誰かこの子のお父さんをしりませんかぁ?

かみい

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8◇それぞれ思い出しませんかぁ?その1◇

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フィオナside




「あっ、アイリ!」

こっちの返事もきかずに、マナを抱えて部屋を出て行ってしまった。
マナの泣き声は成長とともに大きくなって、しかも今日は久しぶりの大泣きだったから。
どうにもならなかった。
あまりの泣きっぷりにこちらまで泣きそうになる。

「あぁあ、アイリってば外出ちゃった。
泣き声くらい遮音魔法をかければ済むことなのに・・・」

「気を使ったんだよ。遮音してもあんなに泣いてるのみたらお前らも落ち着かないだろ」

出て行ったドアを見ながらヒューバートがぼやいていると、アシュトンとジェフがいた。
二人ともマナの泣き声をきいたのだろう、渋い顔をしていた。
ジェフは部屋に入ってきたが、アシュトンはスッと身を翻しドアから離れていった。
恐らくアイリを追いかけて行ったのだろう。

いくら冒険ギルドのある町は治安が比較的いいほうだとは言え、夜になれば酒場も近くにあって酔っ払いも出てくるのだから安全とは言いがたい。
非戦闘冒険者で、たとえ子連れとはいえ年若くて見た目が別嬪な女の子が夜、外をうろついて良い訳がない。

「はあぁ、アイリってまだ私らに遠慮してるのかなぁ」

部屋に2つあるベッドの片方に力なく腰を掛ける。
もう片方はアイリとマナが使っている。
アイリと同室で寝るようになったのも一緒に冒険をするようになって2ヶ月たってからだ。それすらも遠慮していたほど。

「仕方ないんじゃない?いまだに邪魔者になるようならいつでもパーティーから離れますって言ってるもん」

ヒューは遠慮もなくアイリのベッドに寝転がっている。声も行動もいつもと変わりはないけどヒューもアイリに遠慮されていて壁があるように思っていると前に零していた。
わたしら2人は、何も知らなかったアイリにやらかしをしてしまったから仕方がないけど、ジェフとアシュにも一歩隔てた対応をいつもしている。
それもこれも・・・

「アイリは、俺らに頼らず自立することをまだ諦めていないから・・・」

ジェフのつぶやきは私の心に重く響いた。
アイリは出会ってから『必ず独り立ちします』って言っていた。そう言わざるを得ない状況を作ったのは私だから仕方がないんだけど・・・
マナが1歳をになって一緒に旅をしだしてからもうすぐ2年が経つ。
それだけたってもアイリの遠慮がちの笑顔は変わらない。
今更昔のことを後悔しても仕方がない、やり直せるのならもう一度出会いからやり直したい。






いくらといえ、もっと、できたら・・・・・・という間柄になりたい。








「はぁあ?何よこれ!?」

その頃はいくつかの町を転々と回って様々なクエストを熟したり、ダンジョンに入り浸り経験値上げに勤しんでいた。
もうすでにアシュはSランク冒険者になっていてジェフとヒューはAランク冒険者だった、私だけが出遅れてやっとBランク冒険者になっていた。
おじいちゃんがいる家への連絡もギルドへの連絡がないことをいいことに頭の片隅に在りはしたが、ほぼ忘れていた。
しかもおじいちゃんの住む一帯の森には、魔王討伐にとても重宝された強固な結界が貼られていて、心配はあんまりしていない。
なにせ、ヒューの魔術を用いても破れないほどの結界なんだもの。
そう思うとうちのおじいちゃんってすごいなぁ。

そのおじいちゃんからの手紙を数か月ぶりにギルド経由で受け取ったのが昨日の夜。
昨日まで新しいダンジョンが出現したとのことで、調査依頼が入っていて、20日かけてダンジョンをくまなく調査して回った。ダンジョンは30階上に伸びていた。ぱっと見は大きな断崖絶壁の様に見えるけどね。レベルは中の上。Dランク冒険者には少し厳しいかな?5階ごとに魔獣のレベルが上がって行ったけど私も20階以上はきつかった。
その報告もへとへとになりながらして、その後に受け取ったのがこの手紙。
けど、どうせいつもの生存確認の現状報告が1行で綴られてるんだろうと思っていたのと、それよりも久しぶりにちゃんとした寝床で寝たいという気持ちが勝って後回しにしてしまった。翌朝、寝坊して遅めの朝食時、ジェフに言われてやっと思い出し開いた手紙には今までにない事柄が書かれていた。

『私は元気だ。現在、記憶喪失のけが人を保護している』

胡散臭いこの上ない。
おじいちゃんは魔王討伐の英雄とされている1人だ。
しかも、ほかのメンバーと違って、褒賞で貰った爵位は返上していて貴族でないことから良からぬ考えを持つ人が昔から近づこうとしていた。おじいちゃんの知識を借りたいならまだしも、おじいちゃんから何か搾取するつもりだったり、おじいちゃんの身を使って高位貴族や王族への足掛かりにするのもいた。
それで10年前に事件が起きたのだから。
今回のこれも警戒するなというのか無理な話。

「クレイじいさんが保護ねぇ」

ヒューにたった一行しか書かれていない手紙を私の手から取り上げられ、見上げるとこちらも訝しげな顔をしている。

「森の外にいたのか?森で迷ったか?」

おじいちゃんの住む森は強固な結界が張ってある。それにもかかわらず無理に入ってしまえば迷う。今まで迷った人は数多い。何日も発見されずに衰弱した人もいたが、無理に入った人が悪い自業自得だとおじいちゃんはいままで助けたことはない。

精々、森の外に放置して近くの村人に通報していたくらいだ。
だから、今回の保護しているというのが信じられない。

ジェフもそう思ったのだろう、アシュも何も言わないけど同じみたい。
私たちはみんな、魔王討伐の為に選ばれた勇者一行の孫で幼少期からお互いに交流があった。
所謂、幼馴染。
私以外はみ~んな貴族様の家柄。
魔王討伐の褒賞で陞爵している、確かジェフは伯爵、アシュは辺境伯、ヒューは侯爵?伯爵?なんだっけ?忘れちゃったけど元々は男爵とか子爵だったとか言ってたよね。現役でお城で働いている家族もいるし、本当はこんな冒険者なんてフラフラしてる人たちじゃないんだよなぁ。

討伐後に当時の皇太子だった王子様と結婚した聖女様が年に一度はみんなの顔が見たいって我儘・・・じゃなかったえっと・・・希望したから小さなころからお城に召集がかかり、特に年が近かった私たち4人が仲が良かった。
冒険者になってからは、貴族じゃない我が家は柵とかがなく気軽にいられるとよく入り浸っておじいちゃんに怒られてたりしてた。
おじいちゃんは冷たく見えて、実はとても情に厚い。
いつもしかめっ面で、話したと思ったら説教じみたことしか言わないけど懐に入れた人にはとことん甘い。わかりにくいけど・・・
ただし、懐に入るまではすっごくすっごくすっっっごく警戒をする。
それはもう、結界の厳重さが物語るくらいに。

そんなおじいちゃんが、けが人を保護した?
しかも記憶喪失?
胡散臭い!

何度も言おう!

胡散臭い!!!




急遽、冒険のプランを変更して、私、私たちはみんなでおじいちゃんの森に行くことにした。
里帰りなんて、1年ぶり?いや、もっと帰ってなかったかな?
ヒューの転移魔法で森の入り口まで移動してから、足を奥に進める。
知らず知らず気が急いてるのか、進める足の速度がいつもよりもみんな早い。
手紙が届いたのは昨日今日じゃない。放っておいたから数か月は経っているみたい。
おじいちゃんに限って、無いとは思うがそれでも、やっぱり・・・
とにかく、急いで足を進める。
気が付けば、私はほぼ走っていた。

普通の人ならこの先は入ることできないけど、私たちみんな家まで目を瞑って進んでもたどり着けるようになっている、らしい。
ついたのは夕方には少し早い時間

久しぶりに見える小さな我が家からは、いい匂いが漂ってきている。
それを認めると、一目散に家の中に急ぐ。

「おじいちゃん!生きてる!!!」

玄関扉を開けて叫びながら、いるであろう推測する居間への薄い板のドアの取っ手に手をかける

「生きとるわ!バカ娘が!!!」

「娘じゃない、孫!!!」

開けた向こうでのんびり寛いでいたおじいちゃん。前に会った時よりも髪の色素が薄くなったような気がしないでもないけど元気そうに、いつものやり取りであいさつする。

「・・・元気そうね」

居間にある少ない家具の中で一番大きな、食卓テーブルの椅子に腰かけているおじいちゃん。
その向こうに見える、竈には何かスープらしきものが入った鍋がかかっていて、そこからいい香りが立ち込め部屋を満たしていた。
夕飯の準備なのか、机には皿も並べられていた。
それは2人分。
つまりは手紙で知らされた通り、まだ保護したその人物はまだこの家にいるということなんだ。
しかも、おじいちゃんはこちらの心配をよそにのんびり本を読んでいたみたいだし。
ついジト目でにらんでも仕方がない。

「元気だと3か月前に手紙で知らせたはずだが?」

「っ!そうよ、手紙!!ちょっと・・」

「おう!じいちゃん人拾ったって?」

「クレイ爺さん、ひさしぶりです」

読んでいた本を閉じ視線だけをこちらに向けて、言外にそれがどうしたというような意思がにじんでいた。
そうだよ!それだよ!っと本題に入りたいのに遅れて室内に入ってきたジェフとヒューにさえぎられてしまう。
ヒューに至ってはこちらが聞きたかった本題をさらりと口にした。
オイ!身内の私がまだ、聞けもしていないというのに!!

「ああ、いるぞ。外に・・・」

久しぶりだけどいつものメンバーだから、ジェフの挨拶に返すこともなくヒューにこたえているおじいちゃん。
その返事に何かを言うよりもつい反応して、外に飛び出してしまった。

私が去った部屋で、ヤレヤレといったようにため息がもれたけど私は知らない。
普段はもっと落ち着いてるけど、私はこの時はとてもおかしかった。
後で考えれば私の、おじいちゃんのうちに人が入り込むことに私はすごく恐怖を感じていたのだと思う。
でももっと考えて行動をとれていたら、この後のアイリとの関係も違っていたし、なによりもこのときに一番見たくなかった光景を見なかったと思う。














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