アレハタレドキ [彼は誰時]

えだまめ

文字の大きさ
68 / 89
餼羊編

ep7 血紅のメアリー

しおりを挟む


誠士郎side

先ほどの頭痛は警報だったのだ
そう思った根拠はあの人に声を掛けられたからだ


「こんにちは 誠士郎さん 」


脳裏にエルカさんの明るい声が響き
高いところから落ちていくような感覚に襲われる


(結構……慣れてきたな、、 )


なんて思いながら自分は目を閉じた
耳鳴りに誘われるなか息を吸って

 
「また貴女ですか… 
今度は何の用ですか………? 」  


聞くと共に視界が広がり 
喫茶店の中みたいな場所に自分は辿り着いた 
目の前でエルカさんが椅子に座りこちらを見ている 
柔な笑みを浮かべながら…… 
東真と会う前のゾンビに殴り飛ばされた時も 
はたまた最初の終焉の日の時も 



自分はこの人に導かれて進んできた 
正確には彼女の言葉だけど 



「姿をはっきり見るのは初めてです…… 
なんとなく金髪だとは知っていたんですけど… 」


「その様ですね 」 


少し戸惑っている自分は視線を逸しそう言うと 
薄く笑みを浮かべたまま応えていた
そこで会話が途切れ場が沈黙するなか


「私は エルカ=ウルスラ と言います 
色々と訳あってあなた達の国で生まれ育ち
あなた達の母国語を習いました 」


そう続けられた
その時にようやく自分は彼女を直視する
長い金髪前髪と大きい金色の眼が確認できる
とても顔が小さく9等身ほどに見えた


「えっと………?? 」


彼女の外見やら発言やらの情報量が多すぎて
いまいち状況が掴めずにいると
察してくれたのかエルカさんは少し困った様子で


「何故…あなたを呼んだのかというと 
彼女のことです」


そうリードしてくれた
彼女が誰を指しているのかぐらいはわかる
しかし何故エルカさんが彼女を知っているのか
文字通り疑問が疑問を呼んでいた


「 彼女のことって…
銀髪で長身の少女のことなのはわかりますが…」


「 えぇ……彼女の名はメアリーと言います
年齢は17歳、頭の回転がとても速い子………
それと………… 」


「 それと………? 」


「 異名は血塗られのメアリーです 
まぁ血紅のメアリーとも呼ばれていて
いつも冷笑を浮かべている変わった子です 」 


色々と説明されるなか
浮かんでくる様々な疑問は絶えなかったが
自分は1つだけ聞くことにした


「エルカさんと知り合いなんですか… ?
随分その少女について知られているようですし
どういう関係なんですか…?」


「<家族>ですね
血が繋がっているかは不明ですが…… 」


きっぱりと彼女は即答した
やはりいまいち状況が掴めないで黙っていると
エルカさんは続けて


「アリシアと互角以上に戦えます 」


「アリシアとは………?? 」


半分反射的に自分が食いつくと
一瞬のみエルカさんが表情を曇らせたのがわかった
しかしすぐに笑みを浮かべて


「あら…ごめんなさい 
どうか今は気にしないで」 


少し困ったような口調で
彼女からそう付け加えられたあとに



「…………メアリーはかなりの猛者だから
どうか全力で戦って生き延びて………」



そう告げられた
その姿と慈悲深さが相まって女神のように見える
エルカさんの横顔を眺めていた記憶を最後に 
また視界が歪み耳鳴りが鳴り響く……… 


~~~~~~~~~~


争いごとになることは予測できたので
必ず帰ると約束して美九達には先に戻ってもらった 
気がかりなのは楽斗の安否ぐらいだった



「血塗られのメアリー……… 」



そう言って彼女を睨みつける
名乗ってもないのに自身の名前を呼ばれたのだ
驚いたのか彼女な不思議そうに首を傾げて



「何処で私の異名を知ったのです……?
教えてくださいな?♫」 


彼女はそう言った途端に駆け出した
10mほどあった距離を一気に詰めてくる



ドゴッッ…………!!



加速したまま胸部狙いの蹴りを入れてきた
なんとか河島の刀で受けるが
気を抜くと刀が両手から飛んでいってしまうほど
鋭い一撃だった


(速くて重いっ………!! )


その圧倒的な衝撃を逃がすためにも
そのまま少し後ろに退がって距離を取り鞘を捨てる
擦れたのか刀を握っている両手がヒリヒリした
しかし退くわけにはいかない


「 喰"らえっ………! 」



スパァンッ、、!!



こちらから仕掛けて彼女に斬りかかるが
今度はしゃがんで避けられてしまう


(クソ、、 やはり速いっ………!! )


距離を取りつつ急いで刀を構えなおすが
既に彼女は目の前まで迫っていた


(瞬間移動かよ……!? )


突然現れたようにも見えてくるほどの速さだった
そして彼女は自分を至近距離からじっと見つめる
まるで小学生が蝶の羽化を見守るようなそんな目で


「あんまり… 舐"めるなッッ………!! 」


彼女を目掛けて刀を地面と水平に薙ぎ払う
メアリーはステップを踏むように右足を軽く上げ
半円を描くように動く刀を足場にして

 

シュタッ………!!



後方へと高く跳んだ
軽々と空中で1回転して着地する
明らかに人の域を超えたソレにただ戦慄してしまう


(正直に言ってしまうと……
どんなに刀を速く振っても当たる気がしない… )


この時にようやく自分は
とんでもない奴に挑んでしまったことに気づいた
しかし勝たなければ自分に明日はないだろう
幸い奴との距離は十分にある



「なら… あれを試してみようか…………」



俺はそう呟いたあと一歩身を引いて木刀を構える
この木刀は巨大ゾンビ戦で扱ったものだ
構えた瞬間に彼女が視界から消えて…………



ドギャアッ、、!!



その木刀で彼女の右ストレートを受けた
重い衝撃に耐えられず木刀に亀裂が入っていく
狂気の笑みを浮かべたメアリーは


「 なるほどっ…♬
ならこれはどうですかっ………! 」


本当に心の底から楽しんでいる彼女が
左腕を引いていくのを確認した
追撃がくるのは誰でもわかることだろうが


(まずい……木刀が折れるっ……!! )


先ほどの一撃でボロボロになった木刀を捨て
再度刀で斬りかかろうとしたが


( 危ねぇっ……!!  ) 



ビヒュッ、、! ドドギァッ………!! 


 
何か追撃がくると予測できていたので 
俺は右に転がってソレを回避する  
彼女が振り下ろした拳は道路を深く抉っていた 


(でも、、 やはり対応できるっ………!! )


素早く起き上がって彼女の方へ向きなおる
微かな希望が見え始めていたその時



「貴方… つまらないですね……… 」



彼女は吐き捨てるように言った
その表情はまるで玩具に飽きた子供のように
無垢で無慈悲で残酷なものだった


~ ep7完 ~


しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...