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存命編
ep21 空腹な伯爵
しおりを挟む神田side
「一体何が……失血か………!? 」
ぐったりと倒れている彼女の額に手を添えると
色白な肌からは想像できないくらい熱い
名前を呼んでも返事がなく呼吸もかなり荒かった
(これまでの知識をフルで活かせば………
なんとかなるのか…いや、全力を尽くさねば…)
幸い鼓動や脈拍は正常なので一安心したあと
とりあえず傷口部分を確認しようとすると
ビキビキッ………!
何かが破裂するような音が
先程の戦闘で貫かれた彼女の腹部から聞こえた
恐る恐る覗き込んでみると………
「 コレはっ……?? 」
貫通されたのを塞ぎ黒くなっていた腹部に
先程のアリシアの腕を覆っていた
白く硬い骨のような物体が無数に生成されていた
「これは暴走してるのか………? 」
アリシア達の情報を得る手段は
最初から今まで1つなのは目に見えている
やはり探るしかないのだあの手帳から
そう思った俺は
手帳を手に取り適当にページをめくっていく…
暴走についての言及は見覚えがあったのだ
そして
G-killer
という文字に目が止まった
すぐにその付近を読み込んでいくことにする
ラシルという人の暴走を止めるために
その G-killer という薬を投与した
そう記載されている
「コレを入手出来たのなら……… 」
なんて少し光が見え始めていると
「う…うぅ、、 」
横になっているアリシアが
震えながら微かに声を発していた
(………アリシア…今助けるからな……
今度は俺がお前の為に行動するんだっ…… )
俺はアリシアから一旦離れて
向かって左の先ほどとはまた違うドアの前に立つ
「アリシアはここで育ったのなら………
必ず G-killer もあるはず、、 」
あいにく手帳には薬の在り処の記載はなく
闇雲に探すしかないようだ
覚悟しながらドアノブに手を当てて回す
ガチャ…
という音と共に
視界に入ってきたのは 手術台の様な
人が横に寝そべれるぐらい大きさの台だった
「ここは、、?? 」
台に近づいて見ると
黒く固まった何かがこびりついていた
いい加減見慣れてきたのでわかる
血液だ
この世界では嫌ほど見てきたソレだ
「くそっ…
今更怖がってたまるかよ、、 」
そう俺は呟いて落ち着こうとする
ここが医療室ならG-killer がある可能性も高い
いきなりの正念場なのかもしれないし
くだらない俺の好き嫌いで起こった数分のロスで
アリシアを助けられなかったら……?
気を引き締め俺はこの辺りを入念に探す
棚、ロッカー、デスクの引き出しなどを中心に
(効率よくスピーディーにかつ丁寧に… )
10数分ほど熱心に探すも未だ見つからない
単純に書類などの紙類が多いのだ
「ここじゃないのか… 」
期待していた分だけ落胆するなか
一旦アリシアが待つ部屋へ戻ることにした
そして広場へ繋がるドアを開けた瞬間
「だ、誰だ お前はっ………!? 」
思わず叫んでしまったのは
アリシアの側に男が立っていたのだ
俺の声に驚いたのかそいつは逃げ出した
「逃すかよ、、!! 」
彼を追ってどうするのか全く考えてないが
足の速さには自信がある俺は
すぐにそいつとの距離を詰めていく
「止まれって言ってんだっ……!! 」
彼が地上へと繋がる階段へ足を踏み込む直前で
俺は飛び込み抱きついて奴を倒した
「離せっ……!触"るなっ……!! 」
めちゃくちゃそいつは暴れる
しかしコチラとしても逃がす訳にはいかない
「やめろ…やめろと言っているっ……!! 」
彼は叫びながら必死にもがく
錯乱した人を相手するのは二度目なこともあり
「おい… お前何があったんだ!?
とりあえず落ち着けよ……!! 」
「俺に…敵意は無いっ…!
むしろ俺も困ってんだよっ……!!」
この人は地下のココへ足を踏み入れたのだ
元々は造船所で今は使われていないココへと…
アリシア達と関わりがある可能性が高い
多少無理にでも情報を得たいのだ
なんとか俺の思いが伝わったのか
彼は抵抗を止めすぐさま俺も彼から離れる
「何があったんだ……?
アンタ…ここの関係者だよな………??」
彼が着ているカーキ色の作業服に見覚えがある
あの手帳の持ち主だった遺体が着ていたのだ
遺体は焼けただれいてわかりにくかったが……
「腹が減った、、 」
目の前の大人が言い放った言葉により
回想から引き戻され俺は彼の顔を覗き込んだ
俺は 驚愕 した
彼は30代くらいの男性に見える
服装は泥だらけだけど作業服を着ているようだ
しかし驚いたのはそこじゃない……
「アンタ……
なんで牙が生えているんだっ…!? 」
なんで今のこの世界って大人が居ないんだろうね
過去に藤村が俺に言った言葉である
ソレを聞いた時は確かに疑問に思っていた
そして今ソレは勘違いだったと杞憂していたのに
その男性がドラキュラ伯爵だったとは………
ゾンビにカッパに吸血鬼…
平穏な日々を送っていた数カ月前の俺なら
そういう都市伝説も楽しめただろうに……………
生き伸びれたのならルーマニアにでも行こう
心のなかでひっそりと誓った
~ ep21完 ~
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