反逆の英雄譚~愛する幼馴染が処刑されそうだったので国を捨てることにした~

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一章

カグヤ視点

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脱衣所で服を脱ぎながら、私はようやくこれまでのことを振り返る。

流石にエリゼも脱ぐところは見ないでくれるので、久々の一人の時間だった。

 「クロウは凄い……それに、カッコイイ」

 颯爽と現れて、物語みたいに私を助けてくれた。
 戦えば一騎当千の力を発揮し、相手を蹴散らしたり……。
 おかげで私は何もすることなく、お父様やエリゼと再会することができた。
 私は、ちっとも役に立てない……私は、クロウのために何ができるのだろう?

 「屋敷についてからも、クロウは凄かったわ」

 前は、ボコボコにされていたエリゼと互角以上になったり。
 お父様とも、対等に話をしていたり。
 私はカッコいいなと思いつつも、中々態度に出せない。
     全然可愛くない……もう! 自分が嫌になるわ!

 「でもそんな私に、クロウは可愛いとか言ってくるし……その度に、私がドキドキしていることなんか知りもしないんだから」

 でも、嬉しくて飛び跳ねたい気持ちになる。
 だって……ずっと、好きだったもの。




    その後、服を脱いで、エリゼが待つ浴室に入る。
  素直になれない私は、お風呂で相談をすることにした。

「ねえ、エリゼ」

「お嬢様、いかがなさいましたか?  痒いところがございますか?」

「ううん、違うの。あ、あのね……やっぱり、クロウが好きなの」

「チッ、やはり殺すか」

 今にも飛び出しそうなエリゼを必死で止める。
 本当にやりかねないから怖いのよね……。

「ダ、ダメよ!」

「……仕方ありませんね、我慢しましょう。あのクソ皇太子よりは、幾分かマシですし」

「ホッ……でね、好きなのに恥ずかしくて言えないの……そもそも、好きになって良いのかな?」

 私は一度、皇太子の妻となると決めた。
 クロウが好きだったのに……そんな私が、こんな状況になったからといって良いのかな。
 ふと見ると、エリゼが歯を食いしばっていた。

「やはり、殺しますね」

「だからダメだってば!」

「グヌヌ……クロウが憎い……!」

「相談相手を間違えたかしら?   でも、エリゼが一番信頼できるし」

「私が一番……! 仕方ありません、ここは我慢しますか。それで、どうなさりたいのですか?」

 ……どうしたいんだろう?
 とにかく、お礼は言いたい。
 私ってば、全然素直じゃないし。

「好きって言うのは、難易度が高いの……それ以外で、どうしたら気持ちが伝わるかしら?すっごく感謝しているのに、ありがとうとしか言えないの」

「まあ、クロウはお嬢様を溺愛していますから。ありがとうとさえ言っておけば、馬車馬のように働くと思いますが……そういう話ではないわけですね」

「にゃい!?  で、溺愛!?」

  そうなの!? 可愛いとかは言われたけど……。

「もしや、気づいてなかったと……少し不憫ですね。まあ、クロウが上手く隠しているのでしょう。お嬢様が、気を遣わないように……悔しいですが、中々の男になりましたね」

「えぇ~!? そ、そうなの!?  私、えっと、その……私も大好きなの」

「まあ、言わなくてよろしいかと。多分アイツ……すぐにでもお嬢様を襲ってしまうでしょうから」

「お、襲う!?  それってそういう意味よね……?」

 それって、男女のアレというかこれというか……暑いよぉ。
 私が両手で頬を押さえていると、エリゼが真面目な顔で頷く。

「ええ、そういう意味です」

「それは困るわ!  嫌じゃないけど、まだ早いというか……」

「その照れ顔見せただけで、猛獣と化しますね」

 猛獣!? ……少し見てみたいなんて……違う違う!

「ど、どうすればいいの!?」

「自然体で良いと思います。お嬢様の余裕ができたら、少しずつ伝えていけばよろしいかと。そしてクロウはお嬢様に無理強いはしません」

「……そんなので良いのかな? クロウは、私のために頑張ってくれているのに……」

 私は何も返せてない。
 それどころか、迷惑ばかりかけちゃってる。
 それなのに、自分本位ばかりなのは嫌。

「クロウはそんなことは思っていないでしょうね。私もそうですから。ただ、どうしてもとおっしゃるのなら……できる範囲でいいので、支えてあげればよろしいかと」

「支える……?  でも、私は戦えないし……」

「何も戦う事だけが、支えることではありません。料理を作ったり、疲れを癒したり、掃除をしたり、支える方法は様々です」

「言われてみれば……あれ?  でも、そのためには一緒に暮らさないと……」

「一緒に暮らさないのですか?  だって、見ず知らずの土地で二人きりですよ? いくら敵対感情が少ないとはいえ、女性の一人暮らしは危ないかと」

「それは言えているわね。でも一緒にって……は、恥ずかしい……私、寝顔とか絶対可愛くないもの」

「大丈夫です、可愛いですから。それに、何も一緒に寝るとは言っていませんしね」

「そ、それもそうね!  よーし!  私、頑張ってみるわ!」

 その後、お風呂を済ませて廊下に出ると、クロウがいた。

 クロウも、風呂上がりのようだった。

 上半身は裸の状態で、タオルを肩にかけている。

 かっこいい……腹筋が割れて綺麗。

 わ、私は、アレに襲われちゃうのかしら!?

 ど、どうしよう?抵抗できなかったら……こんなにドキドキしてる。

 私は深呼吸をして、平静を装って声をかける。

 そしたら可愛いって!

 私は嬉しさと恥ずかしさでどうにかなりそう。

 身体が熱い……お、お風呂のせいよね!?

 さっき覚悟を決めたのに、私は逃げるようにその場を去ってしまうのでした。
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