静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

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冬馬君の自制心は……

冬馬君は彼女が可愛いが止まらない~後編~

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 さて、今俺達は手を繋ぎ、喫茶店アイルに向かっている。

「あ!この辺!」

「そうだな、綾が絡まれていた場所だな」

「う、うん……冬馬君、改めて本当にありがとうございました!」

「まあ、あの時は……正直言って、面倒だと思っていたが、結果的に良かったよ。大切な女の子を守れたんだし」

「た、大切……どうしよう……」

「なんだ?後悔したか?俺は重いと言っただろ?」

「ううん!嬉しいよ!ただ、心臓が……」

「そうか…なら、出来るだけ抑えるとしよう」

「え!?そ、それはそれで嫌というかなんといいますか……はぅ……」

 これは……妹がよく言っている、乙女心は複雑というやつか?
 とりあえず、可愛いのだが……まあ、押し付けは良くないよな。
 いや、でも……喜んでいるから押し付けてはないのか?

「お互いに慣れていくしかないかもな。嫌だったら言わないから、その時は言ってくれ」

「そんな時はきません!絶対に!」

「お、おう。そうか」

「ご、ごめんなさい」

「謝ることはないさ。ほら、行くぞ」

「うん!」

 そして、喫茶店アイルに到着し、一度手を離して中に入る。

「いらっしゃいませ、お客様……おや?冬馬君でしたか。1人でないとは珍しいですな。いや、これは失礼しましたね。お客様の詮索はご法度でした」

「マスターは相変わらずですね。大丈夫ですよ。むしろ、紹介させてもらってもいいですか?これから、連れてくるかもしれないので」

「ほう?冬馬君がそういうのならば、大切なお方ということですか。では、私も挨拶をしなくてはですな……ゴホン!初めまして、お嬢さん。当店のマスターでございます。冬馬君とは、四年ほどのお付き合いになります。以後、よろしくお願いしますね」

「は、はい。ご丁寧にありがとうございます。私の名前は、清水綾と申します。その、えっと……冬馬君の、か、彼女です……」

 なんつー可愛さだ!!
 俺を殺す気か!!

「これはこれは……どうやら、壁をぶち破る方が現れたようですね?」

「ええ、マスター。とっても、可愛くて素敵な女の子なんだ」

「はぅぅ……!」

「ホホ、いいですな。若いというのは……では、いつもの席へどうぞ」

「ありがとう、マスター。綾、いくぞ」

「は、はい……」

 2人で向かい合って、いつもの席に座る。

「へぇー……いつも、ここで……うん、良いところだね。マスターさんも、紳士的だね」

「だろ?ああいう大人になりたいものだな。まだまだだけどな」

「ふふ、冬馬君なら、素敵な大人になれると思うな」

「そ、そうか……ありがとな」

「あれ?……もしかして、照れてるの?ふふ、やったね」

「こりゃ、まいったな……」

 その後、いつものように、マスターがタイミングよくきたので注文をする。

「ンー!?これ、美味しい!」

「だろ?マスターのナポリタンは格別に美味しいんだ。オリジナルのタレを、仕上げに入れるらしい」

「へぇー!そうなんだね!」

 食事が終わるタイミングで、マスターが紅茶とコーヒーを持ってきてくれた。
  俺は綾に気づかれぬように、マスターにあるものを渡す。
 よし……気づかれてないな。

「うん!美味しいね!私、甘すぎなくて好きかも」

「それは、良かった。マスターは見ただけで、大体の好みがわかるらしいからな」

「すごいね、それ。やっぱり、長年の経験ってことかな?」

「まあ、そうだろうな」

 やはり、ここで正解だったな。
 綾の緊張というか、自然な状態になっている。
 さすがは、マスターだ。

 そしてお喋りを楽しんだ後、店を出ようとする。

「あれ!?会計済んでないよ!?」

「大丈夫だ、もう払ってあるから」

「はい、冬馬君から頂いております。では、お気をつけて」

「マスター、ご馳走さまでした。また、来ますね」

「え?え?ご、ご馳走さまでした!美味しかったです!」

 戸惑う綾の手を引き、店を出る。

「冬馬君!?いつ払ったの!?」

「うん?まあ、いいだろ。初デートなんだから、俺に払わせてくれ」

「え?う、うん、いや、でも……」

「最初くらい、俺にカッコつけさせてくれ。ダメか?」

「だ、ダメじゃないですぅ……」

「そっか、ありがとな。さあ、いくぞ」

 さて、いよいよアレである……俺の自制心よ!!ここが踏ん張りところだぞ!!





「ちょっと、緊張するね……私、男の人と2人でくるの初めてだから……」

「大丈夫だ、俺も初めてだ……少し、緊張するな……」

「冬馬君も……?そっか、エヘヘ」

「じゃあ、俺から入れるか」

「う、うん!どんなの歌うんだろ?」

 はい、というわけで、カラオケです。
 ……何か、勘違いしましたかね?
 ……健全なカラオケです。
 たまにいる、盛っている高校生のようなことはいたしません。

 ……いや、カラオケって自制心必要だと思わないか?
 好きな女の子と、何時間も密室に一緒という……あんま、考えるのやめよう。

「まあ、ジャニー○系か、アニメ主題歌が多いかな。とりあえず、いつもので良いか」

 入力し、イントロが流れ始める。
 そして、気合いを入れて歌いだす。

「え!?凄い!冬馬君、上手!!」

 ふっ、ぼっちの自主練を舐めちゃいかんぜよ。

「フゥ……緊張したな」

「凄いね!私、色々聞いてきたけど、一番上手いと思うよ!」

「そ、そうか。うむ……悪くないな」

 綾となら、カラオケも楽しめそうだな。

「え?なにが?」

「いや、楽しいと思ったんだよ。ほら、綾の番だぞ?」

「は、恥ずかしいね……下手でも、笑わないでね!?」

 そしてイントロが流れ、綾が歌いだす。

 ……これは……破壊力があるな……めちゃくちゃ可愛いんだが。
 決して上手いわけではないが、とにかく声が可愛い。
 別に、ぶりっ子のような歌い方をしているわけでもないのに……。
 元々の声が良いのと、単純に俺の好みなのかもな。

「ふぅ……緊張したぁ……ど、どうかな?」

「可愛いが炸裂した」

「え?………えぇー!?」

「可愛さがゲシュタルト崩壊した」

 マズイ……!止まらない!!

「あ、ありがとう?なのかな?」

「……ああ、褒めている。とても、良かった。俺好みの歌声だった」

「ほんと!?良かったぁ!」

 ……カラオケは危険だ……。
 己を律する鍛錬も必要かもしれん……。




 その後、なんとか乗り越えることが出来た……。
 カラオケでイチャつくんじゃねえ!と思っていたが、アレは危険なものだ。
 もちろん、カラオケでそんなことはしないが、理解はできる。

「楽しかったね!また、来てもいいかな……?」

 そんな可愛い顔で言われて、断れる奴なんかいないだろ……。

「ああ、良いよ。俺、ガンバル」

「ん??なんで、頑張る……?そして、カタコトなんだろう……?」

 その後、綾の追求を逃れ、家まで送り届ける。
 もちろん、綾は再び着替えている。
 今日は、夕方からバイトだからな。

「冬馬君!ありがとう!今日は、とっても楽しかったです!」

「それなら良かったよ。その、なんだ、俺も楽しかったしな」

「冬馬君……」

「じゃあ!俺帰るわ!バイト行ってくる!」

 俺は照れ臭くなり、バイクのエンジンをかけて発進する。

「ありがとねー!バイトあるのにデートしてくれてー!バイト頑張ってねー!」

 その言葉を背に聞きながら、俺は思う。

 惚れてまうやろー!!いや、惚れているけれども!!

 アイツ、可愛すぎるだろーー!!
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