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餼羊編
ep25 反撃の狼煙
しおりを挟む誠士郎side
(コイツ…2日の猶予は虚偽だったのかッ……
何処までも腐った野郎だッ……!!)
誰が耐えられるだろうか?…
誰がこの惨劇を見せられて耐えられるだろうか
何としても奴は自分の手で殺さなければならない
「……下衆がッッ………!! 」
いきなり自分は大型ナイフを構えて走り出す
考えていた戦術、戦略すら既にどうでもよかった
「オイ待てッッ! 誠ッ………!! 」
楽斗から忠告を背に受けるまま
礼拝堂の入口から一直線へ駆け抜け奴へと接近し
そのまま勢いを乗せナイフを上から振り下ろす
ガキィッ………!!
両手持ちの全力でナイフを振りかぶったが
奴は持っているレンチでその一撃を受け止めている
至近距離でお互いが睨むなか自分は叫ぶ
「自分を……舐めるなッ……… !! 」
自分は添えていた左手をナイフから素早く手放し
そのままベルトに付けた鞘から刀を抜いて一閃する
ズバァッ………!!
確かに奴の左脇腹に斬撃は入りはしたが
左腕のみによる刀の一撃では威力が低かったのか
奴の身体に食い込み思うように斬れない
「所詮…ソノ程度カ………? 」
浅いとはいえ刀による一撃を喰らったはずだが
奴は余裕を見せつけるような口調でそう言う
そして迫る自分を押す戻すように左脚で踏み込み
「ッッ………!?」
ドゴァッ……!!
次の瞬間に奴は太い右脚を素早く振り上げた
踏み込みの時点で予測はしていたため
後ろに軽く跳んで衝撃を受け流すが多少の痛みは走る
「ぐッッ………! 」
数m距離を取ったこの隙に
左手に握る刀を捨てて大型ナイフを奴へ向ける
しかしここで自分は読み違えてしまう
「鬱陶シイッ………!! 」
そう叫ぶと共に奴から自分へと接近して来たのだ
頭に血が上って思考が雑になっていたせいか
自分が一方的に仕掛ける側だと勘違いしていたのか
待たずして攻めてきた奴に意表を突かれてしまう
(やばいッッ…反応が遅れた……… )
手を伸ばせば届く距離まで奴が迫っている
攻撃にしろ防御に転じるにしろ
(間に合わッッ………… )
パァアンッッ……!!
背後から銃声が聞こえ警戒したのか
攻撃から転じてすぐに奴は後ろへ退がり距離を保つ
横目で確認すると東真は拳銃を構えたまま
「 一人で突っ走るなッ……!! 」
後ろから東真の怒鳴り声が礼拝堂に響く
先程助けられただけにその叱咤は説得力を有しており
自らが犯していた愚行を思い知らされる
「誠、ここで奴の挑発に乗って
阿保みたいに単騎駆けするのは
まんまと踊らされてるぜ、前みたいに…………」
楽斗からも諭すように注意を受けた
冷静になったことで生じてくる自責の念に駆られる
(踏ん張りどころか………… )
付近に愛用する大斧を隠していたようで
両手で掴み盾のようにしてソレを構えている
おそらく東真の拳銃を警戒している動きだった
「ありがとう… 東真、楽斗」
怒りに身を任せていた自分を制止してくれた二人へ
謝意を述べつつ自分は冷静さを保つことを意識する
そうしてひと呼吸置いたあとに
「二人とも、ここで決めるぞッ……!!」
奴を見据えたまま自分は合図をだす
「任せろ 」
瞬時にそう応えた楽斗は木刀を天井へ投げる
荒々しく回転しながら飛んでいくソレは
バリンッ……ガッシャアンッ…………!!
天井の中央でぶら下がるシャンデリアに命中した
点滅するなか落下したソレは粉々に破壊され
ガラスの割れる音が響くと同時に辺りが暗くなった
作戦の第一段階が上手くいったことを確認しつつ叫ぶ
「行くぞ…弾ッ……!! 」
「照明 ヲ 落トシタ グライ デ
調子ニ 乗ルナァアッ……!! 」
この暗闇の中でも奴の位置は把握している
あとは仲間を信じて戦うのみだ
~~~~~~~~~~
時間軸は少し戻り学校での準備を終えたあと
両腕を負傷しているリータには学校で待っててもらい
美九が連れ去られた教会へと向かっている時のこと
「誠~ でも弾を倒す方法なんて本当にあるのか? 」
楽斗がそう聞いてきた
東真も興味があるようで側から顔を覗かせている
「うーん、倒すんじゃなくて
弾を凌駕できる時間が欲しいんだよね 」
「弾を凌駕……… ? 」
さっそくその東真が鸚鵡返しをしてきたので
自分は詳細を説明することにした
「主任務はあくまでも 美九の奪還 だから
美九の拘束を解いて逃す時間を作りさえすれば
今回の場合、勝ちだと思う 」
「確かにそうだけどよ
つまり本気で奴と殺し合うつもりはないのか? 」
東真にそう説明する自分の横で
楽斗が相槌を打ったあとに質問を投げかける
「ううん?
ただ 優先順位 が違うだけだよ 」
「弾の殺害が成功した時点で奪還もするとは限らない
奴の手下が待ち構えている可能性も十分ある
だったら…美九の奪還と弾の殺害は分けるべきだ
手下と戦うことを想定したうえで体力は残したいし
自分達はただでさえ負傷してるから
弾との交戦が長引く程不利になるのは明らかだね」
「なるほど…だから主任務か
戦闘中はただでさえパニックに陥りやすいから
目的をはっきりさせておく事は重要だよな
…今度こそ伏兵が来るのか……確かにあり得るぜ」
彼も彼で思い共感する所が有ったのだろう
少し間を取ったあとに楽斗は納得し補足してくれた
彼が述べたことに心の中で自分も共感していると
「誠士郎、その肝心な作戦は………? 」
不安そうな表情を浮かべる東真が本題に詰め寄る
明かすならここか、と覚悟を決めた自分は応えた
「自分と楽斗の負傷は激しく動きに制限がある…
だから…自分が考えた作戦は………」
~~~~~~~~~~~
誠士郎side
「東真ッ………!! 」
暗闇のなかで自分は彼の名前を呼んだ
合図でもありソレは弾に自らの場所を知らせるためだ
「おらよッ………!! 」
そう東真の声が聞こえた瞬間に
暗闇から鋭く煌めいた閃光が生じ弾の顔に刺さる
ピィカッ………!!
「グガッ………!! 」
弾は目を抑えて微かに仰け反った
その強い光を背に受けながら自分は奴へと再度迫る
照明を落として破壊したのは
一度辺りを暗闇で包んだあとに閃光を放つためである
(チャンスは一度きりッ……!! )
途中で先程捨てた刀を拾って走り出す
そして奴の大斧が反射していた光を頼りに
奴の位置と構えは正確に把握できた
「フザケルナッ……!! 」
奴は声を荒げ暴れている
寄せ付けないように左手を振り回しているのだろうが
低い姿勢でソレを下から潜るように躱しつつ
「お前はゾンビの癖に…視覚に頼りすぎなんだよ
いきなり閃光なんて予想外だろ……?」
刀を構えつつ大きく左足で踏み込み
暗黒のなか上段から半円を描くように刀を振り下ろす
ズバジャアッ………!!
刀から確かな手応えが伝わってくるなか
奴が振り回していた左腕を切り落としたことを悟る
ボトッ…………
足元付近から奴の左腕が地面を転がる音が聴こえ
腕から吹き出る体液が顔にかかるなか自分は嗤った
そして怒鳴り声と共に奴の咆哮が礼拝堂に響き
「貴様"ラ"ァ"ッ………… !! 」
奴は右手に持っていた大斧を垂直に振り下ろす……
ここまでの流れは完全に予測していたことだ
自分は攻撃から転じすぐに左へと飛び込む
ドギャアッ……!!
「その技はもう何度も見たッ………!!」
大斧が床へと叩きつけられ重い音が響くなかで
再度、奴へ居場所をバラすために自分は声をあげる
(………チャンスだッ………!! )
奴は反射的に振り下ろしたため手加減はしていない
だから今、大斧は床に深く食い込んでいるので
次の攻撃までに大きな隙が生じているはずだ
自分は大型ナイフを構えて前進する
「馬鹿餓鬼メッ……!
コレグライ 片手デモ 簡単ニ 抜ケルワッ…!! 」
近寄ってくる足跡からこちらの思考を読まれたようで
右腕のみで大斧を抜かんと奴は力を入れる
しかし既に彼の間合いのなかだ
「一手遅いぜ?…ゾンビ共の大将さんよ 」
ガキィッ………!!
床に食い込んでいる大斧へ楽斗が刀を振り下ろし
斧をさらに床へめり込むように打ち付けたのだ
暗闇から響く金属音と彼の愉悦した声から
自分は狙い通りにいったことを確信する
「両手ならまだしも
片手では上から生じるこの衝撃に
歯向かうことはできねぇよな………? 」
楽斗は嗤いながらそう言っている
しかも残された片腕を斧を抜くのに使っている限り
体重が大きく移動する蹴り技も発動できない
つまり隻腕の弾が暗闇のなかで斧に執着している間
奴が楽斗に攻撃する術は存在しないのである
何故、途中2度ほど奴に声をあげ居場所を教えたのか
ソレは忍び寄る楽斗に気づかせないためだ
自分は大型ナイフを逆手に持ち変え構える
(楽斗が作ってくれたこの時間はほんの一瞬だ……
計っても2秒にさえ満たないほどだろうか )
しかしこの一瞬が我々にとって
「反撃の狼煙となるッ……!! 」
自分は奴の胸部にナイフを深く突き刺して
右へ身体を捻ってソレを薙ぎ払う
スパァアンッ……!!
奴の胸部に鋭い一閃が入るなか
奴の体液が豪雨のように身体へ降りかかる
腕を切り落とした際とは比べ物にならないほどだった
~ ep25完 ~
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