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存命編
ep22 血液の調べ
しおりを挟む「それは牙だよな………? 」
最近よく化け物と遭遇するせいか
彼を見れば見るほど恐怖心が巣くってしまう
だから相手の回答を待つことにすると
「アリシアは成功したようだな、、 」
彼は予想外のことを答える
アリシアの名前を知っていたのも驚いた
急に冷静になったように見えたが
彼は元々こういう性格なのかもしれない
(やはり……ここの関係者なのは間違いない
アリシアの何を知っている…?
そして成功ってなんだよ、、?? )
頭の中で様々な疑問が相次いで浮かんでくる
今すぐにその全てをぶちまけてスッキリしたい
しかしとりあえず俺は
「あんたは
アリシアの知り合いなんだよな??」
そう角度を変えることにすると
「向こうは知らないだろうが
私はよく知っている 」
「成功って………
アリシアを怪物に創り上げることなのか? 」
「その通りだ 」
感情を押し殺してるのかそもそもの声なのか
無機質な声で彼は淡々と答えた
その全てに俺はどうしようもない怒りを感じて
「何がしてえんだよっ……!! 」
怒鳴って両手で胸ぐらを掴んだ
先ほど捕まえた時とは別人のように彼は黙る
ただ目線だけをコチラに向けていた
そして遂に口を開き
「さっきから君ばかりが質問して
私が答え続けている、、 」
「……… だからなんだよ? 」
「今度は君が応える番だろう…?
私がしたように正直にね」
俺はソレを言われて何も言えずに
胸ぐらから手を離すと彼はさらに続けた
「何故この場所を知っている?… 」
そう聞いてきた
彼から微かに威圧的なものを感じ取り
俺は目を逸しながら
「アリシアから教えてもらった 」
「彼女と共に行動しているのか?… 」
「そうだよ 」
まるでロボットと話している気分だ
そんなことを思っていると
「彼女は……このままでは手遅れになる 」
彼は呟くように言った
新手の冗談には聞こえず俺は一瞬耳を疑った
そして今度は俺が
「どういうことだよっ… !? 」
「そのまま死ぬわけではない
しかし 怪物 になってしまう、、 」
「怪物…?怪物だとっ……??
彼女を仕立て上げたお前らだろうがっ…!!
何を今更っ……… 」
耐えきれずに俺が声を荒げるなか
「言葉が適切ではなかった…
理性を失った獣になる……ということだ」
アリシアが暴れている姿を想像してしまった
俺は冷静になるように努めた後に
「……… G-killer の場所を教えてくれ 」
賭けにでた提案を持ちかける
すると彼は一瞬だけ驚きの表情を浮かべた
俺は逆にソレを見て確信を持てた
「俺と取引をしよう
あんたはさっき腹が減ってるって言ったよな? 」
彼は寡黙のまま聞いている
否定こそしていないし肯定もしていないのだ
「あんたには 牙 があった…
もしかしたら俺の血を渡せばいいのか……? 」
食料なら俺のように店などを漁れば
缶詰なら腐るほど手に入ってしまうのだ
まぁ缶詰だから中々腐らないけど
では…何故ソレをしないのか…………
答えは明確で商品として存在していないからだ
さしずめ人の血液や臓器と言った所だろう
完全にダークウェブや闇市の世界なのだ
「察しが良いな、、」
笑みを浮かべ彼はそう答えた
口から鋭い牙が左右に1本ずつハッキリと見えた
彼はそのまま続けて
「取引をしよう…私は争いが嫌いでね
信じてもらう為に私が G-killer の場所を教える
その後に血を分けてくれ 」
逆に彼から提案してきてくれて助かった
全く異論がなかった俺は
「わかった…でも急いで欲しい 」
「重々承知している
しかし何故 G-killer を知っている? 」
「あんたの仲間にあたる人の手帳を拾った
そこから興味を持ったんだ」
「でも今は好奇心だけでは動いていない…
アリシアを助ける為だ 」
そう俺は応えると
彼は納得したのかまた寡黙に戻った
「では…… 着いてきてくれ……… 」
その後俺は彼に先導されて医療室みたいな
大きな手術台がある部屋に戻ってきた
少々不安に思った俺は
「悪いけどさ
俺はここでさっきずっと探してたよ 」
「ならここも探したのか、、? 」
彼がそう言うと同時に施術台へ近寄っていく
俺はその様子を黙って見ていると
バガッ、、!!
彼は右足で手術台を蹴飛ばした
台が大きな音をたてて転がっていくなか
周りとは色が明らかに違う木製の扉が現れる
「例の薬はココにあるんだ
あの台はこれを隠すためのフェイクだ 」
そう彼は言ったあとすぐにその扉を上へ開く
扉が開き奥へと繋がる梯子が見えている
「返ってくるから
少しここで待っていてくれ 」
俺に伝えると彼は下へ降りていった
何もすることなく十数分後に彼は戻ってきた
「長くなって済まなかったな 」
そう言いながら彼は扉を閉じた
そして黙って俺の眼前に注射を差し出した
「取引はちゃんと守る
この薬は怪物の細胞が暴走した時に
打ち込んで抑制を図るものだ」
「わざわざ説明ありがとう
わかってる…俺も守るよ 」
そう言って受け取った後に
俺はポケットからカッターナイフを取り出す
すると彼は俺に背を向けて
何故か見ないようにしてビンを渡した
「見たら理性が保てなくなりそうだ
匂いだけならまだ耐えられるだろうから
今のうちにさっさとビンに血を入れてくれ
量は君に任せる 」
目の前の男性も化物だったことを再認識する
しかし色々と丁寧にしてもらったのだ
多少無理しても相手の要求は答えるのが道理だ
アリシアは俺を助けるために
血だらけになってまで戦ってくれたのだ
なら俺だって………
カッターナイフの持ち手をいじる
キリキリと音を立てて刃が出てきた
それを左手の掌に添えるように当てていく……
ズプリ…ズプリィ、、
少しずつ少しずつ力を入れていく……
何も考えずにカッターの刃を上下に動かし続ける
手から血液がドロドロと流ていく
そして液体が
瓶の壁をつたって少しずつ溜まっていった
(リスカってこんな感じなのかね、、 )
くだらないことを考えながら
ひたすら無言のまま刃を動かし続けた
結構溜まって気分が悪くなってきている
俺はナイフを地面に捨ててビンを覗き込む
生々しい赤色の液体………
これが俺の血…
そんなことを思いながら彼に渡した
彼は目を逸したまま
「礼を言う、、 」
「待てよ…名前ぐらい名乗ってから行ってくれ
次会った時とか不便だよ 」
「……………倫だ 」
それだけ言い残して彼は立ち去っていく
頭がボンヤリし軽く目眩を引き起こしていた
「もっと色々聞いとけば良かったな…
くそ…左手がヒリヒリする、、 」
しかしコレでアリシアを……
ようやくアリシアの暴走を止めれるのだ
得られた達成感は大きかった
フラつきながら俺は彼女の居場所へ向かった
~ ep22完 ~
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