前世で家族に恵まれなかった俺、今世では優しい家族に囲まれる 俺だけが使える氷魔法で異世界無双

おとら@ 書籍発売中

文字の大きさ
2 / 51
1巻

1-2

 2 魔法の儀式


 それから半年が過ぎ、三歳の誕生日を迎え……いよいよ、俺が儀式を受ける日になる。
 それは同時に、お外デビューを意味する。この世界は危険が多く、三歳の誕生日を迎えるまではなるべく外に出てはいけない。なので、実は俺も外に出るのは初めてなのである。
 初めての外……内心はドキドキである。
 何せ、転生してるとはいえ、もう俺はアレスとして生きている。というか、身体に精神が引っ張られるのか、ほとんど子供に近い。姉さんや兄さん、両親に甘えるのも生まれた頃から抵抗感なかったし。
 つまり頭脳も容姿も子供! その名もアレス! 
 ……うん! ただの子供だね!
 準備を済ませたら、父上に手を引かれ、家族に見送られる。

「アレス、いってらっしゃい」
「はい、母上!」
「ふふ、立派になったわね」
「わ、私もついていった方が……」
「おい、姉貴。それはだめって言ったろ」
「わ、わかってるわよ!」
「姉さん、大丈夫です。僕、頑張っていってきます」
「アレス……大きくなって!」

 すると、いつものように抱きしめられる!

「うひぁ!? い、痛いです……」
「まったく、お前たちときたら……ほら、離してやれ。司祭様が待っているので、遅れるわけにはいかん」
「そ、そうだったわ」
「アレス、別に大したことないから平気だぜ」
「うん、兄さん……ではいってきます!」


 そのまま、家を出て歩くと……馬を用意したエリゼが待っていた。
 きっと、幼い俺のためだろう。

「旦那様、アレス様、馬の用意ができています」
「よし、アレス。準備はいいな?」
「はい、父上」
「うむ」

 父上が先に馬に乗り、俺はエリゼによって持ち上げられ、父上の前に座らされる。

「エリゼ、家のことは頼んだ」
「はい、旦那様」
「よし……行くぞ」


 ゆっくり馬が歩きだし……畑道を通過していく。

「わぁ……」
「ふふ、どうだ?」
「人がいっぱいです! 広いです!」

 遠くを見れば広大な森が見え、両隣の畑では人々が作業している。
 その畑の近くには家々が並んでいて、人々の生活が見える。
 そして、思ったのは西洋風の世界ということだ。
 人の容姿はもちろんのこと、家の建物や風景なんかも。

「まあ、お前にとっては広い世界だろうな。ただ、世界はもっと広い。いずれ、お前も見てみるといい」
「……僕は領地にいない方がいいですか?」

 気のせいかもしれないけど、遠回しに領地から出ていくように勧められた気がして、口にしてしまった。

「いいや、そんなことはない。ただお前は次男だからな。自分の道を見つけてほしいのさ」
「うーん……兄さんや父上の仕事を手伝っちゃだめかな?」
「いや、そんなこともないさ。お前は、お前の好きに生きたらいい」
「はいっ!」
「いい返事だ。ほら、手を振ってやれ」

 隣を見ると、畑から人々が手を振っているのが見える。

「アレス様ですかー!?」
「こんにちは!」

 次々と、そんな言葉が飛んでくる。

「こ、こんにちはー!」

 父上が馬を止める。俺が緊張しながらも手を振ると、みんなが笑顔で応えてくれた。

「次男のアレスだっ! 三歳を迎えたので、これから外に出ることもある! 皆の者、よろしく頼む!」
「「「はいっ!」」」
「うむ。ではな」
「お仕事中失礼しました~!」

 再び馬は歩きだす。

「父上は、ここの領主ですよね?」
「ああ、オルレアン皇国に仕える男爵家だ」
「どのくらいの広さがあるのですか?」
「難しい質問だな……例えば、あの森一帯も領地だ」
「それって、さっき見えた森ですか?」
「ああ、そうだ。ただし、まだまだ開拓はできていない。我々が管理しているのは、本来の領地の一部分ということだ」
「そうなんですね」
「あそこを開拓できれば、子供たちに……たみまずしい思いをさせなくて済むのだが……私の力が足りないばかりに……いや、気にするな」
「父上……」


 引き続き、馬を歩かせていると……。
 住民の方々が、次々と父上に挨拶あいさつをしてくる。そんな中、他とは違う見た目の人がやってくる。俺はその容姿を見て、驚いて固まってしまう。

「領主様、お疲れ様です!」
「うむ、ご苦労。どうだ、この辺りには慣れたか?」
「はいっ! おかげ様で!」
「我々を引き取ってくださり、ありがとうございます!」
「何、気にするでない。きちんと働いてくれたら、それだけでいい」
「へへ、もちろんでさ!」
「よし! 俺たちも、もう一働きするか!」

 そして、再び畑仕事に戻っていく。

「あ、あれって……」

 今さっき挨拶をしてきた人には、頭に耳が付いていて、お尻には尻尾しっぽがあった。

「ああ、初めて見るだろうな。彼らは獣人族と呼ばれる者たちだ。人に近い見た目に、耳と尻尾があるのが特徴だ」
「へぇ、あれがそうなんですね」

 以前、兄さんが読んでくれた本に書いてあった。
 この世界には五種類の種族がいる。その五種類とは、ドワーフ族、エルフ族、獣人族、人族、魔族だったはず。
 エルフ族は希少で、森の奥に住んでいて人前に出ることはほとんどない。魔法や弓を使うことにけていて、風や水属性の使い手のみが生まれるらしい。
 一方、ドワーフ族の数は少なくなく、人族に交じって生活している。武器の扱いや作製に長けていて、火属性と土属性の使い手のみが生まれるらしい。
 獣人は種類も多く、人族の次に数が多い。高い身体能力を持っているが、魔法を使うことができない。人族の生活に溶け込んでいるが、あまり扱いは良くない場合もあるらしい。
 人族はこの大陸で一番数が多い。なので、国を治めているのも人族だ。特にひいでた能力は持たないけど、全ての属性魔法の適性を持つ。時折、英雄と呼ばれる者が現れることもある。勇者や聖女も人族だったらしい。
 最後の魔族についてはよくわかっていないらしい。伝承にあるのみで、そもそも存在するのかどうかって感じだ。

「ああ、彼らも私たちの領民だ。差別することなく接してくれると……父としては嬉しい」
「はいっ! もちろんです! その……さっきはびっくりして挨拶できなかったけど、次はきちんとします」

 ケモミミをもふもふしたいし! そのためには仲良くならないと!

「……良い子だ。そうだな、びっくりするのも無理はない。大丈夫だ、彼らもわかっている。また、連れてくるとしよう」
「はいっ! 父上とお出かけしたいです!」
「ははっ! そうかそうか!」


 その後も馬が進むと、人々が寄ってきて挨拶をしてくる。父上はそのたびにきちんと止まり、丁寧に返事をしていた。
 ……どうやら、父上は良い領主さんのようです。
 やっぱり、何か力になれたらいいな。
 初めてできた、大事な家族だもん。


 * * *


 そうしてしばらく馬を歩かせると……一際ひときわ目立つ建物が目に入る。
 というか、どう見ても西洋風の教会だった。

「アレス、あれが大陸全土に名が広がっているマリアンヌ教会の支部だ。全ての者は、三歳になると祝福の儀を受ける。魔法の儀式とは別にな」
「どうしてですか?」
「悲しいことに、三歳まで死んでしまう者が多いからだ。だから、三歳になると祝福を受ける」
「なるほど……」
「たまに神託しんたくがあり、勇者や聖女認定されたり……」
「えっ!? そんなのあるんですか!?」
「ははっ! お前も男の子だな! まあ、そうそうあるまい」
「いや、父上。そういうのはフラグって言うんですよ?」
「フラグ? それはなんだ?」
「えっと……ナンデモナイデス」
「ふっ、変な奴だ」

 おっと、危ない危ない。流暢りゅうちょうに喋れるようになってきたから、色々と言葉が出てきてしまう。前世の言葉とかには気をつけないとね。
 そもそも、三歳の時点でこれだけ話せるのもどうかと思うんだけど。
 それはさておき……俺は転生してるのにまだ神の啓示けいじとか受けてない。だからと言ってはなんだけど、実は勇者だった! とか来ちゃうんじゃない?


 ……結果からいうと、俺はただの人だった。
 特にこれといったこともなく、ありがたい? お言葉をいただき、ささっと終わってしまった。
 まあ、良いけどね! 本番は次の魔法の儀式だし!
 さすがに魔法は使えるよね?


 その後、いよいよ……魔法の儀式となる。ホールにある女神像の前で洗礼を終えたので、司祭様の部屋に移る。
 すると、年老いた司祭様が、俺の前に水が入ったコップを置く。

「それでは、準備はよろしいですか?」
「はいっ!」
「ほほ、元気がよろしいですな」
「どうやら、勇者になれなくて落ち込んではいないようだな?」
「まあ、別に勇者になりたいってわけじゃなかったんです。シグルド兄さんが、そういう本を読んでくれたので」
「そういうことか」

 まあ、そういうテンプレみたいなものに憧れてたけど。でも、どうしてもってわけじゃない。
 さすがに、魔法が使えないと落ち込むけどね……ドキドキ。

「ほほ、では始めましょう」
「えっと、どうすればいいのですか?」
「このコップは、魔力を通すと不思議な現象を起こしてくれるアイテムです。いにしえより伝わり、属性魔法を行使できるほどの魔力を持っている者にだけ、特殊な反応を示します」
「そうなんですね」
「ええ。アレス様はこのコップを両手でそっと持ってください。そうすれば、あとはコップが反応いたします」
「はい、わかりました」

 言う通りに、恐る恐る両手でコップを持つと……水があふれ出る!
 同時に、何やら温かいモノが身体中を駆け巡る!

「うわっ!? ど、どうしよう!?」
「大丈夫ですよ、我々があとで片付けますから」
「アレス、落ち着け」
「は、はい」

 床は、俺が出した水? でびちゃびちゃになっている。

「なるほど、魔法の才能はあるか……ふむ、水属性で良かったと思っておくべきか」
「父上?」

 今のは、どういう意味だろう?

「いや、水魔法は使い勝手が良いからな。攻撃には特化してないが、光魔法を除けば唯一回復魔法を使える属性だ。司祭様、よろしければ、このまま説明していただけますかな?」
「ええ、かしこまりました。グレイ様の言う通りです。人々の生活の役に立つこともできますし、様々な場面で役に立つことでしょう」
「はぁ、そうなんですね」

 なんだろ? 気のせいか……あんまりめられてる気がしない。
 わざと、良く言っているかのような感じだ。

「まあ、魔法が使えるだけ素晴らしいことです。一応言っておきますと、先ほどの儀式は、火属性なら水が減り、土属性ならコップ自体が震え、風属性なら水がゆらゆら揺れます。アレス様の場合は水が溢れたので水属性ということですな」

 俺は司祭様にお礼を言う。

「司祭様、説明ありがとうございます。それで、このあとはどうやったら魔法を使えるようになるんですか?」
「すでに、あなた様の中には魔力があるはずです」
「さっき、一瞬だけど温かいモノを感じました」
「それが魔力です。その感覚を持って、魔法を行使すれば発動するはずです。もちろん、魔力量は人によって異なりますから、まずは初級から慣れていくことですな」
「えっと……魔力量はどうやって増やすのですか?」
「正確なことはわかっていませんが、使い続けていくと増えていく傾向があります。もしくは、成長や実戦経験などを積むことで。しかし、その限界は人によって異なります。言っておきますが、魔力枯渇こかつは命に関わるのでご注意ください」

 なるほど……前世でよく読んでいた小説では、魔力枯渇を繰り返して魔力の総量を増やすとかあったな。でも、それをすると、最悪死んじゃうってことか。
 二回も死にたくないし、それはやめておこうっと。

「減った感覚とかは、使えばわかるのですか?」
「本当に賢い方ですな。ええ、感覚的にわかってくるはずです。きっと、お父上が師匠ししょうを用意して……いえ、エリゼ殿がいましたね」
「ええ、幸いにもエリゼがいますから。属性は違いますが、ヒルダもいますし」

 そう返答する父上に続いて、俺は言う。

「そっか、二人に習えばいいんだ」
「ええ、私より詳しいはずですから。それでは、このあたりでよろしいでしょうか?」
「はい、司祭様。どうもありがとうございました!」

 俺は姿勢を正し、しっかりとお辞儀をする。父上に恥はかかせたくないし。

「ほほ、これはこれはご丁寧にありがとうございます。将来が楽しみですな」
「ええ、まったく。司祭様、ありがとうございました。それでは失礼します」

 父上がそう言って二人で挨拶をすると、再び馬に乗り、自宅に向けて進みだした。


 ある程度離れたので……俺は抑えていたものを解き放つ!

「やったァァァ! 魔法が使えます!」
「良かったな、アレス」
「はいっ! 水魔法なら領地に貢献もできます!」

 生活水もそうだし、お風呂なんかも入れられる。

「ふむ、それは助かるが……アレスは何かしたいことはあるか? 私たちの領地を手伝う以外で」
「うーんと……一度は、冒険者にはなってみたいです」

 この世界には冒険者という職業があり、割とポピュラーだ。護衛、荷物運び、魔物を倒したり、ダンジョンに入ったりなど様々な仕事がある。
 最近シグルド兄さんがそういう本を読んでくれたから、少しだけは知っている。
 やっぱり、そういうものに憧れはある。

「そうか、冒険者か……それもいいかもしれないな。よし、少ししたら剣の稽古けいこも始めるとしよう」
「いいんですか!?」
「もちろん。だが、本物はだめだぞ? お前はまだまだ子供だから、ひとまず木の剣で基礎の基礎からだ。それでも少し早すぎるが……お前なら平気だろう」
「はいっ! やりますっ! 頑張りますっ!」
「良い返事だ」

 そう言い、俺の頭を撫でてくれる。
 よーし! みんなのために魔法を覚えて、剣の稽古をして……。
 えっと……とにかく色々やっていくぞぉ~!



 3 チート?


 俺が家に到着すると……。

「アレス! どうだったの!?」
「姉さん! 僕は魔法が使えます!」
「やったわね!」
「はいっ!」

 姉さんに抱っこされ、くるくると回される。

「ふふ、良かったわ」
「ちぇ、ずるいぜ。俺だって魔法を使いたかったし」

 不貞腐ふてくされる兄さんに父上が言う。

「シグルド、気にすることはない。俺だって使えないからな。お前は俺に似ているから、そのまま槍を極めればいい」
「……はいっ!」

 ……そっか、兄さんは魔法が使えないんだった。その代わりと言ってはなんだけど、槍の才能がある……。
 でも俺は、無神経に喜んでしまった。

「兄さん、ごめんなさい……」
「別にお前が謝ることじゃないだろ。というか、俺が謝ることだ。何、気にすんなよ。少しだけ仲間はずれな気がしただけだ」

 そう言って、俺の頭を乱暴に撫でる。

「兄さんは兄さんです!」
「ははっ! 何を当たり前なことを……まあ、ありがとな」
「……そうよ、シグルド。あなたも、私の大事な弟よ」
「き、気持ち悪いな……イテッ!? なんで殴るんだよ!」
「殴るに決まってるじゃない! 気持ち悪いとは何よ!」

 姉さんが、兄さんを追いかけ回す。
 そんな二人の様子はおかしかったけれど、少しだけ疎外感そがいかんを覚える。歳が離れているから、俺だとああいう感じにはならないし。

「わ、悪かった! 謝るから! アレス! なんとかしろ!」
「兄さん、今のは兄さんが悪いよ。うんうん、大人しく殴られた方がいいと思います」
「は、薄情者はくじょうもの! ええいっ! こうなったら!」
「わぁ!? 兄さん!?」

 突然、兄さんが俺の後ろに回り……そのまま抱き上げる。

「ククク、これでどうだ? 手が出せまい」
「姉さん! 助けてぇぇ~!」
「くっ!? 卑怯ひきょうね!」
「ったく、何をやっているんだか」
「ふふ、いいじゃない。兄弟仲良くて」
「ええ、奥様のおっしゃる通りかと」

 父上たちに見守られながら、俺たちはわちゃわちゃと遊ぶのだった。
 ……もしかしたら、兄さんが気を遣ってくれたのかもね。まあ……単純にふざけてた可能性はあるけど。


感想 92

あなたにおすすめの小説

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた

歩人
ファンタジー
侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「お前の看病は必要ない」と追放された令嬢——3日後、王子の熱が40度を超えても、誰も下げ方を知らなかった

歩人
ファンタジー
「お前の看病などいらない。薬師がいれば十分だ」 王太子カールにそう告げられ、侯爵令嬢リーゼは静かに宮廷を去った。 誰も知らなかった。夜ごとの見回り、薬の飲み合わせの管理、感染症の予防措置——宮廷の健康を守っていたのは薬師ではなくリーゼだったことを。 前世で救急看護師だった記憶を持つ彼女は、辺境の診療所で第二の人生を始める。 一方、リーゼが去った宮廷では原因不明の発熱が蔓延し、王太子自身も倒れる。 迎えに来た使者にリーゼは告げる——「お薬は出せます。でも、看護は致しません」

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。