5 / 67
一章 義妹を預かる
お迎えと顔見せ
しおりを挟む
それからの日々は過ぎ……。
今日から、二人と一緒に住む日がやってくる。
兄貴と桜さんは、今頃飛行機の中だろうな。
三時の待ち合わせ時間を目安に、二人を迎えに駅へと歩いていく。
「さて、そろそろ……おっと、来たか」
「お、お兄ちゃん!」
「おじたん!」
「よう、二人共。元気にしてたか?」
少し目の下が赤いことはあえて触れない。
寂しいに決まってるよな。
「う、うん……あっ——お世話になります!」
「お、おしぇわ……なります!」
「クク、こちらこそよろしくな」
二人を連れて商店街を歩いていく。
「わぁ~人がいっぱいいる」
「お姉ちゃん! 人いっぱいだお!」
二人がこういうのも無理はない。
田舎暮らしがしたかった兄貴達は、埼玉でも田舎の方に住んでいた。
それこそ、電車のドアが手動だったり、駅員がいなかったり……。
ここも埼玉だが、あちらとは雲泥の差だろうな。
距離的には大したことないのに……なんでこんなに差が出るかね?
「買い物したかったら、ここの八百屋が良い。綺麗なお姉さんがサービスしてくれるからな」
「やだよ! もう! 芹沢さん、その二人が例の娘さんかい?」
「ええ、よしえさん。春香、詩織、俺の行きつけの八百屋さんの奥さんだ」
「よ、よろしくお願いします!」
「あいっ!」
「あら、可愛い子達ね。ええ、いつでも来てちょうだい。貴方達のお兄さんには、私達もお世話になってるから」
「いえ、こちらこそお世話になってます。いつも新鮮な野菜を頂いていますから」
俺の経営している飲食店の野菜は、ここでいつも購入している。
売り上げに貢献する代わりに、宣伝もしてもらえるしな。
その後も店を紹介しつつ、俺の家へと向かう。
理由はいくつかあるが、一番大きな理由は……俺が通報されないようにだ。
もしくは通報されても庇ってもらえるようにだ。
女子高生と幼女を連れたアラサーおっさんとか……捕まる案件だ。
俺のそんな苦労も知らず、二人は楽しそうだ。
「ふふ~ふ~ん、お店がいっぱい!」
「これなら、色々買い物できるね」
まあ、良いか……これから寂しい気持ちになることは避けられない。
今のうちに楽しんでもらうとするか。
「はい、ストップ。ここが俺の家であり、俺の城でもある」
「わぁ……! ここがお兄ちゃんのお店……!」
「ここがおじたんの家なの? 階段が上にあるお?」
「一階が店舗で、二階が住処になっている。さあ、まずは荷物を運ぶ。ほら、二人とも」
「ふえっ? じ、自分でできるよ! トランク二個なんて無理だよっ!」
「はっ、飲食店の男を舐めるなよ? こちとら、重たい寸胴を持ち上げることもあるんだぜ?」
「で、でも……」
「大丈夫だって。お前が怪我でもしたら困る」
俺が兄貴に殺される。
「お、お兄ちゃん……うん、お願いします」
「おねたいします!」
「はいよ」
俺は二人からトランクを預かり、階段を上っていく。
「おじたん凄いお!」
「はは、そうだろ。よっこらしょと……」
階段脇にトランクを置く。
「お兄ちゃん、力持ち……が素敵」
「ん? 春香、何か言ったか?」
「う、ううん! なんでもないのっ!」
「おねえたん? へんにゃの」
「ほら、とりあえず中に入りな」
ドアを開けて、階段を上ってきた二人を先に入れる。
「お、お邪魔しまーす……」
「おじゃまーす!」
「ププッ!?」
い、いかん! 『おじゃまーす』がつぼった!
「おじたん?」
「お兄ちゃん?」
「い、いや、気にするな。ほら、そこが洗面室になってるから。まずは手洗いうがいをしなさい」
「「はーい!!」」
可愛いらしい声が重なり、二人して洗面所に入る、
「さてと……この荷物をあの部屋に運んでと」
荷物を移動した後、俺も手洗いうがいをし。
ひとまず、リビングで落ち着くことにする。
「ここがお兄ちゃんの家かぁ……思ったより綺麗だね」
「どういう意味だ? 俺は元々綺麗好きだぞ?」
「あっ、そういう意味じゃなくて、中古だって聞いてたから」
「ああ、そういう意味か。まあ、それなり高かったしな」
俺の家は元々、雑貨屋さんだったところをリフォームした建物だ。
一階でお店を、二階を住居として使っていたと。
俺はそれを買い取って、一階をお店用にリフォームしたということだ。
「うにゃ……」
こたつが暖かったのか、詩織が寝てしまう。
「あらら、寝ちまったよ」
「昨日、あんまり寝てないみたい。お父さんとお母さんに泣きついてて……」
「そうか、無理もないな。まだ五歳には理解できないだろう」
「うん……とりあえず納得はしてくれたと思うんだけど」
「わかってるよ、すぐにまた泣いてしまうことは。何か手を打っておくから心配するな」
「お兄ちゃん……えへへ、ありがとう」
「お前は平気か? 寂しくないか?」
「わたしはお姉ちゃんだもん。それに、もう高校生になったんだよ? 」
「そうか……早いもんだな。俺の周りをチョロチョロしてたお子様が」
「も、もう! わ、私だって……もうすぐ結婚できる歳なんだから」
「はっ、小娘が何を言ってる。十年早いぜ」
「むぅ……子供扱いして」
本人は嫌がるかもしれないが……。
その膨れた顔を見て、尚更のこと可愛いと思ってしまった。
もちろん、義妹としての話だ。
今日から、二人と一緒に住む日がやってくる。
兄貴と桜さんは、今頃飛行機の中だろうな。
三時の待ち合わせ時間を目安に、二人を迎えに駅へと歩いていく。
「さて、そろそろ……おっと、来たか」
「お、お兄ちゃん!」
「おじたん!」
「よう、二人共。元気にしてたか?」
少し目の下が赤いことはあえて触れない。
寂しいに決まってるよな。
「う、うん……あっ——お世話になります!」
「お、おしぇわ……なります!」
「クク、こちらこそよろしくな」
二人を連れて商店街を歩いていく。
「わぁ~人がいっぱいいる」
「お姉ちゃん! 人いっぱいだお!」
二人がこういうのも無理はない。
田舎暮らしがしたかった兄貴達は、埼玉でも田舎の方に住んでいた。
それこそ、電車のドアが手動だったり、駅員がいなかったり……。
ここも埼玉だが、あちらとは雲泥の差だろうな。
距離的には大したことないのに……なんでこんなに差が出るかね?
「買い物したかったら、ここの八百屋が良い。綺麗なお姉さんがサービスしてくれるからな」
「やだよ! もう! 芹沢さん、その二人が例の娘さんかい?」
「ええ、よしえさん。春香、詩織、俺の行きつけの八百屋さんの奥さんだ」
「よ、よろしくお願いします!」
「あいっ!」
「あら、可愛い子達ね。ええ、いつでも来てちょうだい。貴方達のお兄さんには、私達もお世話になってるから」
「いえ、こちらこそお世話になってます。いつも新鮮な野菜を頂いていますから」
俺の経営している飲食店の野菜は、ここでいつも購入している。
売り上げに貢献する代わりに、宣伝もしてもらえるしな。
その後も店を紹介しつつ、俺の家へと向かう。
理由はいくつかあるが、一番大きな理由は……俺が通報されないようにだ。
もしくは通報されても庇ってもらえるようにだ。
女子高生と幼女を連れたアラサーおっさんとか……捕まる案件だ。
俺のそんな苦労も知らず、二人は楽しそうだ。
「ふふ~ふ~ん、お店がいっぱい!」
「これなら、色々買い物できるね」
まあ、良いか……これから寂しい気持ちになることは避けられない。
今のうちに楽しんでもらうとするか。
「はい、ストップ。ここが俺の家であり、俺の城でもある」
「わぁ……! ここがお兄ちゃんのお店……!」
「ここがおじたんの家なの? 階段が上にあるお?」
「一階が店舗で、二階が住処になっている。さあ、まずは荷物を運ぶ。ほら、二人とも」
「ふえっ? じ、自分でできるよ! トランク二個なんて無理だよっ!」
「はっ、飲食店の男を舐めるなよ? こちとら、重たい寸胴を持ち上げることもあるんだぜ?」
「で、でも……」
「大丈夫だって。お前が怪我でもしたら困る」
俺が兄貴に殺される。
「お、お兄ちゃん……うん、お願いします」
「おねたいします!」
「はいよ」
俺は二人からトランクを預かり、階段を上っていく。
「おじたん凄いお!」
「はは、そうだろ。よっこらしょと……」
階段脇にトランクを置く。
「お兄ちゃん、力持ち……が素敵」
「ん? 春香、何か言ったか?」
「う、ううん! なんでもないのっ!」
「おねえたん? へんにゃの」
「ほら、とりあえず中に入りな」
ドアを開けて、階段を上ってきた二人を先に入れる。
「お、お邪魔しまーす……」
「おじゃまーす!」
「ププッ!?」
い、いかん! 『おじゃまーす』がつぼった!
「おじたん?」
「お兄ちゃん?」
「い、いや、気にするな。ほら、そこが洗面室になってるから。まずは手洗いうがいをしなさい」
「「はーい!!」」
可愛いらしい声が重なり、二人して洗面所に入る、
「さてと……この荷物をあの部屋に運んでと」
荷物を移動した後、俺も手洗いうがいをし。
ひとまず、リビングで落ち着くことにする。
「ここがお兄ちゃんの家かぁ……思ったより綺麗だね」
「どういう意味だ? 俺は元々綺麗好きだぞ?」
「あっ、そういう意味じゃなくて、中古だって聞いてたから」
「ああ、そういう意味か。まあ、それなり高かったしな」
俺の家は元々、雑貨屋さんだったところをリフォームした建物だ。
一階でお店を、二階を住居として使っていたと。
俺はそれを買い取って、一階をお店用にリフォームしたということだ。
「うにゃ……」
こたつが暖かったのか、詩織が寝てしまう。
「あらら、寝ちまったよ」
「昨日、あんまり寝てないみたい。お父さんとお母さんに泣きついてて……」
「そうか、無理もないな。まだ五歳には理解できないだろう」
「うん……とりあえず納得はしてくれたと思うんだけど」
「わかってるよ、すぐにまた泣いてしまうことは。何か手を打っておくから心配するな」
「お兄ちゃん……えへへ、ありがとう」
「お前は平気か? 寂しくないか?」
「わたしはお姉ちゃんだもん。それに、もう高校生になったんだよ? 」
「そうか……早いもんだな。俺の周りをチョロチョロしてたお子様が」
「も、もう! わ、私だって……もうすぐ結婚できる歳なんだから」
「はっ、小娘が何を言ってる。十年早いぜ」
「むぅ……子供扱いして」
本人は嫌がるかもしれないが……。
その膨れた顔を見て、尚更のこと可愛いと思ってしまった。
もちろん、義妹としての話だ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
135
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる