アレハタレドキ [彼は誰時]

えだまめ

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存命編

ep24 正夢は熟れる

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アリシアはこの地下の何処かにいるのか?
それとも外へ出ていったのだろうか………



割と簡単にソレはわかった
根拠は昨日アリシアが倒した怪物の死骸である
既に死骸はなく引きずられたのか
階段へと体液がこびりつき線のようになっている


アリシアは外へ出た可能性が高い………



「今すぐ探しにいかないと、、!! 」



俺はすぐに広場を飛び出して階段を駆け上がる
そして造船所内を駆け回って門の外にでた


(どこに居るんだよ…アリシア! )


まだ朝食さえも取ってないせいで
存分に走れないのが少しムカつく……


「でも 見つけないと、、!! 」


俺はとりあえず辺りを走り続けた
川沿いを走っていく途中で足がフラついた


「くそ…昨日無茶し過ぎたのか 」


足が痙攣を起こしていた
このまま走ると足に負担が掛かってしまう


(でも探さないと…………!)


俺はとりあえず少し歩くことにした
歩きながら頭の中を整理していく


(アリシアが居ないってことは……
連れ去られてない限りは治療には成功し
彼女の暴走は阻止出来たと見るべきだろう… )


ひとまず安心する
あの地下のことを知っているのは
怪物に従事する人のみで拉致された可能性は低い
一般人ならまず場所を知らないはずだ



それに実際あの姿を見たら
最初の俺みたいに逃げ出すのでは……?



「となると、、 」


アリシアはどこに居るんだろうか
結局何を考えようがその疑問に戻ってくる
もう少し考えてみると


「アリシアはあの日以来
俺と会うまでは独りだったと言っていたな…」


それまで居た仲間達は行方不明だと
ソレが本当なら…


「賭けるしかない…
走ったら割とすぐ着く場所だ、、 」


俺は決意して再び走りだす
しばらく走って息が切れてきた頃に
俺はある住宅街に着きそのまま歩いていくと


「探したよ アリシア、、 」


アリシアの側には昨日彼女が殺した怪物の死骸…
彼女はここまで引きずってきたらしい
そうココは…………


「 そう……  」


いつかのようにアリシアは背を向けたまま応える
しかし声色から敵意は感じなかった
俺とアリシアが最初に会った場所
間違いなくここから俺のストーリーは始まった


「助けてくれたのね、、 」


「まぁ お互い様ってやつだよ! 」


気分でも悪いのか少し元気がないように見えた
しかし俺はそのことには触れずに
そこから一時間程かけて死骸を埋めた
作業が終わったあとアリシアが不思議そうに


「どうして死骸を埋めるの? 」


「 アリシアは供養を知らないの? 」


「 クヨウ………? わからないわ 」


「人間は親しい人などが亡くなった時には
残された人達で葬式を執り行って
その死者をいたわるようにしてるんだよ 」

「その人と決別するためにも……ね 」


「 ソウシキ…………?  」


「 まぁ…つまりはご苦労さまでしたって
心からの感謝などを添えて伝えるんだ 」


「 その人は死んでいるのに……? 」


「 その人は死んでいるから先はないけど
残された人達はこれからを生きていくからね
ある意味その人達の為なのかもしれない 」

「その人に伝えたかった言葉とか
心残りや後悔を消し去りたいんじゃないかな」


「 でも…死んだ者には届かないわ……… 」


彼女には少し理解しづらい話だったようで
俺は説明を打ち切ることにした
無理に覚えてもらうこともないからだ


「アリシア…そろそろ戻らない?
手とかかなり汚れてるしお腹空いちゃった」


「わかったわ 」


お互い両手が泥だらけのまま歩きだす
造船所跡地まで30分といったところだろう
しかし事態は急変してしまうのだ




まずこの時に
俺はもっと注視しとくべきだったのだ
昨日見た悪夢を…………
ここからさらに俺のストーリーは加速していく


「一緒に帰ろう アリシア 」


この時の俺は 
そんなことなど知る由もなく…………


「 ええ  」


初めて微笑んだアリシアを見て安心していた
なんならこの時間が続いてほしかった
そして次の瞬間……














ドブッシャ、、!!



吹き出した血液で視界が瞬時に紅く染まった
気配なく現れた痛みに動揺を隠せないまま



「ぐぁっ…!?ぁがががぁ"っ"っ……!!」



激痛で膝から崩れ落ちて悲鳴をあげてしまう
俺の右肩が砕かれる衝撃と共に
切り裂かれるような猛烈な痛みが走ったのだ


( 何が俺の肩を掠めてっっ…………  )


側でアリシアが叫んでいるのを尻目に
右に視線を移していくと…………



見覚えのある大斧が瓦礫の山に突き刺さっていた



~ ep24完 ~

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