田舎貴族の学園無双~普通にしてるだけなのに、次々と慕われることに~

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挨拶回り

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そうと決まったら大変だ。

明日の朝には出なくちゃいけないとかアホなのかな?

とにかく、各所に挨拶に回る。

まずは街に繰り出し、行きつけのお店や知り合いを訪ねていく。

「おっちゃん! 俺、明日から王都に行っていないからー!」

「なにぃ!? なにしに行くんだ!?」

「わからん!」

「なんじゃそりゃ!?」

「父上の命令だから!」

「そいつはしゃあないな! 気をつけていけよ!」

大体、この父上からの命令で皆が納得して詳しく聞いてこない。
これも普段から俺に無茶振りする父上の、日頃の行いのせいってやつだ。

「ふぅ、こんなものかな。大体、あの辺の人達に言っておけばみんなに伝わるでしょ」

「おっ、ユウマじゃん。こんなところでなにしてんだ?」

「げげっ、ライカ師匠……」

そこには俺の武術の師匠であるライカさんがいた。
虎獣人の女性で髪は黄金で、顔に紋様とお尻にある尻尾が特徴だ。
身長は百七十五くらいある俺と同等の、背の高いスタイル抜群の美人なお姉さん……その凶暴な中身を除けば。

「ほほう? 師匠に向かって良い度胸だ」

「だァァァ! すみませんって! いや、父上に王都にある学校に行けって言われまして……」

「あん? ……昼飯を奢ってやるから詳しく聞かせてもらおうか」

俺に逆らえるわけもなく、ひきづられるようにして連行される。
適当な店に入り、串焼きや麺などを食べていく。
どうせだったら、たらふく食べてやる!

「もぐもぐ……うん、美味い」

「相変わらずいい食いっぷりだな。とてもじゃないが、貴族様の息子とは思えないね」

「いやいや、師匠が言ったんじゃないですか。どんな時でも、食えるようにはしておけって。戦場でもダンジョンでも、まずは食えない者から死んでいくとかなんとか」

「まあ、間違っちゃいないが。動けなくなった者から死んでいくって意味だ。まあ、食えないと動けないは合ってるな」

この人は俺が動けなくなるまでしごいてから、また食わせて休ませてしごくという、鬼のようなことをさせてきた。
そのおかげか、どんなに疲れていても動いたり食うことはできる体にはなった。
その後ある程度満足したので、事情を説明する。

「ふーん、そういうことか。まあ、国王の命令なら仕方ない。それに、世間を知るっていうのも一理あるな。お前は魔物退治とか少ないし、ダンジョン攻略はしたことないし」

「師匠も確か、冒険者になって大陸を旅してたんですよね? それこそ、魔物退治やダンジョン攻略とか」

「ああ、そうだね。あちこちの国に渡って嫌なこともいいことも経験したさ。結果的に、今はここに落ち着いているけど」

「なるほど……まあ、確かに俺は世間知らずではありますね」

基本的に、辺境と言われるこの地から出たことがない。
行ったとしても精々、隣にある領地くらいだ。
王都にも行ったことないし、他国にも行ったことがない。
父上にそんな暇があれば鍛錬をしろって言われてきたし。

「はんっ、仕方がないだろうよ。お前は……アレだしなぁ」

「何です、あれって」

「いや、いいさ。いずれわかるだろうよ。んじゃ、最後に稽古しとくか」

「うげぇ……拒否権は?」

「あると思うのかい?」

「ですよねー」

休憩も大してないまま、館に連行される。
すると、門の前に義理の母と妹と弟がいた。
父上の後妻であるヘレンさんと、四歳になる妹のマリアに六歳になる弟のルークだ。
俺とは顔も似てないし、髪の色も銀髪の俺に対して二人は母親譲りの金髪だ。
もちろん、俺にとっては三人共大事な家族だ。

「お兄様!」

「兄上!」

「おっと、二人とも……なるほど、話を聞いたってわけか」

飛び込んできたと思ったら、その目には涙が伺える。
俺の話を聞いて、門の前で待っていたのだろう。
うんうん、可愛いやつらよ。

「お兄様、遠く行っちゃやなの」

「兄上、僕……寂しいけど、兄上の代わりに頑張ります!」

「マリア、ごめんね。ルーク、よく言った。二人とも、俺もできれば行きたくないけど国王陛下の命令らしいから」

「うぅー……」

「ほら、マリア。兄上が困ってるじゃないか」

いやはや、困ったものだ。
俺はマリアには甘いからなぁ。
すると、見かねたのかヘレンさんが動く。

「マリア、わがままを言ってはいけません。ユウマ殿は、もっと大きく成長する為に行くのですから。帰ってきたときに、マリアも成長してる姿を見せましょう?」

「……お兄様、 褒めてくれりゅ?」

「ああ、もちろんさ。 立派なレディーになってたらご褒美をあげよう。そうだなぁ、何でも好きなことを頼むといい」

「ほんと? ……あい! いい子でいるもん!」

「よし、いい子だ」

「ただ……今日は一緒に寝てもいい?」

「ぐはっ!」

その無垢な瞳に心臓がやられる!
うちの妹、可愛すぎやしないか!?
あまりの衝撃に、思わず膝をついてしまう。

「お兄様?」

「あ、当たり前さ! ばっちこい!」

「わぁーい!」

マリアが抱きついてくるのを受け止めて、くるくると回る。
すると、玄関の扉を開けてエリスが出てくる。

「なにを騒いでいるのですか?」

「おっ、いいところに来た。こいつが明日には出るっていうから鍛錬をしようと思ってな」

「ほうほう、それは良いことですね。では、ついでに魔法の稽古もしましょうか」

「いやいや、二人同時とか冗談じゃないし……冗談だよね?」

「「ふふふ」」

「ひぃ!? やめてぇぇ!」
 
逃げようとする俺の肩を二人が掴む。

そして、そのまま庭へと連れて行かれるのだった。

……二人のせいで良い場面が台無しだよ!
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