56 / 68
校外学習その七
しおりを挟む
食事を終え少し経ったら、ノイス先生から明日の予定を聞かされる。
余談であるが、俺にこっそりと『私も鍋を食べて良いですか?』といってきたのは、みんなには内緒である。
少しばつが悪そうだったが、それくらいは良いと思う。
相変わらず、真面目な先生だよなぁ。
「えー、皆さん、どうでしたか? 狩りというのは大変でしょう? 探すもの一苦労ですし、倒すのも危険が伴います。ですが、あなた方はそれを毎日当たり前のように食べているのです。それは働いている猟師の方々や兵士達がいるからです。来ている服もそうですが、何気ない日常は誰かの頑張りによってつくられています。さて……明日は戦闘訓練があります。我々貴族は国を守ることが仕事です、そのことに自覚を持って取り組んでください」
「「「……はいっ!」」」
その返事には、気持ちがこもっていた。
やはり、今日の探索は相当大変だったのだろう。
「良いお返事ですね。それでは、これからは自由時間となります。といっても、多分疲れてそれどころじゃないと思いますが」
「やったぁ! 遊ぼうぜ!」
「何する!? トランプとかする!?」
「良いね良いね!」
あちこちで、そんな声が響く中、解散となったが……先生の言う通りになる。
自由時間なので、最初はみんなはしゃいでいた。
しかしお風呂に入った後、すぐに静かになっていく。
そもそも、今日は移動もあったから疲れている。
なので俺たちも、早めの就寝をすることにした。
「ふぁ……トール、トランプもたまにはいいね」
「そうだな。小さい頃は毎日のようにやってたよなぁ」
「そういや、そうだったね。俺とトールとセレナ……母上を混ぜてやったね」
それは幼き頃の大事な思い出だ。
まだ自分が何者かもわからずに、ただ幸せな日々を過ごしていた。
そして、それが永遠に続くと思っていたんだ。
「……ああ、そうだったな。そういえば、マリアちゃんは元気か?」
「ん? うん、最近は体調も良いみたいだよ」
「そいつは良かった。んじゃ、俺も来週は久々に顔を出すとするかね」
「おっ、助かるよ。なにせ、女子が多いと肩身が狭いし」
「ははっ! 間違いない! ……さて、俺たちも寝るか」
「そうだね。こうしてトールと寝るのも久々だなぁ」
「へっ、それもそうだ」
そうして俺たちは寝ると言いながら、その後もお喋りを楽しむのだった。
……こういうのって、なんか良いよね。
◇
翌朝、少し早く目が醒める。
割とスッキリ起きたので、そのまま起きることにした。
ひと気のない中、テントを出て水で顔を洗う。
「ふぅ……気持ちいいな」
「アレク、おはようですわ。これ、使いなさい」
ふと振り返ると、いつの間にかセレナがタオルを持って立っていた。
朝の光に金髪が照らされて輝いている……不覚にも、綺麗だなと思ってしまう。
ほんと、黙ってれば美人なことだ……無論、そんなセレナはつまらないが。
「おっ、セレナ、おはよう……ありがとな」
「べ、別に大したことじゃないわ」
「どうした? 随分と早起きだな?」
「……貴方がテントから出ていくのが見えたから」
「はい? なんだって?」
「なんでもないわよっ!」
「おいおい、まだ寝てる人もいるんだから静かに……ん?」
そこでふと、とあることに気づく。
俺はセレナに近づき……その髪に触れる。
「ふえっ!? な、な、なにっ!?」
「いや、寝癖がついてたから。今なら、俺は手が濡れてるし」
「えっ? ど、どこ!?」
「動くなって……よし、直った。せっかく綺麗な髪なんだから、きちんとしないともったいないもんな」
「っ~!?」
すると、みるみるうちに耳まで真っ赤になっていく。
「お、怒るなよ! ほ、ほら、みんな起きてきたから行こうぜ」
「お、怒ってないわよっ! ……アレクのバカ」
なにやら、ぶつくさ言うセレナを連れて、テントに戻るのだった。
余談であるが、俺にこっそりと『私も鍋を食べて良いですか?』といってきたのは、みんなには内緒である。
少しばつが悪そうだったが、それくらいは良いと思う。
相変わらず、真面目な先生だよなぁ。
「えー、皆さん、どうでしたか? 狩りというのは大変でしょう? 探すもの一苦労ですし、倒すのも危険が伴います。ですが、あなた方はそれを毎日当たり前のように食べているのです。それは働いている猟師の方々や兵士達がいるからです。来ている服もそうですが、何気ない日常は誰かの頑張りによってつくられています。さて……明日は戦闘訓練があります。我々貴族は国を守ることが仕事です、そのことに自覚を持って取り組んでください」
「「「……はいっ!」」」
その返事には、気持ちがこもっていた。
やはり、今日の探索は相当大変だったのだろう。
「良いお返事ですね。それでは、これからは自由時間となります。といっても、多分疲れてそれどころじゃないと思いますが」
「やったぁ! 遊ぼうぜ!」
「何する!? トランプとかする!?」
「良いね良いね!」
あちこちで、そんな声が響く中、解散となったが……先生の言う通りになる。
自由時間なので、最初はみんなはしゃいでいた。
しかしお風呂に入った後、すぐに静かになっていく。
そもそも、今日は移動もあったから疲れている。
なので俺たちも、早めの就寝をすることにした。
「ふぁ……トール、トランプもたまにはいいね」
「そうだな。小さい頃は毎日のようにやってたよなぁ」
「そういや、そうだったね。俺とトールとセレナ……母上を混ぜてやったね」
それは幼き頃の大事な思い出だ。
まだ自分が何者かもわからずに、ただ幸せな日々を過ごしていた。
そして、それが永遠に続くと思っていたんだ。
「……ああ、そうだったな。そういえば、マリアちゃんは元気か?」
「ん? うん、最近は体調も良いみたいだよ」
「そいつは良かった。んじゃ、俺も来週は久々に顔を出すとするかね」
「おっ、助かるよ。なにせ、女子が多いと肩身が狭いし」
「ははっ! 間違いない! ……さて、俺たちも寝るか」
「そうだね。こうしてトールと寝るのも久々だなぁ」
「へっ、それもそうだ」
そうして俺たちは寝ると言いながら、その後もお喋りを楽しむのだった。
……こういうのって、なんか良いよね。
◇
翌朝、少し早く目が醒める。
割とスッキリ起きたので、そのまま起きることにした。
ひと気のない中、テントを出て水で顔を洗う。
「ふぅ……気持ちいいな」
「アレク、おはようですわ。これ、使いなさい」
ふと振り返ると、いつの間にかセレナがタオルを持って立っていた。
朝の光に金髪が照らされて輝いている……不覚にも、綺麗だなと思ってしまう。
ほんと、黙ってれば美人なことだ……無論、そんなセレナはつまらないが。
「おっ、セレナ、おはよう……ありがとな」
「べ、別に大したことじゃないわ」
「どうした? 随分と早起きだな?」
「……貴方がテントから出ていくのが見えたから」
「はい? なんだって?」
「なんでもないわよっ!」
「おいおい、まだ寝てる人もいるんだから静かに……ん?」
そこでふと、とあることに気づく。
俺はセレナに近づき……その髪に触れる。
「ふえっ!? な、な、なにっ!?」
「いや、寝癖がついてたから。今なら、俺は手が濡れてるし」
「えっ? ど、どこ!?」
「動くなって……よし、直った。せっかく綺麗な髪なんだから、きちんとしないともったいないもんな」
「っ~!?」
すると、みるみるうちに耳まで真っ赤になっていく。
「お、怒るなよ! ほ、ほら、みんな起きてきたから行こうぜ」
「お、怒ってないわよっ! ……アレクのバカ」
なにやら、ぶつくさ言うセレナを連れて、テントに戻るのだった。
556
あなたにおすすめの小説
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!
山田 バルス
ファンタジー
王宮大広間は春の祝宴で黄金色に輝き、各地の貴族たちの笑い声と音楽で満ちていた。しかしその中心で、空気を切り裂くように響いたのは、第1王子アルベルトの声だった。
「ローゼ・フォン・エルンスト! おまえとの婚約は、今日をもって破棄する!」
周囲の視線が一斉にローゼに注がれ、彼女は凍りついた。「……は?」唇からもれる言葉は震え、理解できないまま広間のざわめきが広がっていく。幼い頃から王子の隣で育ち、未来の王妃として教育を受けてきたローゼ――その誇り高き公爵令嬢が、今まさに公開の場で突き放されたのだ。
アルベルトは勝ち誇る笑みを浮かべ、隣に立つ淡いピンク髪の少女ミーアを差し置き、「おれはこの天使を選ぶ」と宣言した。ミーアは目を潤ませ、か細い声で応じる。取り巻きの貴族たちも次々にローゼの罪を指摘し、アーサーやマッスルといった証人が証言を加えることで、非難の声は広間を震わせた。
ローゼは必死に抗う。「わたしは何もしていない……」だが、王子の視線と群衆の圧力の前に言葉は届かない。アルベルトは公然と彼女を罪人扱いし、地下牢への収監を命じる。近衛兵に両腕を拘束され、引きずられるローゼ。広間には王子を讃える喝采と、哀れむ視線だけが残った。
その孤立無援の絶望の中で、ローゼの胸にかすかな光がともる。それは前世の記憶――ブラック企業で心身をすり減らし、引きこもりとなった過去の記憶だった。地下牢という絶望的な空間が、彼女の心に小さな希望を芽生えさせる。
そして――スキル《引きこもり》が発動する兆しを見せた。絶望の牢獄は、ローゼにとって新たな力を得る場となる。《マイルーム》が呼び出され、誰にも侵入されない自分だけの聖域が生まれる。泣き崩れる心に、未来への決意が灯る。ここから、ローゼの再起と逆転の物語が始まるのだった。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる