アレハタレドキ [彼は誰時]

えだまめ

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餼羊編

ep5 気配

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東真side


少し距離はあるけど目の前で 
誠士郎達は巨大なゾンビ相手に勇敢に挑み続ける
そして遂にゾンビの手に斬撃を与えていた
ゾンビはその場で両手を乱打し暴れ回っている


(俺もこの2人のようになりたい… )


一体いつから
そう思うようになったんだろうか


「これは過去への決別だ……… 」



パァアンッ、、!!



奴に命中したのだろうか…………?
弾丸でも奴の動きに干渉することは不可能なのか
こうなってしまっては仕方のない


「距離を詰めるしかないか…  」


本来なら気が進むはずないのだが 
このままだと誠士郎達に面目が立たない
深呼吸をして走りだそうとすると


「トウマさんっ………!! 」


呼ばれて後ろを見るとリータと美九の姿があった
リータは誠士郎が使ってる河島の刀を
美九は長い槍を持って駆け寄ってくる


「とりあえず間に合って良かった 」


「はいっ! なんとか…
でも急がないといけません………」


目の前で暴れる巨大な怪物を見つめながら
そうリータは答える
その横で息を切らしながら美九は


「東真、、 誠ちゃんはっ……!? 
これらを渡さないと……… 」


「わかった なら俺が渡してくるよ 」


彼女の狙いをだいたい察した俺はそう言うが
美九は首を横に降って


「ううん 
命を賭けてるのは皆一緒だから……」


「なら 危なくなったら離脱してね 」


俺がそう応えた途端に美九とリータは走り出す
まるで恐怖心などないようだった


「えっ… ちょっ、、」


戸惑いながら俺も走りだす
すぐに彼女らの後を追っていくなかで



ドガァッ、、 ドガァッ、、 ドガァ………!!!



無理にでも誠士郎達を潰そうしているのか
地団駄を踏むように暴れていた
無数の瓦礫や木材が宙を舞っているのが見えた


「単純に重いだけにあれは 危険 だ 」


走りながら俺はポケットに手を伸ばして
ピストルを取り両手で握りしめて


ジャキ、、


拳銃のハンマーを引いて発砲した
奴の猛攻のせいで起きた砂煙が視界を遮っている
しかし彼らなら呼応してくれると信じて叫ぶ



「 誠士郎っ………!楽斗っ…………!! 
一旦退がれぇええっ…………!! 」



強張ったせいか声が裏返ってしまう
しかし気にもならなかった


「わかったっ、、!! 」


返事が聞こえてすぐに砂煙のなか2人が現れる
2人とも出血しており到底無傷とは言えなかった
しかし今は何か施せる状況ではない
それは彼らが一番わかっているはずなのだ


「東真どうした… !? 」


誠士郎がこちらに駆け寄りながら訊く
砂煙が消え敵2人が居ないことに気づいた奴が
すぐに俺らに向かって走ってくる
奴との距離は10m程だった


(作戦を説明する時間さえないのかっ……… )


挟み撃ちの形も崩してしまったことにより
逃げながら戦う方法も不可能に近いし
このままでは歩道橋を奴に破壊されてしまう
いや…最悪俺は全滅するかもしれないとさえ考える


( やばいっ………どうすれば、、 )


彼らの前で俺は再び慌て戸惑ってしまう
泣きたくなるくらいに…………

  

「誠ちゃんっ! これをっ………!! 」



しかし、駆けつけてくれた美九がそう叫ぶ
そしてリータと共に各々手に持っていた
長い槍と河島の刀を誠士郎へと投げる  


「 東真…………  ありがとう 」


「 え、、? 」


すぐに理解したのか誠士郎はソレらを掴んで
俺達に迫っている奴に向かって走り出した
俺はその姿を見つつも先程の言葉に困惑するなか


「誠士郎はどうやって闘うつもりだ
真っ正面から向かって勝てるのか……??
それに、、」


俺はつい不安を呟いてしまう
側にいる楽斗は意図が読めたのか黙っている


「誠ちゃんは見てきたんだよ 」


そう美九が言った
俺もただ黙って彼の後ろ姿を見守ることにした
前進する彼と奴の距離が3mを切った時に



彼は左手に持っていた槍を地面に突き刺して
全身のバネを使って飛び跳ねた
俺はその姿を見て…………



「あの槍は棒高跳びの…………… 」



と俺が声を漏らす
ちらりと横を見ると美九は笑っていた
そして彼の身体は空高く舞い上がり



ズバシャッ、、!!



斬撃は奴の胸部辺りを鋭く捉えた
斬られた奴はバランスを崩して仰向けに倒れた


「凄い………… 」


奴が倒れて振動が伝わり地面が揺れ動くなか
目を丸くしたリータの声が漏れでていた


~~~~~~~~~

誠士郎side


(やはり本物の刀は違うな………… )


落下していく感覚に襲われるなか痛感した
そして着地する際に後ろに転がって衝撃を逃す
その勢いのまま後ろに退がり皆の方へ駆け寄る
奴の方へ向き直ると再び起き上がろうとしていた


「誠っ! 逃げるなら今じゃ?…… 」


後ろから楽斗の声が聞こえる
自分はソレを無視して奴を見ていた


さぁ………来るなら来いよッッ……!!


しかし自分の意志とは逆に倒れた奴は立ち上がると
自分達に背を向けてゆっくりと立ち去っていく……
ズゥンと重い足音が響いている


「え、、? 」


東真は思わず声をだしてしまったようだ
背後から楽斗や美九の歓声が聞こえた


(逃げるゾンビが居るなんて……… )



そう思いながらも
後退する奴の姿に少し安心した自分は振り返り


「とりあえず撃退成功かな……? 」


「うおおッ……!! 」


楽斗、東真が歓声をあげて
リータ、美九は向き合って喜んでいた
善戦したと思うし何より達成感が気持ちよかった
散々喜んだあと帰ろうとしたその時



ズドオォンッ、、!!!



「 ………………!?!? 」


音のする方を見ると
先程退いていた巨大なゾンビが前に倒れていく
その衝撃で地面が揺れ動いた



ブジュッッ…………!! 



ゾンビの首辺りから体液が勢い良く飛び散っていた
まるでスプレー缶のように放出している


「なんだ…………!? アイツ…誰かに殺られたのか?」


その様子を目にした楽斗が素早く反応する
巨大なゾンビは足元がどんどんフラついていく
糸が切れた操り人形のように狂った動きをしていた


「奴は一体どうしたんだ………!?!?
倒れる奴の身体から
体液が吹き出してやがるぜッ………!! 」


楽斗が驚きを隠せずにいる
それは東真も美九も同じようだった
その時にリータが少し動揺しているように見えた
何かあったのかとリータに聞こうとしたその時に



ズキィッ、、!!!



「 ぐッッ… なんだッ……!? 」


後頭部を殴られような激しい頭痛が自分を襲った
視界が揺らいで鋭い耳鳴りに襲われてしまう
嫌な予感しかしなかった



そうして自分は彼女と出会うことになる



~ ep5完 ~
    

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