反逆の英雄譚~愛する幼馴染が処刑されそうだったので国を捨てることにした~

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一章

辺境伯邸にて

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 ひとまず帝国軍を追い返した俺は、久々の辺境伯邸に案内される。

 そしてヨゼフ様の私室にて、詳しく話を聞くことにした。

 ソファーに座り、対面にヨゼフ様、隣にはカグヤがいる。

「ヨゼフ様、何がどうなっているのですか?」

「そうじゃな……ワシも詳しいことは知らんが、順序を追っていくとしよう」

「まず、カグヤが死刑になるという通知は?」

「来たぞ……ただ、その直前にな。怒りでどうにかなりそうだった。こちらには、噂などが届かないようにしておったのだろう。おそらく、宰相でもある侯爵家の陰謀じゃろう」

 なるほど、それでヨゼフ様は助けに来れなかったのか。
 まだ疑問は残るが、ひとまず後回しにしよう。

「どう考えても冤罪ですから。では、あの王太子の横にいた女は侯爵家の娘ということですか」

「おそらく、そういうことじゃろう。我が辺境伯家が力を持つことを恐れたのか……ふむ」

「そしてカグヤを排除して、自分の娘を皇太子にと……権力にしがみつくクズめ」
 
 もし、出会ったなら殺す……元はといえば、そいつが原因ではないか。
    もちろん、皇太子達も許すつもりはないが。

「ワシからも質問させてくれ。どうやって知り、どうやってここまで?」

「兵士の間に噂が流れて来まして……それを聞き、すぐに国境を越え」

 すると、言葉の途中でヨゼフ様が身を乗り出す。

「待て!そのためには、上級兵や将クラスがいる場所を通らなくては……」

「ええ、なので片っ端から片付けました。奴らのせいで、俺の部下がどれだけ死んだか……ちなみに、辺境伯も始末しました」

「なんと……やはり、あちらは酷いようじゃな。ふむ、先ほど見せた強さなら突破も可能か。あのクソ豚なら死んで当然じゃ……同じ辺境伯として、あんなのと一緒だと思うと恥ずかしい限りだ」

「ええ、その通りかと。その後は馬をひたすら走らせ、帝都へ行き処刑台にいるカグヤを救い出しました。そして、ここまで連れて来ました」

 その言葉に、ヨゼフ様は頭をテーブルに擦り付ける。

「そうか、ギリギリだったのだな……改めて感謝する!」

「あ、頭をお上げください!」

「いや、こればかりは受け取ってくれ」

「……相変わらずですね。わかりました、受け取りましょう」

 ヨゼフ様は頭をあげて、微笑む。
 こういう方だから、俺は尊敬している。
 すると、カグヤまで俺に頭を下げてきた。

「私からもありがとう! クロウは、そんな大変な思いをしてまで私を助けてくれたんだ……」

「カグヤもいいから。俺は、俺のためにやっただけだ。大切なカグヤを守るという、俺の意思によって。さっきも言ったが、カグヤが気に病むことはない」

「……そ、そうよね!  気にしないわ!」

「ああ、それでいい。カグヤは、そうやって元気なのが良い。君には、それが似合う」

「はぇ?……もう!バカ!」

「……なんで叩くのだ?」

「知らない!」

 俺の肩をぽかぽかと叩いた後、そっぽを向いてしまう。
 女性とは難しい……げせぬ。

「まあ、お主ならカグヤを安心して任せられるか……少し、複雑ではあるが」

「ええ、お任せを。必ずや、カグヤを守り抜いてみせましよう。どんな理不尽なことからも。そのためだけに、俺は強くなったのですから」

「……フンだ! もう好きにして!」

「ん?  ああ、そうするが……」

「やれやれ、何年経っても関係は変わらないようじゃな。これは、苦労しそうじゃな……クロウだけに」

 その寒いギャグに、俺とカグヤがヨゼフ様に冷たい視線を向けた。
 こういう感じも、相変わらずといったところか。

「「…………」」

「…………ワシが悪かった、だから可哀想なモノを見るような目を向けんでくれ」

「もう! お父様ったら!」

「ヨゼフ様こそ、相変わらずですね。ところで、肝心なことを聞いていないのですが……」

「ああ、わかっておる。長兄アランと……」

 その時、勢いよく扉が開き……誰かが入ってきた。
 それは物凄い速さで俺に迫ってきて——その手には短剣が握られていた。

「お嬢様から離れろ曲者め!」

「またんか!」

   その制止も聞かずに、そいつは迫ってくる。
 俺は咄嗟に腕に魔力を込め、短剣を向けて拳を放つ!
  魔力のこもった拳と、魔力のこもった短剣が衝突し、部屋中に衝突音が鳴り響く。

「アンタも相変わらずだな!」

「なに!?  私の攻撃を防ぐとは……それにその顔、その声……髪色が違いますが、まさかクロウですか?」

「そうだよ! というか、いきなり何すんだ! 俺じゃなかったら死んでるぞ!?」

「チッ!お嬢様に近づく者は死ねば良い!」

 襲ってきた女性はメイド長のエリゼ、通り名はだ。

 ちなみに……俺の師匠でもある。
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