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餼羊編
ep7 血紅のメアリー
しおりを挟む誠士郎side
先ほどの頭痛は警報だったのだ
そう思った根拠はあの人に声を掛けられたからだ
「こんにちは 誠士郎さん 」
脳裏にエルカさんの明るい声が響き
高いところから落ちていくような感覚に襲われる
(結構……慣れてきたな、、 )
なんて思いながら自分は目を閉じた
耳鳴りに誘われるなか息を吸って
「また貴女ですか…
今度は何の用ですか………? 」
聞くと共に視界が広がり
喫茶店の中みたいな場所に自分は辿り着いた
目の前でエルカさんが椅子に座りこちらを見ている
柔な笑みを浮かべながら……
東真と会う前のゾンビに殴り飛ばされた時も
はたまた最初の終焉の日の時も
自分はこの人に導かれて進んできた
正確には彼女の言葉だけど
「姿をはっきり見るのは初めてです……
なんとなく金髪だとは知っていたんですけど… 」
「その様ですね 」
少し戸惑っている自分は視線を逸しそう言うと
薄く笑みを浮かべたまま応えていた
そこで会話が途切れ場が沈黙するなか
「私は エルカ=ウルスラ と言います
色々と訳あってあなた達の国で生まれ育ち
あなた達の母国語を習いました 」
そう続けられた
その時にようやく自分は彼女を直視する
長い金髪前髪と大きい金色の眼が確認できる
とても顔が小さく9等身ほどに見えた
「えっと………?? 」
彼女の外見やら発言やらの情報量が多すぎて
いまいち状況が掴めずにいると
察してくれたのかエルカさんは少し困った様子で
「何故…あなたを呼んだのかというと
彼女のことです」
そうリードしてくれた
彼女が誰を指しているのかぐらいはわかる
しかし何故エルカさんが彼女を知っているのか
文字通り疑問が疑問を呼んでいた
「 彼女のことって…
銀髪で長身の少女のことなのはわかりますが…」
「 えぇ……彼女の名はメアリーと言います
年齢は17歳、頭の回転がとても速い子………
それと………… 」
「 それと………? 」
「 異名は血塗られのメアリーです
まぁ血紅のメアリーとも呼ばれていて
いつも冷笑を浮かべている変わった子です 」
色々と説明されるなか
浮かんでくる様々な疑問は絶えなかったが
自分は1つだけ聞くことにした
「エルカさんと知り合いなんですか… ?
随分その少女について知られているようですし
どういう関係なんですか…?」
「<家族>ですね
血が繋がっているかは不明ですが…… 」
きっぱりと彼女は即答した
やはりいまいち状況が掴めないで黙っていると
エルカさんは続けて
「アリシアと互角以上に戦えます 」
「アリシアとは………?? 」
半分反射的に自分が食いつくと
一瞬のみエルカさんが表情を曇らせたのがわかった
しかしすぐに笑みを浮かべて
「あら…ごめんなさい
どうか今は気にしないで」
少し困ったような口調で
彼女からそう付け加えられたあとに
「…………メアリーはかなりの猛者だから
どうか全力で戦って生き延びて………」
そう告げられた
その姿と慈悲深さが相まって女神のように見える
エルカさんの横顔を眺めていた記憶を最後に
また視界が歪み耳鳴りが鳴り響く………
~~~~~~~~~~
争いごとになることは予測できたので
必ず帰ると約束して美九達には先に戻ってもらった
気がかりなのは楽斗の安否ぐらいだった
「血塗られのメアリー……… 」
そう言って彼女を睨みつける
名乗ってもないのに自身の名前を呼ばれたのだ
驚いたのか彼女な不思議そうに首を傾げて
「何処で私の異名を知ったのです……?
教えてくださいな?♫」
彼女はそう言った途端に駆け出した
10mほどあった距離を一気に詰めてくる
ドゴッッ…………!!
加速したまま胸部狙いの蹴りを入れてきた
なんとか河島の刀で受けるが
気を抜くと刀が両手から飛んでいってしまうほど
鋭い一撃だった
(速くて重いっ………!! )
その圧倒的な衝撃を逃がすためにも
そのまま少し後ろに退がって距離を取り鞘を捨てる
擦れたのか刀を握っている両手がヒリヒリした
しかし退くわけにはいかない
「 喰"らえっ………! 」
スパァンッ、、!!
こちらから仕掛けて彼女に斬りかかるが
今度はしゃがんで避けられてしまう
(クソ、、 やはり速いっ………!! )
距離を取りつつ急いで刀を構えなおすが
既に彼女は目の前まで迫っていた
(瞬間移動かよ……!? )
突然現れたようにも見えてくるほどの速さだった
そして彼女は自分を至近距離からじっと見つめる
まるで小学生が蝶の羽化を見守るようなそんな目で
「あんまり… 舐"めるなッッ………!! 」
彼女を目掛けて刀を地面と水平に薙ぎ払う
メアリーはステップを踏むように右足を軽く上げ
半円を描くように動く刀を足場にして
シュタッ………!!
後方へと高く跳んだ
軽々と空中で1回転して着地する
明らかに人の域を超えたソレにただ戦慄してしまう
(正直に言ってしまうと……
どんなに刀を速く振っても当たる気がしない… )
この時にようやく自分は
とんでもない奴に挑んでしまったことに気づいた
しかし勝たなければ自分に明日はないだろう
幸い奴との距離は十分にある
「なら… あれを試してみようか…………」
俺はそう呟いたあと一歩身を引いて木刀を構える
この木刀は巨大ゾンビ戦で扱ったものだ
構えた瞬間に彼女が視界から消えて…………
ドギャアッ、、!!
その木刀で彼女の右ストレートを受けた
重い衝撃に耐えられず木刀に亀裂が入っていく
狂気の笑みを浮かべたメアリーは
「 なるほどっ…♬
ならこれはどうですかっ………! 」
本当に心の底から楽しんでいる彼女が
左腕を引いていくのを確認した
追撃がくるのは誰でもわかることだろうが
(まずい……木刀が折れるっ……!! )
先ほどの一撃でボロボロになった木刀を捨て
再度刀で斬りかかろうとしたが
( 危ねぇっ……!! )
ビヒュッ、、! ドドギァッ………!!
何か追撃がくると予測できていたので
俺は右に転がってソレを回避する
彼女が振り下ろした拳は道路を深く抉っていた
(でも、、 やはり対応できるっ………!! )
素早く起き上がって彼女の方へ向きなおる
微かな希望が見え始めていたその時
「貴方… つまらないですね……… 」
彼女は吐き捨てるように言った
その表情はまるで玩具に飽きた子供のように
無垢で無慈悲で残酷なものだった
~ ep7完 ~
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