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餼羊編
ep23 目的地
しおりを挟む誠士郎side
皆の士気は上がっているからいいものの
別れたあと未だ帰還していない東真が懸念だった
時刻は18時を過ぎているため余り余裕はない
「とりあえず…現時点での障壁はこの4つだね」
作戦会議の前段階として状況の再確認をしていた
自分の発言に楽斗とリータは頷いている
ここで挙げられた4つの障壁は以下の通りである
1.東真の安否確認
2.美九の居場所を特定すること
3.弾の攻略方法
4.美九を奪還した後の行動
上記の課題に論点を絞って会議を進める必要がある
③は任された自分が担うとして②は勿論
①も作戦に大きく関わってくるので早めに対応したい
自分と同じことを考えていたのか楽斗は
「……東真が持っている拳銃を使えるなら
戦術の幅がかなり広がると思うんだが、アイツは?」
「……まだ帰ってきてないかな
弾攻略には東真の協力も得たい所なんだけどね」
「早速ヤバイじゃねぇかよ、誠」
こうしてる間にも刻一刻と時間は過ぎていく
完全に暗くなる前に動きたい所だと焦れるなか自分は
「楽斗、怪我の詳細を教えて欲しい
鎖骨の痛み以外で何かある?作戦立案の参考にする」
「言うとキリないけど…奴に蹴られた腹部は腫れてる
大斧の一撃を受けた際に手首も痛めたわ……
誠はどうなんだ?麻痺は解けてるみたいだけどよ」
「なるほどね…麻痺は奴が言ってた通り短時間だった
投げナイフの傷も浅かったけど……」
「けど?…」
「蹴り2発入れられて肋骨が一本折れてる
体力も消耗してるし余り長くは戦えないね」
「昼間からゾンビの大軍と殺りあってたんだろ?
今から動こうとするその気力がヤベぇな」
「美九を救うためだから…無茶ぐらいしたい」
消息不明の東真が帰還する気配は全くない
自分はその言葉を最後に立ち上がり
「埒が明かない……楽斗、先に準備をしよう」
「わかったけどよ、何処かに行くのか?」
足早に保健室から出ようとする自分に彼は問う
ソレに応えようとしつつ廊下へ一歩踏み出した瞬間
「………やっぱり無事だった…誠士郎、楽斗ッ」
走って帰還したのか息切れした様子で東真は言った
肩を大きく上下に揺らし荒く呼吸をしている
「「東真ッッ………!?」」
驚愕した自分と楽斗は同時に声を上げる
思いがけない彼の帰還に不意を突かれたはしたが
どうであれ彼の無事がわかって安心した
「お前……今まで何してッッ……」
「外傷はないようだけど……追手はどうだった?」
東真の服装に汚れは確認できず綺麗なままだった
自分は彼に水の入ったペットボトルを渡しつつ
東真に吠えかかる楽斗を静止してそう聞くと
「………追手は来なかったよ」
「…!?」
「俺達を監視してるゾンビも見当たらなかったし
多分、俺ではなく誠士郎をマークしてたんだと思う」
「……………………」
彼のその言葉を聞いて自分は沈黙する
弾にとって劍の仇以外は興味がないのだろうか
率直にそう思ったが考えても仕方がないので
「……東真、あのさ……………」
「わかってる…美九が弾に攫われたんだよな……」
「「え……?? 」」
もう一度自分と楽斗は同時に声を上げる
最近東真が聡いとは思っていたがこれ程だったとは
まるでSF作品でよくあるタイムリーパーのようだ
驚きを隠せないまま自分は
「………何で東真が知ってるの?
全てを見てきたみたいな、そういう風に感じる」
「あぁ……実際に見たよ」
「「えっ……??」」
自分と楽斗の言動がテンプレ化するなかで
東真はペットボトルを開け水を喉に流し込んでいる
500mlの約半分を一気に飲み干した所で口を離し
「追手が来ないと気づいて学校へ向かうなか
美九が連れ去られる様子を見たんだよ、実際に…」
「今までは何処で何を………??」
「もう少し話を聞いてくれよ
誠士郎が奴に敗れたことは明白だったから
その時に俺が奴に挑んでも勝てないって判断した
だから…俺がすべき事は最初から決まってたよ」
「え、まさか……………」
自分と東真が話を進めていくなかで
東真が次に何を言うのかを理解したのか楽斗は笑う
それを傍らに東真ははっきりと断言した
「あぁ……奴を尾行してきたんだ」
彼の有能さに鳥肌が立つなかで
東真は淡々と話し続ける
「2m近くある大斧を引きずっている上に
人を抱えて歩いているんだ、追えないはずないよ
でも……………」
「……………?」
「美九以外の3人、誠士郎/楽斗/リータの生死だけが
お前らの生死だけがッ…気がかりだったッ……!」
安堵したのか涙を堪えながら東真は右手で両目を覆う
あの状況下でよく尾行を決意できたと
心から思った自分と楽斗は彼を存分に褒めて励ます
東真の思い切った賭けが上手く噛み合ったことで
1.東真の安否確認 →✔
2.美九の居場所を特定すること →✔
3.弾の攻略方法
4.美九を奪還した後の行動
上記の①と②は完全に攻略することができた
残るは③と④のみである
美九を捜索する時間も全て短縮できるため
彼女の奪還計画にいよいよ現実味が帯びてくる
弾によって大破した床に目線を向けていた東真は
「そういえばリータは?……」
「リータには一足先に準備してもらってる
自分達もそろそろ行こうか、二階の理科室へ 」
「そういう所、誠はマジで抜け目ないよな
東真が帰還するタイミングに合わせれるように
既にリータに協力してもらってたのか」
東真は彼女の生存も知り少し安堵しているようだ
保健室を出たあと階段を上がっていくなかで
楽斗は東真に質問を投げる
「それで、奴は何処に向かったんだ?…」
当然"奴"とはゾンビ共の長である弾を表している
自分は彼らの様子を見守るなかで東真の返答を待つ
肺に残る酸素を全て吐き出し大きく息を吸った彼は
「この学校から数km離れた教会だよ」
大斧を振り回せる程度の広さを有す建物だろうとは
既に予想していたため特に自分は驚かなかった
それに獲物を扱い易くなるのはコチラも同じである
胸裏にはかつてのように"復讐の炎"が灯っていた
~ ep23完 ~
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