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prologue:積まれた書籍とタバコケース
エルモの聖石
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ブレイザーとブレイグルを巡る闘いはひとまず終わり、シドにとって激動の日となった一日ももうすぐ終わろうとしていた。シルビーとルーザの必死の治療も呪いの浄化という最善には届かなかったが、次善と評価できる程度には体力の回復も含めて処置が出来たとのことだった。
ネオンに関しては、シドに懐いた様でルーザの店にまで帰る時からずっとシドのズボンの裾を握って離そうとしなかった。とはいえ、名前を聞き出せただけで、その後はどんなことを聞いても理解できていないのか、または何か理由を抱えているのか定かでは無いが、返事を聞くことはできなかった。
帰り道は、ブレイグルの子ども5人と大人が3人という大所帯となり、緊張から解放されたシドの疲労が噴きだし若者に気を遣わせていた。深く眠っているアレックスはシドが背負い、保護した少年をホニカとシルビーと共にいた少女アネラが支えながら歩いた。大仕事を終えたシルビーはルーザにべったりで、満面の笑みでルーザの隣を歩きながら、たまにご褒美に頭を撫でてもらうのをとても喜んでいた。
そして夜になり、ルーザとシドは店の外に出る。店の中ではアレックスと、ご飯も食べて疲れたが襲ってきた子ども達が寝息をたてている。
夜のゴミ溜めは本当に暗い。太陽光すら遮られるその地では、月の薄明かりが空を覆う厚い靄を通ることができるはずもなく、勿論どれだけ強く輝く星であっても同じで、自然の光源は一切ない。基本的には日が暮れ始め、辺りが完全な闇に包まれると居住区にいるほとんどの者が眠りにつく。中にはシドの様に、拾った蝋燭や、手製のアルコールランプなどを持っている者も居ないことはないが、1割にも満たない少数派だ。なので、ルーザの店の玄関先にある光を生み出す鉱石は貴重な物だ。
世界的に見ても未だ7割近くの人間は、夜になれば眠りに着く生活を送っている。市街地や都市部ともなれば、安価な可燃性油が市場に出回っており、それを定期的に補充しながら夜でも居酒屋を営んだり、仕事をしている者もいる。その現代の化学の常識を超える鉱石は、王都シリウスやゴミ溜めのあるエレニア大陸の最東端にあるフレミア地区のエルモ山で数年前に発見された。
作業に向かった炭鉱夫の一団が、前々日に見舞われた大雨で地盤が緩んでいたエルモ山を登っていると地崩れが最後尾に居た炭鉱夫を飲み込んだ。不幸な事故で命を落としたと思われたその男は、なんとその1週間後に自力で生還を果たした。その時、男が偶然に闇夜の中で周囲を照らす程の光を発する鉱物の塊を発見し持ち帰ったのだった。命を救った奇跡の石は「エルモの聖石」と呼ばれている。翌年に王への献上物の中に聖石が含まれ、いたく気に入った王がフレミア地区から聖石を大量に買い取り王都を中心に常夜灯として広まっていった。
王は研究所の筆頭研究員の進言で、聖石の発光する力の解明に世界中から優秀な研究者や学者を呼び寄せるも、発見から数年経った今も解明の糸口を掴むことすらできずに研究が続けられている。現在主流となっている仮説は2つあり、1つは聖石が日中の太陽光を蓄積して夜になり発光するという説。もう1つは、聖石が周囲の空気に影響を与える何かを発生させ、その何かが発火して光を放っているのではないかと言う説だった。ルーザの店に仕入れられたのはほんの1年ほど前で、それから1年間継続して太陽光に晒されない状況下でも発光し続けており、そのことを知り合いの研究者にルーザが伝えたことで今は光を蓄積している説よりも、何かしらの燃焼物質を生成することで周囲と化学反応を引き起こすことで発火時に光が生み出される説が重点的に研究される様になっている。」
ネオンに関しては、シドに懐いた様でルーザの店にまで帰る時からずっとシドのズボンの裾を握って離そうとしなかった。とはいえ、名前を聞き出せただけで、その後はどんなことを聞いても理解できていないのか、または何か理由を抱えているのか定かでは無いが、返事を聞くことはできなかった。
帰り道は、ブレイグルの子ども5人と大人が3人という大所帯となり、緊張から解放されたシドの疲労が噴きだし若者に気を遣わせていた。深く眠っているアレックスはシドが背負い、保護した少年をホニカとシルビーと共にいた少女アネラが支えながら歩いた。大仕事を終えたシルビーはルーザにべったりで、満面の笑みでルーザの隣を歩きながら、たまにご褒美に頭を撫でてもらうのをとても喜んでいた。
そして夜になり、ルーザとシドは店の外に出る。店の中ではアレックスと、ご飯も食べて疲れたが襲ってきた子ども達が寝息をたてている。
夜のゴミ溜めは本当に暗い。太陽光すら遮られるその地では、月の薄明かりが空を覆う厚い靄を通ることができるはずもなく、勿論どれだけ強く輝く星であっても同じで、自然の光源は一切ない。基本的には日が暮れ始め、辺りが完全な闇に包まれると居住区にいるほとんどの者が眠りにつく。中にはシドの様に、拾った蝋燭や、手製のアルコールランプなどを持っている者も居ないことはないが、1割にも満たない少数派だ。なので、ルーザの店の玄関先にある光を生み出す鉱石は貴重な物だ。
世界的に見ても未だ7割近くの人間は、夜になれば眠りに着く生活を送っている。市街地や都市部ともなれば、安価な可燃性油が市場に出回っており、それを定期的に補充しながら夜でも居酒屋を営んだり、仕事をしている者もいる。その現代の化学の常識を超える鉱石は、王都シリウスやゴミ溜めのあるエレニア大陸の最東端にあるフレミア地区のエルモ山で数年前に発見された。
作業に向かった炭鉱夫の一団が、前々日に見舞われた大雨で地盤が緩んでいたエルモ山を登っていると地崩れが最後尾に居た炭鉱夫を飲み込んだ。不幸な事故で命を落としたと思われたその男は、なんとその1週間後に自力で生還を果たした。その時、男が偶然に闇夜の中で周囲を照らす程の光を発する鉱物の塊を発見し持ち帰ったのだった。命を救った奇跡の石は「エルモの聖石」と呼ばれている。翌年に王への献上物の中に聖石が含まれ、いたく気に入った王がフレミア地区から聖石を大量に買い取り王都を中心に常夜灯として広まっていった。
王は研究所の筆頭研究員の進言で、聖石の発光する力の解明に世界中から優秀な研究者や学者を呼び寄せるも、発見から数年経った今も解明の糸口を掴むことすらできずに研究が続けられている。現在主流となっている仮説は2つあり、1つは聖石が日中の太陽光を蓄積して夜になり発光するという説。もう1つは、聖石が周囲の空気に影響を与える何かを発生させ、その何かが発火して光を放っているのではないかと言う説だった。ルーザの店に仕入れられたのはほんの1年ほど前で、それから1年間継続して太陽光に晒されない状況下でも発光し続けており、そのことを知り合いの研究者にルーザが伝えたことで今は光を蓄積している説よりも、何かしらの燃焼物質を生成することで周囲と化学反応を引き起こすことで発火時に光が生み出される説が重点的に研究される様になっている。」
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