クッソ……… クソォオッッ…!! 」


恐怖に耐えられずに後ろへ振り向くと
一番に血で紅く染まったドア破片が目に入った
10数cmの破片如きで俺は行動不能になったのだ
そう思うと瞬時に怒りと憎しみが溢れ出てくる



ドッドッドッドッド……………



彼の足音に敏感になり心拍数が跳ね上がるなか
足音は間近で止まった


「 やめろっ……やめ"でぐれ"ぇえ…!! 」


激しい吐き気と目眩に襲われるなか 
倒れ込んでいる俺はただ泣き叫びながら懇願し
彼の行動を見ていることしかできなかった
文字通り俺の生殺与奪は彼に握られてるのだ



「人間が…こんな化物に変わるなんて……… 」


もう助からないと生を諦めたはずなのに
どうしようもなく死ぬのが怖いのだ


「 ぁあっ…! 嫌だっ嫌だぁっっ……!! 」


彼は歪で巨大な右腕を振り上げた
ソレは実際に見ていなくても動く影でわかる
その豪腕の先端にある鎌のような鋭利な爪……
刺されたら即死なのは目に見えていた



死にたくない…
死にたくない死にたくない……
死にたくない死にたくない死にたくない………
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたく……………………













ズブジャッッ…………!!












  







鈍くて生々しい音…………
それこそ内臓が抉られるような不快な音だった


( なんで……俺生きて………  )


次の瞬間には考えるより先に身体が動いていた
俺は目を開けてすぐに後ろを見る



「へ………………?? 」



そこには消えたはずのアリシアがいた
無残にも巨大な爪は彼女の腹部を貫通している
アリシアの足元は血溜まりができていた



後ろからでもわかる少女の華奢な身体



彼女はどんな思いで俺を庇ってくれたのだろうか
俺はこの人を裏切ってしまったのに……… 


「ア、アリシア……………………」


俺は血だらけで立ち尽くす彼女の後ろ姿を
ただただその痛々しくも綺麗な後ろ姿を
黙って見ることしかできなかった


~ ep18完 ~
    

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