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餼羊編
ep14 統率を図る者
しおりを挟むそこから自分達はさらに一週間ほど休んだ後に
リハビリを兼ねた学校周辺でゾンビ駆除を再開した
どの区域に傀儡者が居るのか調べるためでもある
「身体の調子はどう? 楽斗」
「腫れは引いたけど普通に痛みはあるな……
まぁでも、リータも目覚めたことだし
とりあえず皆無事でよかったよなほんと 」
「うん、そうだね…… 」
二人きりで話すのは久々な気がする
未だに身体に残る痛みに耐えつつ楽斗は刀を構える
しかしそれと裏腹にゾンビ達の姿は全くない
現在、学校の裏門付近でゾンビを探しているのだが
不気味なほどの静けさだけが待ち受けていた
楽斗も全く同じことを思ったのだろう
「ここには常にゾンビが数体彷徨ってたよな
ほぼ毎日、ってか絶対によ…………」
「何か……ありそうだね」
「罠だったりするのか……そのメアリーって奴の… 」
「……傀儡者とゾンビは連携してないはずだよ」
殺気だつ楽斗に自分はなるべく平然と応える
彼からするとメアリーは悪魔のような存在なのだ
彼女を疑いたくなる気持ちもわかるし自分も許せない
美九が"残酷"という言葉を用いた理由も理解した
(メアリーは楽斗に骨折に至らない程度で
最大限の暴力を振るい続けた…つまり……………)
自分が情報を思い出し整理していると
側で楽斗は我慢の限界だったのか
「あの女…外面は色白でエルフのようだったが……
中身はただのシリアルキラーだ………」
「アイツ……俺の身体が壊れないように調整しながら
何度も何度も殴ってきやがった…
少しでも長く遊んで楽しめるようにだ……」
「楽斗………少し落ち着こう」
先程、楽斗が述べたソレが
美九が"残酷"という言葉を用いた理由なのだろう
壊れない程度に気が済むまで痛めつける
ソレを純粋な気持ちで楽しんでいるのだ、狂っている
「あのさ 楽斗 」
「どうした? ……」
しかしここで話したところで事態は好転しない
ならいつまでも負の感情を引きずるのではなく
彼の気を紛らわすためにも消化する場が必要だろう
そのために話の転換をすることにした
そのまま自分は続けて
「ゾンビの数……減ってきてないかな?」
「!…確かに………前はウジャウジャ溢れてたのに
今日は全く見ないな 」
自分が欲しい言葉を的確に挙げてくれるから助かる
これで詭弁や陰謀論でも通りやすくなった
証拠はないが予感していたことを自分は呟く
「もしかしたら…
ゾンビの動きは 統制 されているのかもね……」
「オイオイ………それってよ…
ゾンビのなかに奴らを束ねるリーダー的存在が
現れたってことか……?? 」
「……あくまで可能性の話だけどね 」
自分は余計なことは述べずにそれだけ返した
しかしその仮説を証明するかのように
その日はゾンビと遭遇することもなくそのまま帰った
~~~~~~~~
そしてその3日後
今日は東真と自分がゾンビの駆除担当で
美九/リータ/楽斗が学校防衛を行うの日である
しかしこの日に事態は大きく動くのだ
「誠士郎、楽斗から聞いたよ
最近大人しいゾンビ達は統率されてるんだって?」
今日起こってしまう惨劇を辿っていくと
全てはこの発言から始まっていたのかもしれない
道の終着点で自分は仲間を1人喪ってしまうのである
「今日はよろしく、東真
あくまで可能性の話だってことも楽斗から聞いた?」
「そうだとは聞いてたけど、信憑性はあると思う」
「………………?」
東真の発言は予想外で自分は首を傾げる
傀儡者の存在も疑っていた彼がどうして断言したのか
自分は少し興味深くなり様子を伺うと彼は
「根拠は別にないよ、
強いて言うなら俺もそう思ってたんだ」
「………意外だね、否定するのかと思ってた」
「ははっ、確かに前の俺なら否定してると思う…
でも傀儡者という歪んだ存在が居るこの世界だ
統率を図るゾンビが現れた所で不思議ではない……
ふとそう思ったんだ」
やれやれ、と苦笑しながら彼はそう述べた
その様子を傍らに自分は勘付いた
彼にはまだ何か隠していることがあるはずだと
自分は一歩話を踏み込むことにした
「話はそれで終わり?
何か言いたいこと…本命があるんじゃないの?」
「鋭いね、誠士郎
ここ1週間ほとんどゾンビと遭遇していない」
「……そうだね」
「誠士郎の仮説が正しいと見るなら
奴らは集められ何処か潜んでいると予想すべきだ
何かを待っているかのように………」
「理解できるけど…何が言いたいの…?」
「自分達の活動範囲はせいぜい学校周辺数km…
その範囲外で奴らが密集していたら終わるってこと」
「活動範囲を広げようってこと?
東真が一番言わなそうな感じしてたのに……」
自分がそう応えると彼は苦笑していた
しかし彼による意外な発言はまだ続くようで
「ゾンビが潜んでいるかもしれない場所……
1つだけ心当たりがあるんだよ、誠士郎」
「…………!?」
そこまで話が展開されるとは思っておらず
彼の発言に自分は素で驚いてしまう
そんな自分を傍らに東真は続ける
「俺が言いたかったことはお察しだろうけど
従来の活動範囲に向かおうが成果はあまり見込めない
ならばその場所に行かないか…って話」
「……………1つ聞いても良い?」
「当然、何でもいいよ?」
「仮にゾンビ達を見つけ出したとして
大勢集まった奴らと戦闘になることは確実……
一番戦闘が苦手な東真が何故そんなことを?」
「結構…ハッキリ言うな誠士郎………」
「この程度で折れる半端な精神なら……
ここで話した事は無しにして逃げたほうが良いよ
やるなら覚悟を決めて欲しい…かな」
自分が遊びで来ているわけではないと理解したのか
東真はふぅー、とゆっくり息を吐き出した
そして
「河嶋の家に向かった際に
俺らは河嶋と妹さんの遺体を見つけたよな」
「………そうだね」
「部屋中が血液で黒く固まっていて
遺体の側にトランプが飾ってあったあの異様な光景…
アレが知能を有するゾンビによるものなら………」
「次に奴らが仕掛けてくる前に
コチラが打って出て計画を徹底して潰すべきだ…
敢えてリスクを飲み込んででも……………」
東真がそう言って黙り込むなか自分は感心していた
臆病だった東真が早くもこの世界に適応し始めている
そうなると自分も応えなければならない
しかし
(東真には河嶋兄妹が虐殺されたように映っている…
しかしソレが事実と異なっているのは明らかだ )
河嶋は復讐しに来た自分と殺し合うなか
知能のあるゾンビの襲来により最後は自殺した
未知なる存在に殺されたのは彼の妹のみだ
河嶋関連から話を逸らすためにも
「それで……東真は
何処に奴らが集められて潜んでいると考えたの?」
「狼鳴山」
彼はそう即答する
ソレは数km先にある標高500mほどの山だった
確かに盲点ではあったが自分は少し戸惑う
(正直あまりあの山には近付きたくなかった
位置といい地形といい…
何かと負荷がかかる故に制限が伴うからだ……)
しかし彼独りに押し付け向かわせる訳にはいかない
自分は覚悟を決めて
「わかった…… でも限度はあるからね 」
一言だけ返して同意した
そして横並びで歩きつつ狼鳴山へと向かうが
ここで学校へと引き返すべきだったのだ
この選択は 最悪の事態 を生んでしまう
しかし当時の自分はまだそんなことは知る由もない
気づいたのは仲間を喪った後のことだ
遅い…余りにも遅すぎた…………
~ ep14完 ~
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