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『まて』をやめました 14
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◇
ガツッ!!!
「ウグッ!」
衝撃のあと漏れたのは、淑女らしくない潰れた蛙のような声。
倒れこむ体に戸惑いもなく下された足。踵が高いヒールの足は、背中にめり込むように力一杯押さえ込み踏みつけられた。
柔らかな芝に頬を押し付けられ倒れた体。
抑え込まれ、腕を後ろ手に取られ身動きができない。踏みつけられた圧迫で息がぐぬぬぅと唸るように漏れる。
「聖女様の邪魔をする存在のお前は、排除されるべきなんだっ!!!」
唸る息の中、呻くような声が会場に響く。
その中、クラウディア──────は、捕らえたメイドの腕を押さえ足を背にのせ動きを封じていた。鋭く襲ってきた白刃のナイフは地面に落ちている。
クラウディアを目掛けて振り下ろされた刃は、素早く対応したクレアの手によってメイドの腕を手刀で落とした。凶器を取り落とされたメイドは、それを拾うことはせずそのまま突進してきた。
今度はそれにクラウディアが立ち向かい、相手の勢いをそのまま利用して攻撃をよけるとその背に肘で一撃を加えた。地面に倒れこんだところを起き上がる前に、背に足を乗せて動きを封じる。
ついでとばかりに、まだ攻撃を仕掛けようと持ち上げた腕を後ろ手に纏めて捕らえ捻りあげた。
「聖女様の邪魔って・・・。レティシア様は、お友達になりましょうっていってくれたのになぁ。
っていうか、この程度の実力で私を殺るつもりだったのかな?舐められたものねぇ。」
淑女としてどうなのかという恰好ではある捕物劇をしたが、そこは命が掛かったことなので許してほしい。普通だったら人の背に足なんて乗せませんよ、ウフフッ。
それに私は、元より囮だったのだから。
周りを見渡せば、儚い見た目と以前の徹底した猫かぶりしか知らない夫人令嬢方は、驚き一様に目を見開き口をポカーンと開けた揃った表情をしている。
新生クラウディアの御披露目完了かな?
私はもう大人しいだけのお嬢様でなんて無理だもの。余所行きの顔はできても、怒らすと怖いくらいのイメージはあってもいいかな?
ドレスのスカートの裾を乱して背中に上げた足は捲れ上がったせいで膝まで見えている。
あははっ、お母様の笑顔の鋭い視線が怖い。
やりすぎでしょうか?
流石にこのままの姿を多くの人前で晒すのはと思ったのかすぐにクレアがメイドを引き取った。
「ケイシー!なんてことを!!!」
ヤレヤレとスカートの乱れを直していると、人垣の中から現れたのはメイドの主人シンディー様。
声には焦りがある。
まあ、そうでしょうね。
連れてきたメイドが他所様のお茶会で騒ぎを起こしたのだから。騒ぎどころじゃないけどね。殺傷事件?
責任という話になるけど、後日だろう。今はこの騒ぎをどうするかだよね。
パーンッ!
晴天の空に響く乾いた音。
一目散にメイドに駆け寄り、情けない顔で上げたその頬を躊躇なく打ったシンディー様。長い爪が当たったのか打たれたメイドの頬は赤くなった中に筋も入って血がにじんでいた。
「なぜです・・・、こんな、こんなことを!」
「お嬢様・・・、も・・・」
「なんで・・・」
メイドの頬を打った後、青ざめた顔をしたメイドが口を開くと、その体に抱き着き泣き出してしまった。
親しい仲のメイドだったのか?
だとしてもこんなことをしたのだから、いくら公爵家から何か言われてもどうすることもできない。
もしかしたら、公爵家が絡んでいる可能性もある。しっかりと真偽を明らかにしてもらわないと。
そう考えても、サビーナ様のパイル伯爵家だけじゃない黒幕がいるはずだ。
泣きつくシンディー様を、王家から貸し出されていた騎士がそっと促してひきはなした。
抱きしめられた時に身を起こして、芝に座り込んでいたメイドの腕をつかんで立たせようとする騎士。このまま騎士団の詰所の牢に入れられることだろう。取り調べには公爵もされるかどうか・・・
そう思いながら、立ち上がるメイドをぼんやり見ていた。
とりあえず、これでクラウディアが倒れたすべてがわかるといいな。
そう、どこかこれで終わった感があった。
気を抜いていた。
油断していた。
立ち上がったメイドは、誰が見ても可笑しくない動作をした。
まるで涙を拭くように掌を顔に持ち上げた。
しかし、顔に、口元に手をやる前に苦しそうな躊躇うように一瞬動きが鈍かった。
「っつうう」
そして、手のひらで顔を覆った後うめき声を上げて首を胸を掻き、苦悶の表情で倒れた。
傍にいた騎士が慌ててメイドの体に手をやるが、仲間の騎士に顔を向けて首を左右に振った。
その騎士の動作で、メイドが死んだ事がわかった。
分かったが、何故?
「ケイシーッ!ああぁ・・・」
誰もが動けない中、シンディー様の泣き声が空に高らかと響いた。
悲しんでいるはずのシンディー様の声を聞いた私は、心が冷めていく感覚がした。
人が亡くなった。
事の責任を取って、自死した?
でも、でも、手を口にやるとき躊躇っていた。
あのとき、手に持っていた何かを服用したと思われる。
最初から持っていたか知らないけど、ただのメイドが独断でこんなことするとは思えない。
だから、これは・・・
口封じ?
そんな考えが頭に浮かんだとき、耳から入るシンディー様の泣き声が空々しく聞こえた。
ガツッ!!!
「ウグッ!」
衝撃のあと漏れたのは、淑女らしくない潰れた蛙のような声。
倒れこむ体に戸惑いもなく下された足。踵が高いヒールの足は、背中にめり込むように力一杯押さえ込み踏みつけられた。
柔らかな芝に頬を押し付けられ倒れた体。
抑え込まれ、腕を後ろ手に取られ身動きができない。踏みつけられた圧迫で息がぐぬぬぅと唸るように漏れる。
「聖女様の邪魔をする存在のお前は、排除されるべきなんだっ!!!」
唸る息の中、呻くような声が会場に響く。
その中、クラウディア──────は、捕らえたメイドの腕を押さえ足を背にのせ動きを封じていた。鋭く襲ってきた白刃のナイフは地面に落ちている。
クラウディアを目掛けて振り下ろされた刃は、素早く対応したクレアの手によってメイドの腕を手刀で落とした。凶器を取り落とされたメイドは、それを拾うことはせずそのまま突進してきた。
今度はそれにクラウディアが立ち向かい、相手の勢いをそのまま利用して攻撃をよけるとその背に肘で一撃を加えた。地面に倒れこんだところを起き上がる前に、背に足を乗せて動きを封じる。
ついでとばかりに、まだ攻撃を仕掛けようと持ち上げた腕を後ろ手に纏めて捕らえ捻りあげた。
「聖女様の邪魔って・・・。レティシア様は、お友達になりましょうっていってくれたのになぁ。
っていうか、この程度の実力で私を殺るつもりだったのかな?舐められたものねぇ。」
淑女としてどうなのかという恰好ではある捕物劇をしたが、そこは命が掛かったことなので許してほしい。普通だったら人の背に足なんて乗せませんよ、ウフフッ。
それに私は、元より囮だったのだから。
周りを見渡せば、儚い見た目と以前の徹底した猫かぶりしか知らない夫人令嬢方は、驚き一様に目を見開き口をポカーンと開けた揃った表情をしている。
新生クラウディアの御披露目完了かな?
私はもう大人しいだけのお嬢様でなんて無理だもの。余所行きの顔はできても、怒らすと怖いくらいのイメージはあってもいいかな?
ドレスのスカートの裾を乱して背中に上げた足は捲れ上がったせいで膝まで見えている。
あははっ、お母様の笑顔の鋭い視線が怖い。
やりすぎでしょうか?
流石にこのままの姿を多くの人前で晒すのはと思ったのかすぐにクレアがメイドを引き取った。
「ケイシー!なんてことを!!!」
ヤレヤレとスカートの乱れを直していると、人垣の中から現れたのはメイドの主人シンディー様。
声には焦りがある。
まあ、そうでしょうね。
連れてきたメイドが他所様のお茶会で騒ぎを起こしたのだから。騒ぎどころじゃないけどね。殺傷事件?
責任という話になるけど、後日だろう。今はこの騒ぎをどうするかだよね。
パーンッ!
晴天の空に響く乾いた音。
一目散にメイドに駆け寄り、情けない顔で上げたその頬を躊躇なく打ったシンディー様。長い爪が当たったのか打たれたメイドの頬は赤くなった中に筋も入って血がにじんでいた。
「なぜです・・・、こんな、こんなことを!」
「お嬢様・・・、も・・・」
「なんで・・・」
メイドの頬を打った後、青ざめた顔をしたメイドが口を開くと、その体に抱き着き泣き出してしまった。
親しい仲のメイドだったのか?
だとしてもこんなことをしたのだから、いくら公爵家から何か言われてもどうすることもできない。
もしかしたら、公爵家が絡んでいる可能性もある。しっかりと真偽を明らかにしてもらわないと。
そう考えても、サビーナ様のパイル伯爵家だけじゃない黒幕がいるはずだ。
泣きつくシンディー様を、王家から貸し出されていた騎士がそっと促してひきはなした。
抱きしめられた時に身を起こして、芝に座り込んでいたメイドの腕をつかんで立たせようとする騎士。このまま騎士団の詰所の牢に入れられることだろう。取り調べには公爵もされるかどうか・・・
そう思いながら、立ち上がるメイドをぼんやり見ていた。
とりあえず、これでクラウディアが倒れたすべてがわかるといいな。
そう、どこかこれで終わった感があった。
気を抜いていた。
油断していた。
立ち上がったメイドは、誰が見ても可笑しくない動作をした。
まるで涙を拭くように掌を顔に持ち上げた。
しかし、顔に、口元に手をやる前に苦しそうな躊躇うように一瞬動きが鈍かった。
「っつうう」
そして、手のひらで顔を覆った後うめき声を上げて首を胸を掻き、苦悶の表情で倒れた。
傍にいた騎士が慌ててメイドの体に手をやるが、仲間の騎士に顔を向けて首を左右に振った。
その騎士の動作で、メイドが死んだ事がわかった。
分かったが、何故?
「ケイシーッ!ああぁ・・・」
誰もが動けない中、シンディー様の泣き声が空に高らかと響いた。
悲しんでいるはずのシンディー様の声を聞いた私は、心が冷めていく感覚がした。
人が亡くなった。
事の責任を取って、自死した?
でも、でも、手を口にやるとき躊躇っていた。
あのとき、手に持っていた何かを服用したと思われる。
最初から持っていたか知らないけど、ただのメイドが独断でこんなことするとは思えない。
だから、これは・・・
口封じ?
そんな考えが頭に浮かんだとき、耳から入るシンディー様の泣き声が空々しく聞こえた。
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