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prologue:積まれた書籍とタバコケース
トラッキングスワロー
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その頃、王都シリウスにある悠久の騎士団の本部では、ルーザの間者からの要請を請けてアレックス達を引き取る為の小隊が準備を進めていた。そして、その一行とは異なる目的を持った一人の女性が、単独でゴミ溜めに向かって出発した。
その両脇には黒いフードで顔を隠す小さな影が2つ。真ん中を歩いている女性は、癖の無い直毛で、赤みの混じる栗色の髪をきちっと後ろ手に結わえ、前髪はセンターで分けている。眉はきりっと整えられていて、一見して美男子の様な整った顔をしていた。
「お出かけお出かけ嬉し・イ・ナ♪」
「黙れリョウ、はしゃぐな見っとも無い」
「えー、カネピー連れなぁい」
2人とも声が高く小さい女の子の様にも、変声期を迎えていない男の子の様にも感じられる。少しの背の高いカネピーと呼ばれた方がはっきりと明瞭に話し落ち着いており、リョウと呼ばれた背の低い方は、鼻歌を歌ったり女性の周りを旋回しながら独特なリズムで踊る様に歩いている。
「それでスワロ、秘密裏の単独行動ってことは目的はもしかして?」
「えっ!? なに? これ仕事なのぉ?
僕てっきりお忍びでお買い物しにいくものだと思ってたのにぃ」
「ふふ、そうだね。これが終わったら、いつも頑張ってくれているリョウカイとカネシゲの為に美味しい物食べたり、お買い物にも付き合ってあげるね」
「また、そうやって甘やかす」
「やったー、スワロ大好き! 何だよ、カネピーだって街に出るとはしゃいでるでしょー?」
石畳の道に軍靴が軽快に音を立てる。シリウス近郊は聖石の灯りに包まれ、郊外ですら民家や街頭にある灯火の光で明るい。街を抜ける道では、まばらではあるが人が歩いている。賑わう店や少し早めの就寝をしている民家、喧嘩する声や談笑する声が時折聞こえる。スワロはそんな街の様子を見て微笑んでいる。
「あれぇ? あんな所に、こんな時間に女の子が一人でいるね」
「本当だ。両親は近くには・・・・・・居なさそうだね」
3人の進んでいく方向に、3、4歳くらいの女の子の姿があった。女の子は両腕を胸の前にして身を縮めながら、周囲を不安そうに何度も何度も確認している。シリウス郊外には駐在する騎士が見回りを行っているので、何か事件に巻き込まれる様なことはないが、放っておく訳にもいかない。スワロが話しかけようと歩み寄っていると、少女が立っていた後方から、6歳くらいの男の子が懸命に走ってきた。
「お兄ちゃん!」
「はあ、はあ、はあ、良かった。アルトやっと見つけた。
お母さん、お父さんアルトいたよー!」
男の子はアルトのお兄ちゃんだったようで、後ろから必死で駆け寄ってきた顔を見た瞬間に不安で泣き出しそうだった女の子の顔がにぱっと明るくなった。お兄ちゃんも、いつの間にかはぐれてしまった妹を見つけることができて安心していたようだった。スワロはその様子を見ながら、ズキズキと疼く胸の辺りを抑えていた。
「本当に心配したんだからな、もう。ほら、もう手離しちゃダメだからな」
「ごめんなさい・・・・・・お兄ちゃん大好き」
「へへ、お兄ちゃんはアルトのお兄ちゃんだからな! いつだってアルトのこと守ってやるからな!」
手を繋いで歩いていく兄妹の背中が小さくなっていく。2人の両親も駆け寄ってきて、母親は地面に膝を着きながら、見つかったアルトと見つけてくれたお兄ちゃんを一緒に抱きしめた。父親がお兄ちゃんを褒めてあげるのを見ていたアルトも大好きな兄が褒められたことが嬉しかったようで、その顔にはもう不安などどこにも感じられなかった。
「やっぱり迷子になってたんだね。でも、無事に見つかって良かった!」
「うん、そうだね・・・・・・」
カネシゲは、スワロの横顔を見上げながら少し震えているその左手を何も言わずに握った。先に歩き出していたリョウカイもしきりに足を止めては振り返る。スワロははっとした顔をして、すぐに笑顔を作って2人の頭を順番に優しく撫でた。
「ごめんね、ありがとう。もう大丈夫よ」
ヒュージの落下時に人類全ての記憶に大きな影響があった。老若男女問わず、それまでの記憶が消失したのだった。それは不可解なことに形成するコミュニティーやそれに伴う関係性などには影響を与えなかった為、大きな混乱を招くことがなかった。しかし、極稀に部分的に記憶を残している者が居るのだ。
スワロの持つ記憶はほんの数秒の出来事で、白い部屋の真ん中で大好きだった兄が泣いていて、誰かに引き離されるのを必死で抵抗していた記憶だった。その場面が身近な映像の様に残ってはいるものの、何故兄が泣いていたのか、自分が何故引き離されていたのか、そもそも引き離されたのではなく駆け寄るのを遮られていたのか、詳細はどうしても思い出すことができないでいる。
「今回こそ、あんたを見つけて兄の情報を吐かせてみせるわ。待っていなさい・・・・・・ルーザ」
その両脇には黒いフードで顔を隠す小さな影が2つ。真ん中を歩いている女性は、癖の無い直毛で、赤みの混じる栗色の髪をきちっと後ろ手に結わえ、前髪はセンターで分けている。眉はきりっと整えられていて、一見して美男子の様な整った顔をしていた。
「お出かけお出かけ嬉し・イ・ナ♪」
「黙れリョウ、はしゃぐな見っとも無い」
「えー、カネピー連れなぁい」
2人とも声が高く小さい女の子の様にも、変声期を迎えていない男の子の様にも感じられる。少しの背の高いカネピーと呼ばれた方がはっきりと明瞭に話し落ち着いており、リョウと呼ばれた背の低い方は、鼻歌を歌ったり女性の周りを旋回しながら独特なリズムで踊る様に歩いている。
「それでスワロ、秘密裏の単独行動ってことは目的はもしかして?」
「えっ!? なに? これ仕事なのぉ?
僕てっきりお忍びでお買い物しにいくものだと思ってたのにぃ」
「ふふ、そうだね。これが終わったら、いつも頑張ってくれているリョウカイとカネシゲの為に美味しい物食べたり、お買い物にも付き合ってあげるね」
「また、そうやって甘やかす」
「やったー、スワロ大好き! 何だよ、カネピーだって街に出るとはしゃいでるでしょー?」
石畳の道に軍靴が軽快に音を立てる。シリウス近郊は聖石の灯りに包まれ、郊外ですら民家や街頭にある灯火の光で明るい。街を抜ける道では、まばらではあるが人が歩いている。賑わう店や少し早めの就寝をしている民家、喧嘩する声や談笑する声が時折聞こえる。スワロはそんな街の様子を見て微笑んでいる。
「あれぇ? あんな所に、こんな時間に女の子が一人でいるね」
「本当だ。両親は近くには・・・・・・居なさそうだね」
3人の進んでいく方向に、3、4歳くらいの女の子の姿があった。女の子は両腕を胸の前にして身を縮めながら、周囲を不安そうに何度も何度も確認している。シリウス郊外には駐在する騎士が見回りを行っているので、何か事件に巻き込まれる様なことはないが、放っておく訳にもいかない。スワロが話しかけようと歩み寄っていると、少女が立っていた後方から、6歳くらいの男の子が懸命に走ってきた。
「お兄ちゃん!」
「はあ、はあ、はあ、良かった。アルトやっと見つけた。
お母さん、お父さんアルトいたよー!」
男の子はアルトのお兄ちゃんだったようで、後ろから必死で駆け寄ってきた顔を見た瞬間に不安で泣き出しそうだった女の子の顔がにぱっと明るくなった。お兄ちゃんも、いつの間にかはぐれてしまった妹を見つけることができて安心していたようだった。スワロはその様子を見ながら、ズキズキと疼く胸の辺りを抑えていた。
「本当に心配したんだからな、もう。ほら、もう手離しちゃダメだからな」
「ごめんなさい・・・・・・お兄ちゃん大好き」
「へへ、お兄ちゃんはアルトのお兄ちゃんだからな! いつだってアルトのこと守ってやるからな!」
手を繋いで歩いていく兄妹の背中が小さくなっていく。2人の両親も駆け寄ってきて、母親は地面に膝を着きながら、見つかったアルトと見つけてくれたお兄ちゃんを一緒に抱きしめた。父親がお兄ちゃんを褒めてあげるのを見ていたアルトも大好きな兄が褒められたことが嬉しかったようで、その顔にはもう不安などどこにも感じられなかった。
「やっぱり迷子になってたんだね。でも、無事に見つかって良かった!」
「うん、そうだね・・・・・・」
カネシゲは、スワロの横顔を見上げながら少し震えているその左手を何も言わずに握った。先に歩き出していたリョウカイもしきりに足を止めては振り返る。スワロははっとした顔をして、すぐに笑顔を作って2人の頭を順番に優しく撫でた。
「ごめんね、ありがとう。もう大丈夫よ」
ヒュージの落下時に人類全ての記憶に大きな影響があった。老若男女問わず、それまでの記憶が消失したのだった。それは不可解なことに形成するコミュニティーやそれに伴う関係性などには影響を与えなかった為、大きな混乱を招くことがなかった。しかし、極稀に部分的に記憶を残している者が居るのだ。
スワロの持つ記憶はほんの数秒の出来事で、白い部屋の真ん中で大好きだった兄が泣いていて、誰かに引き離されるのを必死で抵抗していた記憶だった。その場面が身近な映像の様に残ってはいるものの、何故兄が泣いていたのか、自分が何故引き離されていたのか、そもそも引き離されたのではなく駆け寄るのを遮られていたのか、詳細はどうしても思い出すことができないでいる。
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