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1章 運命の始まり
1-9 山桜の香りに酔いしれて
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「…ウッ」
鈍い音と共に地面にうずくまった。俺ではなく目の前にチンピラ達が。
刹那、ヒーローは口を開いた。
「お姉さん、お兄さんご無事ですか?」
「「はい…!」」
爽やかな声が店内に響き渡る。
彼は、返事を聞くとニコリと微笑んだ。
そして、「よかったです」というとそのままチンピラの方を向き表情を豹変させた。
「そこのTPOもわからないお子様はさっさと失せろ。私の作った美味しい物も不味くなってしまうだろう?」
単調な声とは裏腹に鋭い眼光が突き刺さる。思わずこちらまで恐怖に震えるほどの迫力だ。
男はゴンザレス(仮)を見て顔を青ざめた。そして、吐き捨てるように言った。
「…クソッ、行くぞ」
そのセリフには、先ほどまでの威勢はカケラも残っていなかった。
男がいなくなってから2分程。僕たちはその場から動くことができなかった。
少しして、彼女が言った。
「びっくり…しちゃいましたね」
「はい。その…守れなくて、すみません」
「何を言ってるんです?あおたんは守ってくださいましたよ。私は嬉しかったです。ちょっと…見直しちゃいました」
頬を赤らめながらそういうと、優しく微笑んだ。
それはそれは尊いものであった。
その尊さに身も心も酔いしれ、目眩がするほどに。
って、あれ…クラクラす、るーーーー
「…たんっ!あおたんっ…、聞こえますか?」
メイドさんの声…?
俺は確か、メイドさんとカフェに来ていて、それで…
「痛っ…」
頭がズキズキと痛む。それにどうやらベットにいるようだ。
何かあったのだろうか。
刹那、彼女は俺の手を握った。
「あおたんっ!よかったぁ…」
涙目になりながら喜ぶ姿に胸が痛い。
「あの、俺…なんでここに?」
「実は…」
彼女は少し言いにくそうにしながらも口を開いた。
一体、何があったんだ。
「すみませーん、本日開店30年記念でクッキーをお配りしています。どうぞ~!」
「「…ありがとうございます」」
メイドさんの名前は何なのか。
その疑問だけが脳を支配し、口にしたクッキーはまるで味がしない。
静まり返る店内、意味ありげに時を刻む音が響く。
たまらず、クッキーを幾度となく頬張る。
聞くと、それが原因だったようだ。
あのクッキーにはほんの少しのアルコールが含まれていた。
勿論、普通に食べる分にはなんら問題はない。
俺が少し食べ過ぎたこと、そして異常にアルコールに弱いこと
この2つが重なったのだと彼女は言った。
そして、先ほどまで涙を浮かべていたのが嘘のようにニヤニヤと笑いをこらえながら病室を後にした。
嗚呼、泣きたい。
思わず両手で顔を覆う。
メイドさんの尊さに酔いしれていたら、本当にアルコールに酔う。
いや、上手いこと言うなよ…俺。
メイドさんとすこーしばかりいい雰囲気?俺、もしかして?
とか思ったのがいけなかったのかよ。
男なんだから、しょうがないだろ…
おい、見てんだろ。
性悪ウサギ。
「ハハッwwwwww」
「笑ってんじゃねぇよ」
「しょうがないなぁ。
君にもう一度チャンスをあげましょうか?」
ニヤリ、と笑みを浮かべながらヤツは言う。俺の答えなんて分かっているくせに。
「いらない」
「そうですかぁ、じゃあ、頑張ってくださいね♡」
彼女には、まだまだ聞けていないことばかりだ。
未だ名前すらわからないままなんて情けない。
ただ俺は、知りたい。
だから、今度は自分の手で…
時を得る。
鈍い音と共に地面にうずくまった。俺ではなく目の前にチンピラ達が。
刹那、ヒーローは口を開いた。
「お姉さん、お兄さんご無事ですか?」
「「はい…!」」
爽やかな声が店内に響き渡る。
彼は、返事を聞くとニコリと微笑んだ。
そして、「よかったです」というとそのままチンピラの方を向き表情を豹変させた。
「そこのTPOもわからないお子様はさっさと失せろ。私の作った美味しい物も不味くなってしまうだろう?」
単調な声とは裏腹に鋭い眼光が突き刺さる。思わずこちらまで恐怖に震えるほどの迫力だ。
男はゴンザレス(仮)を見て顔を青ざめた。そして、吐き捨てるように言った。
「…クソッ、行くぞ」
そのセリフには、先ほどまでの威勢はカケラも残っていなかった。
男がいなくなってから2分程。僕たちはその場から動くことができなかった。
少しして、彼女が言った。
「びっくり…しちゃいましたね」
「はい。その…守れなくて、すみません」
「何を言ってるんです?あおたんは守ってくださいましたよ。私は嬉しかったです。ちょっと…見直しちゃいました」
頬を赤らめながらそういうと、優しく微笑んだ。
それはそれは尊いものであった。
その尊さに身も心も酔いしれ、目眩がするほどに。
って、あれ…クラクラす、るーーーー
「…たんっ!あおたんっ…、聞こえますか?」
メイドさんの声…?
俺は確か、メイドさんとカフェに来ていて、それで…
「痛っ…」
頭がズキズキと痛む。それにどうやらベットにいるようだ。
何かあったのだろうか。
刹那、彼女は俺の手を握った。
「あおたんっ!よかったぁ…」
涙目になりながら喜ぶ姿に胸が痛い。
「あの、俺…なんでここに?」
「実は…」
彼女は少し言いにくそうにしながらも口を開いた。
一体、何があったんだ。
「すみませーん、本日開店30年記念でクッキーをお配りしています。どうぞ~!」
「「…ありがとうございます」」
メイドさんの名前は何なのか。
その疑問だけが脳を支配し、口にしたクッキーはまるで味がしない。
静まり返る店内、意味ありげに時を刻む音が響く。
たまらず、クッキーを幾度となく頬張る。
聞くと、それが原因だったようだ。
あのクッキーにはほんの少しのアルコールが含まれていた。
勿論、普通に食べる分にはなんら問題はない。
俺が少し食べ過ぎたこと、そして異常にアルコールに弱いこと
この2つが重なったのだと彼女は言った。
そして、先ほどまで涙を浮かべていたのが嘘のようにニヤニヤと笑いをこらえながら病室を後にした。
嗚呼、泣きたい。
思わず両手で顔を覆う。
メイドさんの尊さに酔いしれていたら、本当にアルコールに酔う。
いや、上手いこと言うなよ…俺。
メイドさんとすこーしばかりいい雰囲気?俺、もしかして?
とか思ったのがいけなかったのかよ。
男なんだから、しょうがないだろ…
おい、見てんだろ。
性悪ウサギ。
「ハハッwwwwww」
「笑ってんじゃねぇよ」
「しょうがないなぁ。
君にもう一度チャンスをあげましょうか?」
ニヤリ、と笑みを浮かべながらヤツは言う。俺の答えなんて分かっているくせに。
「いらない」
「そうですかぁ、じゃあ、頑張ってくださいね♡」
彼女には、まだまだ聞けていないことばかりだ。
未だ名前すらわからないままなんて情けない。
ただ俺は、知りたい。
だから、今度は自分の手で…
時を得る。
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