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一章 義妹を預かる

お迎えと顔見せ

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 それからの日々は過ぎ……。

 今日から、二人と一緒に住む日がやってくる。

 兄貴と桜さんは、今頃飛行機の中だろうな。

 三時の待ち合わせ時間を目安に、二人を迎えに駅へと歩いていく。

「さて、そろそろ……おっと、来たか」

「お、お兄ちゃん!」

「おじたん!」

「よう、二人共。元気にしてたか?」

 少し目の下が赤いことはあえて触れない。
 寂しいに決まってるよな。

「う、うん……あっ——お世話になります!」

「お、おしぇわ……なります!」

「クク、こちらこそよろしくな」

 二人を連れて商店街を歩いていく。

「わぁ~人がいっぱいいる」

「お姉ちゃん! 人いっぱいだお!」

 二人がこういうのも無理はない。
 田舎暮らしがしたかった兄貴達は、埼玉でも田舎の方に住んでいた。
 それこそ、電車のドアが手動だったり、駅員がいなかったり……。
 ここも埼玉だが、あちらとは雲泥の差だろうな。
   距離的には大したことないのに……なんでこんなに差が出るかね?

「買い物したかったら、ここの八百屋が良い。綺麗なお姉さんがサービスしてくれるからな」

「やだよ! もう! 芹沢さん、その二人が例の娘さんかい?」

「ええ、よしえさん。春香、詩織、俺の行きつけの八百屋さんの奥さんだ」

「よ、よろしくお願いします!」

「あいっ!」

「あら、可愛い子達ね。ええ、いつでも来てちょうだい。貴方達のお兄さんには、私達もお世話になってるから」

「いえ、こちらこそお世話になってます。いつも新鮮な野菜を頂いていますから」

 俺の経営している飲食店の野菜は、ここでいつも購入している。
 売り上げに貢献する代わりに、宣伝もしてもらえるしな。


 その後も店を紹介しつつ、俺の家へと向かう。
 理由はいくつかあるが、一番大きな理由は……俺が通報されないようにだ。
 もしくは通報されても庇ってもらえるようにだ。
 女子高生と幼女を連れたアラサーおっさんとか……捕まる案件だ。
 俺のそんな苦労も知らず、二人は楽しそうだ。

「ふふ~ふ~ん、お店がいっぱい!」

「これなら、色々買い物できるね」

 まあ、良いか……これから寂しい気持ちになることは避けられない。
 今のうちに楽しんでもらうとするか。



「はい、ストップ。ここが俺の家であり、俺の城でもある」

「わぁ……! ここがお兄ちゃんのお店……!」

「ここがおじたんの家なの? 階段が上にあるお?」

「一階が店舗で、二階が住処になっている。さあ、まずは荷物を運ぶ。ほら、二人とも」

「ふえっ? じ、自分でできるよ! トランク二個なんて無理だよっ!」

「はっ、飲食店の男を舐めるなよ? こちとら、重たい寸胴を持ち上げることもあるんだぜ?」

「で、でも……」

「大丈夫だって。お前が怪我でもしたら困る」

 俺が兄貴に殺される。

「お、お兄ちゃん……うん、お願いします」

「おねたいします!」

「はいよ」

 俺は二人からトランクを預かり、階段を上っていく。

「おじたん凄いお!」

「はは、そうだろ。よっこらしょと……」

 階段脇にトランクを置く。

「お兄ちゃん、力持ち……が素敵」

「ん? 春香、何か言ったか?」

「う、ううん! なんでもないのっ!」

「おねえたん? へんにゃの」

「ほら、とりあえず中に入りな」

 ドアを開けて、階段を上ってきた二人を先に入れる。

「お、お邪魔しまーす……」

「おじゃまーす!」

「ププッ!?」

 い、いかん! 『おじゃまーす』がつぼった!

「おじたん?」

「お兄ちゃん?」

「い、いや、気にするな。ほら、そこが洗面室になってるから。まずは手洗いうがいをしなさい」

「「はーい!!」」

 可愛いらしい声が重なり、二人して洗面所に入る、

「さてと……この荷物をあの部屋に運んでと」



 荷物を移動した後、俺も手洗いうがいをし。
 ひとまず、リビングで落ち着くことにする。

「ここがお兄ちゃんの家かぁ……思ったより綺麗だね」

「どういう意味だ? 俺は元々綺麗好きだぞ?」

「あっ、そういう意味じゃなくて、中古だって聞いてたから」

「ああ、そういう意味か。まあ、それなり高かったしな」

 俺の家は元々、雑貨屋さんだったところをリフォームした建物だ。
 一階でお店を、二階を住居として使っていたと。
 俺はそれを買い取って、一階をお店用にリフォームしたということだ。

「うにゃ……」

 こたつが暖かったのか、詩織が寝てしまう。

「あらら、寝ちまったよ」

「昨日、あんまり寝てないみたい。お父さんとお母さんに泣きついてて……」

「そうか、無理もないな。まだ五歳には理解できないだろう」

「うん……とりあえず納得はしてくれたと思うんだけど」

「わかってるよ、すぐにまた泣いてしまうことは。何か手を打っておくから心配するな」

「お兄ちゃん……えへへ、ありがとう」

「お前は平気か?  寂しくないか?」

「わたしはお姉ちゃんだもん。それに、もう高校生になったんだよ? 」

「そうか……早いもんだな。俺の周りをチョロチョロしてたお子様が」

「も、もう! わ、私だって……もうすぐ結婚できる歳なんだから」

「はっ、小娘が何を言ってる。十年早いぜ」

「むぅ……子供扱いして」

 本人は嫌がるかもしれないが……。

 その膨れた顔を見て、尚更のこと可愛いと思ってしまった。

 もちろん、義妹としての話だ。
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