アレハタレドキ [彼は誰時]

えだまめ

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餼羊編

ep21 震える手奮わせる希望

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東真side

弾による策略に対抗するため誠士郎と二手に別れた後
追手のゾンビ達と戦うと踏んでいた俺だったが
全くもって遭遇することはなかった


「ここでセイシロウの予測が外れたのか…
いや、弾は俺らが読み違えることすら予測して……」


不安になると周りが見えなくなり
どんどんネガティブな思考になるのは俺の悪い癖だ


(とりあえず落ち着こう…常に冷静に居ないと…… )


しかし幾ら待ち構えたところで
ゾンビ達が現れる気配はなく学校へ戻ることにした
警戒しつつ駆け足で向かうなかで 


「誠士郎たちは無事かな………? 」


十数分走り続けると前方には校舎が見えてきた
そのまま俺は歩道橋を渡り校門へと向かおうとすると


「なんだッッ…アイツ……!?!? 」


左手で大斧を引きずりながら
筋骨隆々とした黒い身体で二足歩行をする怪物 
明らかに俺の知らない奴が校門の方から歩いている 
奴に見つからないように歩道橋で伏せつつ 


(アイツ………俺らの学校を襲ったのか………?)


誠士郎が危惧していたのは間違いなく奴だと察する
そして次の瞬間に俺は驚愕させられる


「嘘だろッ………? 」


その言葉しか出てこなかった
歩道橋の上で膝をついて落胆してる俺の目には



捕らえられている美九が映っていたのである



見間違いであれと何度も何度も確認するが
奴に片手で軽々と持ち上げられているのは美九だった
対抗する様子はないため気絶しているようだ


(誠士郎……間に合わなかったのか…?? )


絶望に暮れた俺は頭を抱え込んで考える
誠士郎が学校へと向かったのは30は前で
奴がを鑑みると


(…誠士郎に限ってそれはないッ……
絶対にミクが攫われるのを阻止しようとする……
だからッ…………… )


奴にと見るべきだ
数十分前に共闘していた彼はもうこの世に居ない
そう考えるだけで身体がすくんでしまう


「学校へと向かった誠士郎…
楽斗…リータも既に殺されてしまったのか……? 」


消えることのない不安を思わず声に出してしまう
鼓動が速くなり呼吸が荒れていくなか


(待て待て待てッ……!! 考えろ……俺ッ! )


何度も自身を抑えつけるように必死に自制する
わかっていることと状況を整理する事にした


まず狼鳴山で遭遇した仮面女は
奴らのボスである弾は俺達の動向を監視している…
確かにそう言っていた
そして誠士郎が予想したように奴は統率を図っていた
2つのことから現時点では



美九を攫っている アイツ が弾であると見るべきだ



次に誠士郎達は生きているのかを推察する
確証なんて何処にもないが希望が欲しいのである
何か手がかりがないかと奴を観察すると
決定的な疑問が浮かんできた


(奴は大斧を獲物として装備している癖に
血液の付着が確認できないのは何故だ………?)


あの2m近くある大斧で叩き潰されたら
大量の返り血をその身に浴び付着するはずだ
奴の肌は炭のように黒いため見えにくいからだろうか
血は黒く固まるため余計に判別し難いのである


(違うッ…奴は返り血は浴びてない
その証拠に奴が歩いた地面にも血痕は見られない…)


そうなると誠士郎達は絞殺されてしまったのか
または一時的に無力化されたのだろう


(しかし……何故奴は美九を攫っているのか……)


結局、その疑問がいつまでも頭にチラついている
仮に捕食するためなら誠士郎達を殺害した後に
その現場で美九を食べても変わらないはずだ
わざわざ手間を掛けて攫わなくても良いと言える



なら何故 美九 は連れていかれたのか



弾は誠士郎に興味を持っていたのは事実だ
我々の情報が弾へと流布され奴に警戒されていた 
そして出鼻を挫くために今日奴は動いたのだろうか


(情報と状況が複雑だったために気づかなかったが
そもそも攫うという行為の目的は限られてくる……
例えば…………)


美九を人質にするために連れ去られている…とか
劍の仇誠士郎の行動を制限/干渉するために
敢えて誘拐というリスクのある行動を取ったのなら


「誠士郎が生きている可能性も0じゃない…… 」


まだ諦める段階ではないと気づけた俺は
乱れる呼吸を整えながらゆっくりと歩き始める



誠士郎達が死んでいようが生きていようが
俺が今からすべきことは始めから決まっているのだ



偶然蚊帳の外だった俺だからこそ
この状況にあるからこそできるソレを実行する


(弾ッ…お前は下手を打ったことに気づいていない……
お前は誠士郎に気を取られ過ぎたんだよッ……!)


当時の俺はそう信じて不安を傍らに行動に移したが
この時の俺が動いても動かなくても
は既に確定していたらしい
この世界に君臨する神にアイツは嫌われてたんだと
今でも自身に言い聞かせるしかなかった


~ ep21完 ~

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