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餼羊編
ep26 悪魔の目覚め
しおりを挟む東真side
俺ら3人が理科室へ入った時に
ソレを見たリータがすぐにコチラに駆け寄ってきた
「トウマさん……良かったご無事で……!」
「リータこそ、良かった……… 」
俺らは学校を離れる前に二階にある理科室へ行き
既にリータが見つけていたマグネシウムを手に取る
見たところただの薄い金属だと俺は困惑していた
「誠士郎はマグネシウムを探してたんだよな?
この鉄くずみたいなの何に使う気なんだ? 」
痛む鎖骨辺りを抑えながら楽斗が俺に聞いてきた
もう一度俺はその平べったい金属を見つめながら
「うーん、、 わからないな」
「説明するより先に見せるよ
東真に引き受けてもらいたいことなんだ 」
誠士郎は横から口を挟むなかカッターナイフで
平べったいMgの棒の端を切断していた
その3cmほどのソレを指で摘みライターの火を添えた
リータと俺と楽斗がソレを見守るなかで
ピィカァッ………!!
「うわッ……… 眩しッ………! 」
他の二人も俺と似た反応をしていた
ライターの火がマグネシウムへ乗り移った瞬間に
物凄い閃光が理科室へ放たれたのである
訳もわからず閃光を浴びた俺らを代弁するように
楽斗は興奮した様子で
「そうか…目くらましかッ……! 」
「うん…うまく利用して奴を怯ませたいな…… 」
誠士郎はカッターの刃を戻しながらそう応える
Mgが燃焼し酸素と結びつくことで酸化Mgとなる
その際に生じる猛烈な光に誠士郎は目をつけたのだ
~~~~~~~~~
(閃光での目眩しから誠士郎が片腕を切り落とす
その後に予定通り弾が反射的に振り下ろした斧を
忍び寄った楽斗が上段からの一撃で固定し隙をつくる
そして決めの至近距離からの横一閃も入ったッ…!)
俺の役目はマグネシウムの束に着火したあと
正面で戦っている誠士郎達を避けるように
左の壁付近の通路から回り込んで美九の所へ駆け寄り
彼女を解放し逃げることだった
「美九……大丈夫か…………!? 」
「東真……皆来てくれたんだね……ありがとう…」
やはり疲れているのか美九の声はか細く
さらに彼女の二の腕から出血が確認された
背後から誠志郎達が弾と交戦している音が聞こえ
無数に鳴っているその重い衝撃音は俺を焦らせた
「待ってろッ……今助ける 」
脚を縛っているロープをナイフで素早く切断する
次にリュックからタオルを取り出し二の腕を圧迫した
(クソッ………この金具…外れないのかッ……!? )
彼女の両脚は自由になったものの
両腕には鉄製の手錠が嵌められていた
「とりあえず逃げようッ………」
背後で戦っている弾に気づかれないように小声で述べ
彼女の身体を支えながら駆け足で扉へと向かう
(弾の足止めは誠士郎と楽斗に任せたッ……!!)
美九を先導しながら入口を跨ぐ際に心に念じた
その代わりに俺は美九を命がけで逃がすから
間違っても二人とも死ぬなよ、と
~~~~~~~~~
誠士郎side
「光が………まぁもう関係ないか………」
月光が礼拝堂の窓から差し込み辺りを照らし始めた
背後で東真が無事に美九の拘束を解き
順調に礼拝堂の出入口へ彼女を誘導している
(今のところ…
コチラの作戦は上手くいっている、、 )
その様子を横目に見ながら
自分は目の前で立ち尽くす 弾 を睨みつける
傍らに立っている楽斗も油断なく刀を構えていた
「グ… ググガッッ……! 」
片腕を斬り落とされたことが響いているのか
奴は苦しそうに左脚を引きずりながら 後退 している
しかし出入口は我々の背後にあるもの一つのみ
奴を殺す機会は逃さない、そう強く決意しつつ
「お前…
今までどれだけの人を殺してきたんだ?… 」
自分がそう聞くも弾は応えない
誰が見ても場が膠着状態に陥りつつあることがわかる
片腕を斬り落とし胸部に深い 一閃 を叩き込んだのだ
かなりの深手を奴に負わせたはずである
(しかし急かしてはいけない……
楽斗と東真に話した通り…主任務は美九の奪還だ )
目の前で息を荒げている弾に今トドメを指すべきか
既にここを脱出した美九達の安否がわからないため
あまり時間をかけたくないのが正直な所である
しかし元凶であるコイツを生かしておくのも危険だ
自分は黙って大型ナイフを構えたまま奴へと歩み寄る
「誠ッ………東真の 援護 に回ろうぜ
弾の手下共に襲撃されているかもしれない……」
「!……楽斗…………」
側で刀を構えていた楽斗から提案を受ける
自分が驚きの表情を浮かべていることに気づいたのか
弾を警戒した様子で彼はそのまま続けた
「作戦の本質を見失うなッ……
お前が言っていたように主任務は美九の奪還だ
ソレが成功したかもわからない状態で無理すんなよ」
「……………」
楽斗は自分と全く同じことを考えていたようだ
しかしまだ彼は話足りない所があるようで
「それにコイツ…何処か消極的に感じるぜ
まるで時間を稼いでいるような印象を受ける……
俺らの体力も限界が近いなか殺し合うのは危険だ
……悔しいが奴の手の内がわからない以上
今はコイツとの戦闘は避けるべきだ」
「なるほど………わかった 」
仮に弾が本当に時間稼ぎをしているのなら
奴は何かを待っているということになる
楽斗の言うとおり行動が読めない以上は不利だ
リスクが絡む奴と関わるより
今すぐにでも美九達のもとへ駆けつけた方が良い
(隴を得て蜀を望む………か…………… )
いや自分は隴さえも得ていない状況で蜀を望んでいた
刀は構えたまま奴を警戒しつつ
自分達はすぐさま後ずさり奴から離れることにする
「頼むから…そのまま動いてくれるなよッ………! 」
楽斗がそう呟いた時には既に奴との距離は10mあり
この礼拝堂の出入口まで数m程だった
そうして入り口を抜けようとしたその瞬間に
「ヴェ"エ"エ"エ"エ"ア"ッッ……………!! 」
銅像のように動かなかった弾が咆哮をあげる
鼓膜に電撃が走ったかのように激痛が生じるなかで
弾の身体が形状変化を遂げていることに気づいた
切り落としたはずの片腕は既に再生したうえに
四肢が肥大化し4足歩行の怪物へと化していたのである
「楽斗ッ……急げッッ!!………」
自分はそう叫ぶと共に彼を庇うように前に出て
右手には刀を左手で大型ナイフを構えようとしたが
(……速いッッ………!! )
こちらの動作の数倍速で動き接近してくる弾を
捉えきれず一瞬で 距離 を詰められて
バギャアッ………… !!
怪物化した羆に激突されたかのような
激しく重々しい衝撃音が辺りに鳴り響いた
~ ep26完 ~
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